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SGLT2阻害剤と痛風リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
SGLT2阻害剤と痛風.jpg
2020年のAnnals of Internal Medicine誌に掲載された、
糖尿病の治療薬と痛風リスクとの関連についての論文です。

糖尿病の治療薬として、
最近注目され広く使用されているのは、
DPP4阻害剤やGLP1アナログといったインクレチン関連薬と、
尿への糖の排泄を増やすという、
新しいメカニズムのSGLT2阻害剤です。
特にSGLT2阻害剤とGLP1アナログの注射薬については、
血糖降下作用ばかりでなく、
長期的に心血管疾患リスクを低下させ、
生命予後についても良い影響があるとする、
複数の研究結果が発表されて注目を集めました。

高尿酸血症も2型糖尿病に多い合併症の1つです。
足の指の付け根などが赤く腫れる痛風発作が有名ですが、
尿酸値が高いだけでも心血管疾患のリスクになることが、
最近注目されています。

尿酸を低下させる薬剤は複数ありますが、
それぞれに特有の副作用や有害事象があり、
特に痛風発作を起こしていないような場合には、
薬物治療の施行にも多くの議論があります。

そこで1つ問題となるのは、
糖尿病の治療薬によっても、
痛風や高尿酸血症などのリスクが違う、
という可能性があることです。

SGLT2阻害剤は、
尿への尿酸の排泄を促し、
血液の尿酸値を低下させることについては、
複数の報告があります。

しかし、それが実際に痛風発作などの予防に、
結び付いているかどうかについては、
まだ明確なことが分かっていませんでした。

そこで今回の研究では、
アメリカの医療保険のデータを活用して、
2型糖尿病で新規にSGLT2阻害剤を開始した患者さんを、
新規にGLP1アナログを開始た患者さんと、
他の条件をマッチングさせて1対1で対比させ、
痛風の発症リスクを比較検証しています。

SGLT2阻害剤を開始した119530名の患者さんを、
同数のGLP1アナログを開始した患者さんと比較したところ、
観察期間中の痛風発作の発症率は、
GLP1アナログ使用者で年間1000人当たり7.8件であったのに対して、
SGLT2阻害剤使用者では年間1000人当たり4.9件で、
SGLT2阻害剤使用者はGLP1アナログ使用者と比較して、
痛風のリスクを36%(95%CI: 0.57から0.72)有意に低下させていました。

今回の研究では、
実際の臨床でもSGLT2阻害剤により、
痛風発作が他の糖尿病治療薬と比較して、
一定レベル予防出来る可能性が示唆されました。

これはまだ確定的なものではありませんが、
尿酸値が高めの患者さんであれば、
他剤よりSGLT2阻害剤を、
積極的に使用する1つの根拠とはなりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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