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水痘患者との接触が帯状疱疹予防に与える影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
水痘患者と接触後の帯状疱疹予防効果.jpg
2020年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
水ぼうそうの患者さんに接触することで、
その後の帯状疱疹がどのくらい予防されるのかを、
検証している論文です。

帯状疱疹は身体に帯状の湿疹が出来、
強い神経痛を伴う病気で、
症状自体は一時的ですが、
その後に帯状疱疹後神経痛という、
その名の通りの辛い神経痛が長く残ることがあります。

この病気は水ぼうそう(水痘)と同じウイルスの感染によって起こります。
初感染は水ぼうそうという形態を取り、
おそらくは神経節という部分に、
残存しているウイルスが、
身体の細胞性免疫が低下すると、
再燃して帯状疱疹を起こします。

通常水ぼうそうのウイルスに感染したことがあるかどうかは、
血液の抗体の上昇で判断し、
抗体が上昇していれば、
再び水ぼうそうに感染することはないのですが、
身体に潜んでいるウイルスが、
帯状疱疹という形で再燃することは、
抗体が陽性であっても起こり得るのです。

水ぼうそう自体の予防は、
抗体があれば充分ですが、
帯状疱疹の予防には、
このウイルスの抗原に反応する、
CD4陽性のTリンパ球という、
免疫細胞の産生が必要と考えられています。

水ぼうそうに罹ってしばらくの間は、
こうした細胞も多く存在しているので、
帯状疱疹は予防されているのですが、
時間が経つと次第にその数は減り、
年齢と共にその産生能自体も低下するので、
帯状疱疹が発症し易くなる、
という理屈です。

さて、帯状疱疹を予防するには、
抗原刺激を与えて、
それに反応するリンパ球が増えれば良いということになります。

その方法として、
通常考えられるのはワクチンの接種です。

これまでにも何度か記事にしていますが、
帯状疱疹の予防ワクチンとして、
水痘ワクチンそのものや、
その成分を強化したような専用ワクチンが開発され、
ヨーロッパやニュージーランド、中国などで接種が行われています。
これは主に高齢者の帯状疱疹予防のためです。
日本でも50歳以上の年齢での、
帯状疱疹の予防目的で、
現行の水痘生ワクチンの接種が認められています。

ワクチン接種後3年程度の短期の成績では、
ものによっては90%以上の予防効果が報告されています。

ただ、これはあくまで短期の結果で、
こうした有効性がどれだけの期間持続するのか、
と言う点については明確なことが分かっていません。

そもそも帯状疱疹予防に水痘ワクチンが導入されたのは、
子供の時に水痘を経験している大人が、
他の水痘の患者さんにその後接触すると、
帯状疱疹が起こりにくくなる、
という知見に基づいています。

これを免疫のブースター効果のように呼ぶことがあります。

しかし、
こうした効果があるとして、
それがどの程度の効果で、
どの程度持続するのか、
というような点については、
あまり実証的なデータが存在していませんでした。

そこで今回の研究では、
イギリスのプライマリケアの医療データを活用して、
一定期間に帯状疱疹を発症した18歳以上の9604名を、
発症前の水痘のお子さんとの接触の有無で比較検証しています。

その結果、
中間値で14.7年の観察において、
水痘のお子さんと接触して2年以内では、
未接触と比較した帯状疱疹の発症リスクは、
33%(95%CI: 0.62から0.73)有意に低下していました。
そして接触から10から20年という長期においても、
未接触と比較した帯状疱疹の発症リスクは、
27%(95%CI: 0.62から0.87)有意に低下していました。

つまり、
水痘の既往のある人が、
水痘の患者さんに接触した場合、
その後帯状疱疹になるリスクは低下するものの、
それは3割程度の低下に留まっていました。
その一方でその予防効果自体は20年に渡り維持されていました。

今回の結果はやや意外なもので、
予防効果はもう少し高く、その持続期間はもう少し短い、
というように想定されていたのですが、
実際には効果はそれほど高くはないものの、
持続はより長期に渡るという結果が得られたのです。

水痘のお子さんとの接触と言っても、
その程度にはかなり差があると思いますし、
今回の研究では実際の免疫機能や抗体価などの測定は、
行われてはいないので、
何らかのバイアスが影響している可能性はありますが、
こうしたデータは今後の帯状疱疹の予防戦略にも、
影響を与える可能性はありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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低糖質と低脂質の食事の健康効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
低糖質と低脂質の食事の影響.jpg
2020年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
糖質や脂質を制限した食事の健康効果についての論文です。

健康な食事とはどのようなものか、
という問題はまだ結論が出ていませんが、
そのトレンドは大きく変わって来ています。

以前には脂質を制限することが健康のためには必要であるとされ、
コレステロールを多く含む食品が悪玉のように言われていました。
しかし、最近ではむしろ脂質は多めに摂った方が健康的で、
問題は脂質の中身である、と言われるようになってきています。
また、以前の食事指導では糖質の比率は6割を超えることが普通でしたが、
糖質は制限することが健康のためには望ましい、
というようにこれも変わって来ています。

低糖質や低脂質という言葉が先走りすると、
その中身にはあまり注意が払われなくなります。

しかし、実際には同じ低糖質や低脂質と言っても、
その内容こそが問題であるようにも思います。

今回の研究はそこに着目したもので、
食事と健康についての大規模な疫学研究のデータを活用して、
食事の脂質量と糖質量をその内容を含めて点数化し、
それが総死亡のリスクと関連を持っているかどうかを比較検証しています。

対象となっているのはアメリカの一般住民、
トータル37233名で、
糖質においては、
全粒穀物や生の果物、豆やフレッシュな野菜が、
良質な糖質とされ、
精製穀物や砂糖を添加したジュース、
ポテトなどが質の低い糖質と区分けされています。
蛋白質は動物由来と植物由来に分けられ、
脂質は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられて、
その量も段階的に数値化されています。

ここで糖質は良質なものが多く、
脂質は不飽和脂肪酸が多く、
蛋白質は植物由来のものが多い食生活は、
健康的としてこれも数値化されています。

すると、
中身を問わない食事の脂質量が低下しても、
糖質量が低下しても、
それは総死亡リスクの低下には結び付いていませんでした。
一方で質の低い糖質を減らし、植物由来の蛋白質と不飽和脂肪酸を増やした、
健康的な低糖質食は、
そのスコアが高いほど総死亡のリスクは低下していて、
飽和脂肪酸を減らし、質の高い糖質と植物由来の蛋白質を増やした、
健康的な低脂質食は、
こちらも同程度総死亡のリスクを低下させていました。
ここでの低糖質というのは、
最もランキングの高いものでも、
総カロリーの45%程度が糖質というもので、
殆ど糖質を摂らないような、
極端な低糖質ダイエットではありません。

今回の結果から分かることは、
低糖質や低脂質というのは、
量の問題で考えるべきではなく、
敢くまで重要なのはその中身だということです。

植物由来の蛋白を増やし、
飽和脂肪酸を減らして不飽和脂肪酸を増やし、
豆や全粒穀物やフレッシュな野菜、果物を増やせば、
結果として軽度の低糖質になるのです。
脂質や糖質の比率を意識するよりも、
その方が合理的で確実に健康への効果が期待出来る、
ということなのだと思います。

赤身肉の評価や卵や乳製品の評価、
ω6系多価不飽和脂肪酸の評価など、
まだ未解決な問題はありますが、
健康な食事を総死亡のリスクを減らし、
心血管疾患などの生活習慣病のリスクを減らす食事として考えるなら、
その方向性はほぼ固まっていると、
そう考えて良いのではないでしょうか。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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BMIと死亡リスク(イギリスの大規模疫学調査) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
BMIと死亡リスク.jpg
2018年のLancet diabetes & endocrinology誌に掲載された、
BMIという体格の指標と死亡リスクとの関連についての論文です。

これは多分まだご紹介していなかったと思うのですが、
ひょっとしたら書いていたかな、
という気もしてちょっと自信がありません。
もし既出の話題であればご指摘下さい。

まあこういう研究は沢山あります。

BMIというのはキログラムで表示した体重の数値を、
メートルで表示した身長で2回割り算して得られる数字で、
この数値が25以上であると過体重と判断され、
世界的にも30を超える状態は肥満と診断されます。

一般住民や心血管疾患の既往のない集団での疫学データにおいては、
BMIが20から24.9の間が最も死亡リスクが低く、
25を超えると総死亡のリスクも、
心血管疾患の発症リスクもいずれも増加に転じます。

しかし、その一方で心血管疾患を持つ患者さんの集団では、
BMIが20から24.9より高い、過体重や軽度の肥満の方が、
死亡リスクが低いという、
かなり意外な結果が複数報告されています。

これをBMIパラドックスと呼ぶこともあります。

何故、心血管疾患の患者さんでは、
体重が重い方が予後が良いのでしょうか?

以前ご紹介した論文では、
もう心筋梗塞などを発症したような状態においては、
内臓脂肪がある程度あった方が、
生命予後には良い影響があるのではないか、
という見解があり、
また別の研究においては、
体組成で筋肉量が多いと予後が良いのだ、
というような説明もありました。

今回の研究はイギリスのプライマリケアのデータベースを活用したもので、
3632674名という大規模なデータを解析したものです。
BMIと生命予後のとの関連を検証した単一のデータとしては、
これまでで最も大規模なものだと思います。

その結果、
総死亡のリスクはBMIが21から25で最も低く、
25未満においてはBMIが5増加すると、
総死亡のリスクは19%(95%CI: 0.80から0.82)
有意に低下する一方で、
25を超えてBMIが5増加すると、
総死亡のリスクは21%(95%CI: 1.20から1.22)
こちらは有意に増加していました。

病気別にみてみると、
癌、心血管疾患、呼吸器疾患のいずれもが、
同様のパターンを示していました。
ただ、精神疾患などにおいては、
BMIが24から27の範囲で、
BMIが高いほど死亡リスクは低下していました。

このように今回の最も大規模な疫学データにおいては、
BMIは21から25が最も死亡リスクが低い、
という傾向が確認され、
一部の報告にあった心疾患では25を超えた方がリスクが低い、
という結果は否定されています。

まあ健康な体重や体格というのは、
かなり個別の要素に左右されるという気がしますから、
BMI21から25を一応の目安と考えて、
後は個別の病気の有無や体調などから、
その人にとっての適正体重を、
適宜設定すればそれで良いというように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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マスクがない!? [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

雪になるかと心配したのですが、
幸い雨で終わったようです。

今日はちょっと困っているのでその話をします。

新型コロナウイルス感染症が大きな問題となっているのは、
皆さんもご存じの通りです。

保健所からの1月24日付の事務連絡によりますと、
発熱が37.5度以上で呼吸器症状(咳など)があり、
発症から2週間以内に武漢市内を訪問したか、
武漢市への渡航歴があって、発熱などの症状のある人と接触があれば、
インフルエンザなどの診断を行いつつ、
保健所に連絡をしなさい、
という文面になっています。
予防にはマスクの着用と書かれています。

そして、昨日も嘱託医をしている保育園から連絡があり、
中国の家族がいるお子さんが熱を出して咳をしているので、
武漢市との関連は分からないけれど、
これから受診をさせても良いですか、
とのことでした。

勿論「いいですよ」と言うよりないのですが、
そこで考えないといけないのは感染対策です。

通常のマスクは備蓄がありますが、
感染予防のためのN95マスクも、
一定数は常備した方が良いと考え、
取引をしている卸さんに連絡をしました。

マスクはありますか?とお尋ねすると、
「一切ありません!」という担当者の答えでした。
「N95マスクを入れたいのですが…」と言うと、
「高性能のマスクは全く在庫がない状態です」と言うので、
「予約していつぐらいに入荷しますか?」
と聞くと、
「全く見通しが立たないので予約は出来ません」というお答えです。

唖然としました。

「それは何故ですか?医療機関で買い占めているのですか?」
と聞きますと、
「いえ、中国人が全て買ってしまったのです」
というにわかに信じがたいような返事です。
(嘘のようですが実話です)

常識的に言って事実とは思えない話です。

ドラッグストアで中国の方が大量のマスクを買っている、
というニュースは確かに流れています。
それも何処まで事実であるのか保障の限りではありませんが、
医療用の卸さんは医療機関のみと取引をしている筈ですから、
中国の方が急に大量に発注して、
それで在庫が底をつく訳がありませんし、
そもそも取り引きをするにはまず契約を結ばないといけませんから、
急に中国の医療機関と大量に契約をして、
そこに全てのマスクを流してしまった、
というような話がある筈がありません。

冷静に考えればそういうことではなく、
報道などもあるのでマスクの発注が多くなり、
それで品薄になっているのだな、
という想定は付きます。

しかし、実際にマスクは必要ですし、
患者さんが来ればお断りも出来ませんし、
何とかして欲しいところです。

保健所の通達には「インフルエンザを否定しろ」
というニュアンスのことが書かれています。
これはインフルエンザの迅速検査をしろ、
という意味に取れるのですが、
皆さんもご存じの通り、
インフルエンザの検査は鼻の奥に綿棒を入れて行うので、
当然患者さんは咳込んだり痰を飛ばされたりされるので、
その直撃をこちらは受けることになります。
マスクは必須と思われますが、
それがないのです。

どうすればいいのでしょうか?

いつもそうなのですが、
2009年の「新型インフルエンザ」騒動の時には、
インフルエンザワクチンもなくなりましたし、
キットもなくなりました。
消毒もなくなりましたし手袋もなくなりました。
幸いあの時はマスクはありました。
ただ、あの時も卸さんに連絡すると、
「ありません。いつ入荷するかも分かりません」と言われるだけで、
説明もありませんし、
説明がある時には、
あきらかに間違いと分かるような、
うっかりすれば人権問題や国際問題になりそうな、
非現実的な説明です。

医療用品の流通というのは、
どうしていつもこのように不合理なのでしょうか?

こうした絶対必要な備品や感染対策の用具など、
何処かで一括管理して、
そこに注文をして供給されるような仕組みが、
何故取れないのでしょうか?

誰かマスクをください!

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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中国武漢市発生新型コロナウイルス肺炎の特徴と対応(2020年1月26日) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの肺炎.jpg
2020年1月24日のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
中国武漢市で発生した新型コロナウイルス肺炎の、
原因ウイルスを解析した論文です。

2019年の12月から中国武漢市において、
原因不明の肺炎の事例が多発し、
日本でも報告事例が出るなどして、
大きな問題となっています。

それに関連して海外の主だった医学誌にも、
この新型コロナウイルス感染症についての解説や論文が掲載されています。

上記のNew England…の論文では、
患者の気道上皮細胞より原因のコロナウイルスを単離し、
その遺伝子の解析を行っています。

コロナウイルスは、
エンベロープという周辺構造を持つRNAウイルスで、
人間を含む哺乳類、鳥などに感染し、
229E、OC43、NL63、HKU1という4つのコロナウイルスが、
人間に感染して上気道炎症状を起こす、
所謂「風邪症候群」の原因ウイルスとして知られていました。

それが2002年から2003年に、
元々はコウモリを宿主としていたコロナウイルスが、
人間に感染して変異し、
重症急性呼吸器症候群(SARS)として中国で流行し、
大きな問題となりました。
これがSARS-CoVという5番目のコロナウイルスです。

更に2012年に中東において、
矢張り元々はコウモリを宿主としていたコロナウイルスが、
ラクダを介して人間に感染して変異し、
中東呼吸器症候群(MERS)として流行し、
こちらも大きな問題となりました。
これがMERS-CoVという6番目に見付かったコロナウイルスです。

そして、今回中国の武漢市において、
2019年12月から発生して流行した肺炎において、
その原因ウイルスとして上記の論文で同定されたのが、
新たなコロナウイルス2019-nCoVです。

このウイルスはその遺伝子の75から80%が、
SARS-CoVと相同性を持っています。
そして、複数のコウモリを宿主とするコロナウイルスとは、
より高い相同性を持っています。
要するに今回の新型コロナウイルスは、
コウモリを宿主とするウイルスが変異したもので、
それが直接もしくは他の生物を介して、
人間に感染したものの可能性が高く、
その性質はSARSの感染症と似通っている可能性が高い、
ということになります。

この新型コロナウイルスは、
SARSウイルスと同様に、
人間の気道にあるhACE2と呼ばれるタンパク質に結合して、
そこから感染が始まると想定されますが、
この蛋白は下気道のみに存在しているので、
気管支炎のような症状を起こして初めて、
周囲に感染すると考えられます。

つまりこの新型コロナウイルス感染症は、
軽度の風邪症状のような状態ではほぼ感染はせず、
痰がらみの咳などを浴びた時に初めて、
感染が成立する可能性が高いと想定されるのです。
(ただこの点に関しては、1月26日に中国当局は、
潜伏期にも感染が起こる可能性があるという趣旨の発表をしていて、
既にウイルスの性質が、
変異により変わっているという可能性もあります)

この論文では2例の肺炎事例が紹介されています。
1例目の事例は49歳の女性で、
特に慢性病などの基礎疾患はなく、
海鮮市場に勤務していました。
37から38℃の発熱と咳、胸部不快感で発症し、
その4日後に解熱した一方で咳と呼吸困難は悪化し、
CTで肺炎が診断されて入院となっています。

2例目の事例は61歳の男性で、
発熱と咳で発症し、その7日後にARDSを発症して入院となっています。
発症8日目の胸部レントゲンがこちらです。
コロナウイルス肺炎の画像1.jpg
もう挿管して呼吸器管理となっています。
両肺に毛羽立ったと表現されるような、
小葉単位の陰影が多発しています。
その更に3日後の画像がこちらです。
コロナウイルス肺炎の画像2.jpg
病変は繋がるようにしてより広がりを持ち、
胸水の貯留も伴って悪化しています。

この急激な肺病変の悪化が、
新型コロナウイルス肺炎の特徴です。

Lancet誌にも1月24日に以下の論文がウェブ掲載されています。
それがこちらです。
コロナウイルスの肺炎ランセット.jpg
この論文では41例の新型コロナウイルス感染症の入院事例が解析されています。

患者の年齢の中間値は49.0歳で、
基礎疾患が認められたのは32%と、
多くは免疫の低下などはない一般住民です。
66%は海鮮市場に勤務していて、
家族内感染の事例も認められています。

初期症状は発熱と咳が多く、
初期には咳は痰がらみのことが多く、
発症から中間値で8日で、
55%の患者が呼吸困難を発症し、
全例でCT検査で肺像が診断されています。

こちらをご覧下さい。
コロナウイルス肺炎のCT画像1.jpg
これは40歳の女性患者の発症15日目の画像です。
両肺に多数の小葉性と区域性の浸潤影が認められます。

次にこちらをご覧下さい。
コロナウイルス肺炎のCT画像2.jpg
こちらは53歳の女性患者の発症8日目の画像です。
両肺の磨りガラス様の陰性と区域性の陰影が混在しています。

入院事例のうち15%に当たる6例が死亡しています。

現状この新型コロナウイルス肺炎は、
肺炎を起こしたような状態になって初めて、
周囲に感染すると想定されますが、
SARSはウイルス変異を起こして、
その後感染力が増加したという経緯があり、
ニュースなどで変異の可能性を危惧する声があるのは、
そうした過去の経緯があるからなのです。

現状の日本の対応ですが、
発熱と咳の症状があって、
2週間以内に武漢への渡航歴があるか、
武漢への渡航歴があって発熱や咳のある人と接触した患者さんが、
医療機関を受診した場合には、
新型コロナウイルス感染症の疑い事例として、
保健所に相談する、ということになっています。

そう言われても正直不安ですが、
現状その可能性を頭に置きながら、
日々の診療には緊張感を持って当たりたいとは思っています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「ジョジョ・ラビット」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ジョジョ・ラビット.jpg
第二次世界大戦末期に、
ドイツでヒットラーを崇拝していた10歳の少年が、
自宅に匿われていたユダヤ人の少女と交流する、
というひねった設定の映画です。

ニュージーランドの新鋭タイカ・ワイティティが、
監督、脚本、そしてヒットラー役でキャストも演じ、
脇にはスカーレット・ヨハンソン、
サム・ロックウェルという人気者が揃っています。

原作はクリスティン・ルーネンズの未訳の小説で、
感想などを読む限りかなりシリアスな内容ですが、
それを大きくコメディに振って、
ちょっとモンティパイソンのような雰囲気で映像化しています。

原作はオーストリアが舞台のようですが、
映画は明確にクレジットはないものの、
「ドイツの何処か」が舞台のようです。

これは個人的にはかなりガッカリで、
眠気と戦いながらの鑑賞になってしまいました。

これね、オープニングは非常にポップで、
実際のナチの映像がコラージュされたり、
音楽もビートルズの「抱きしめたい」のドイツ語版が掛かるんですね。
ラストはデビット・ボウイの「ヒーローズ」の、
これもドイツ語版が掛かります。

そこまでしているのに、
主人公を含めて全員が英語を喋っている、
というのがかなり違和感があります。
それもドイツ語っぽい英語を、
話しているようなところもありますよね。

勿論昔の映画ではこれが当たり前で、
あらゆる時代のあらゆる場所で、
英語で話しているのが普通だったのですけれど、
今はちょっとそれでは通用しないのじゃないかな。

ファンタジーだから、コメディだから、
という言い訳は出来ると思うんですが、
その辺もこの映画は振り切れていない、
という感じがするんですね。

監督本人が少年の妄想の中でのヒットラー役で、
出演しているんですが、
これがただチョビ髭を付けているだけで、
ちっとも似ていないんですよね。
現実のヒットラーの写真や絵も登場するだけに、
ひょっとしたら似せると逆にまずいのかも知れませんが、
正直もうちょっと似せて欲しかったですね。
でないととても不自然です。

また、このヒットラーが全然面白くないんですよね。
これなら出てこない方がましだな、
と思ってしまうくらい。
つまり、ヒットラーの登場によって、
物語が弾む、ということが全くないんです。

それを含めてこの映画は、
台本が良くないと思います。

前半少年がけがをするまでは、
物語に動きがあるのですが、
それ以降は殆どが家の中でもユダヤ人少女との交流になって、
お話が動いていかないのがかなり致命的で、
ラストも戦争が終わって外に出るだけでは、
ちっとも盛り上がりません。

勿論原作がそういう作品だ、
ということはあるのですが、
オープニングをドタバタコメディ的にしてしまっているので、
観客はどうしてもその要素の持続を、
期待してしまうんですよね。
それでずっと家の中で少女と話しているだけ、
というのでは、
とても映画として成立しないのではないでしょうか?

もともと「禁じられた遊び」みたいなお話なんですよ。
それを無理矢理モンテパイソンにしたのが無理があった、
というように思うんです。

これは第二次大戦末期の、
ドイツの敗色濃厚な時から始まって、
どんどん戦況は悪くなって、
最後は町で戦闘になって戦争が終わるのですが、
その時代背景や時間が移るという雰囲気が、
全く描出されていません。

急に爆弾が落ちて、急に戦争になって、
でも戦争が終わると町は元通り、
という感じです。

たとえば、ホロドフスキーの「リアリティのダンス」とか、
全然リアルではない書き割りみたいなセットなのに、
様式的な演出なのに、
それでも確実に時代の気分を感じさせるし、
時代の移ろいも感じさせるでしょ。
それこそが映画の魔法だと思うんですが、
そうした魅力が微塵もない、
というのがこの映画が詰まらない、
大きな理由であるように思えます。

そんな訳で今年一番の落胆映画で、
これは誰にもお勧めする気分にはなりませんでした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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横溝正史「獄門島」 [ミステリー]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも中村医師が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
獄門島.jpg
横溝正史の代表作「獄門島」です。

日本の本格ミステリー史上に残る名作ですが、
作品のポイントとなる部分に、
放送などには適さないとされる表現がある関係で、
これまで何度も映画やドラマ化はされながら、
オリジナルに忠実に映像化されたことが殆どない、
という曰く付きの作品でもあります。

この作品との出会いは小学校の低学年の頃で、
何年生くらいだったのかしら、
ちょっと覚えていないのですが、
それほど上の学年ではなかったことは確かです。
母親に夜色々な小説の読み聞かせをしてもらったのですが、
そのラインナップがかなりマニアックで、
最初は子供向けの読み物から始まって、
そのうちに横溝正史のミステリーや、
「西遊記」の原典からの完訳全巻などになりました。
勿論全部オリジナルで子供向けのリライトではありません。

横溝正史の長編ミステリーなら1週間くらい、
「西遊記」は多分1か月以上かかったと思います。

横溝正史ものはその時に、
「獄門島」、「八つ墓村」、「女王蜂」、「犬神家の一族」を、
読み聞かせてもらいました。

子供の頃にそれも耳から読んでいるので、
とてもとても強い印象がありましたし、
今でもこの4つの作品については、
そのイメージをありありと思い描くことが出来ます。

矢張り当時は「八つ墓村」が印象強烈でした。
ただ、今思うとあれは江戸川乱歩の、
「孤島の鬼」辺りの影響が強いですよね。
もともと横溝正史は編集者で、
乱歩に影響されて作品を書き始めて、
戦前のものは乱歩のパクリみたいなものが多かったんですよね、
それが戦後になって名探偵金田一耕助を登場させると、
その作風はカーをお手本にした、
本格ミステリーに変化したのです。
ただ、戦後の作品にも乱歩趣味のものがあり、
「八つ墓村」はその代表と言って良いのだと思います。

「獄門島」はそれに比べると印象は薄かったのですが、
他の作品にはない風格というか、
唯一無二という感じがあって、
子供心にもワクワクしました。

カーの幾つかの作品をお手本にしているのですが、
その変え方というか、アレンジの仕方も絶妙ですし、
犯人の造形も非常に印象的に描かれています。

綾辻行人さん以降の新本格のミステリーの系譜も、
矢張りこの作品なしでは生まれえなかった、
と言っていいような感じがありますね。

ミステリーとしての完成度についてはどうなのかな、
何度も読み返しているんですが、
最初の殺人は素晴らしいですよね。
2番目の殺人もとても魅力的なのですが、
少し意味不明という感じもあります。
トリックはとてもとても素敵なのですが、
そんなことしてもなあ、
という感じがあるのですね。
3番目の殺人は明らかに弱いですね。
また、殺人の動機がね、
とても有名なミステリーを下敷きにしている、
というのは分かるのです。
ただ、矢張りすっきりはしていないですね。
色々と補足や言い訳がついてしまっているので、
素直に腑に落ちない、という感じがあるのです。

その意味でミステリーの骨格としては、
「本陣殺人事件」の方が上とは思います。
今読むとラストが読めてしまう、というところはあるのですが、
動機も含めてとても完成度は高いですよね。
ただ、ちょっと短いですし、
乱歩タッチが抜けていないような仰々しさがあるので、
作品の風格と言う面では、
「獄門島」の方がはるかに上です。

そんな傑作ミステリーですが、
映像化ではあまり良い結果になっていません。

原作刊行から間もない1949年に、
松田定次監督により映画化されていますが、
これは片岡千恵蔵の多羅尾坂内シリーズの系譜にあるもので、
原作の設定は借りながら、犯人などは全く別になっている怪奇スリラーです。
このシリーズは横溝作品をかたっぱしから映画化しているのですが、
そのほぼ全てで犯人は原作と違っています。
これはまあ、1つの見識で、
ミステリーファンとしてはむしろ好ましく感じます。

その後角川書店が仕掛けた、
横溝作品リバイバルというのが1970代にあって、
角川映画の「犬神家の一族」が大ヒットしたので、
同じ市川崑監督が1977年に映画化しました。

「犬神家の一族」は僕も大好きですが、
横溝ミステリーがほぼ原作通りに映画化された、
史上初めてのケースと言って良い画期的映画でした。
ただ、一番良いところで佐清の仮面が透けて見えるところがあるでしょ。
あれはかなり痛恨のミスカットですね。
誰か気が付かなかったのかしら。

それで1977年の映画「獄門島」はとても期待して、
封切りに渋谷の映画館で観たのですが、
おやおや、という感じで正直ガッカリしました。

これね、犯人を変えているんですよね。
それは予告でもそう謳っていましたし、
松田定次方式と考えれば良いと思うのですが、
実際にはほとんど同じストーリーであるのに、
その一部だけを強引に変えて、
「犯人を変えた」と言っているんですね。
これじゃただ原作を詰まらなくしただけでしょ。
駄目だこりゃ、という感じでした。

これね、3つの殺人に3つのトリック、
というのがいいんですよ。
それを崩しちゃ駄目なのに、
映像化すると絶対変えちゃうんですよね。
確かに原作も3つ目のトリックが弱いので、
気持ちは分かるのですが、
でも変えちゃ駄目なんだよ。

ただ、原作そのままの部分は、
なかなかいいんですよね。
大原麗子さんも抜群にいいし。
原作の戦後の無常観のようなものも、
良く出ていたと思います。
それでこの映画は結構何度も観ています。
テレビでちょうどいいという感じ。
ただ、原作を変えた部分はまどろっこしくて、
イライラしてしまいます。

同年に古谷一行が主役のテレビシリーズで、
「獄門島」が放映されましたが、
これは原作の設定が大きく変わっていて、
放映に適さないとされる用語や設定が、
バッサリなくなっていました。
これなら、やらない方がましじゃん。
とても残念です。

その後何度かテレビドラマになりましたが、
例によって設定はガタガタに変えられていたので、
遺族の方もこれなら映像化にOKを出さない方がいいのに、
と無念の思いがありました。
2016年にBSで制作されたものは、
かなり原作に近く、用語もそのままであったようですが、
これは観ていません。

「獄門島」は今読んでも、
新鮮な驚きと戦後の喪失感のようなものを感じられる、
日本屈指の名作ミステリーだと思いますが、
テレビの情報などがあると、
予備知識があって楽しめない方が多いと思うので、
その点は非常に残念です。
ウィキペディアにも、
ネタバレとかの記載なく、
ストーリーが最後まで書かれていますし、
今の情報過多は本当に嫌になります。

私見ですが、
戦中戦後くらいの設定のドラマは、
もう絶対にその時の感触では再現できないので、
しばらく作るのは止めてもらった方が良いように思います。
これがもう100年くらいすれば、
ファンタジーとして成立するので良いのですが、
今は作るだけ嘘の上塗りになるだけなので、
昔の作品を見る機会を増やして頂いた方が、
よほど建設的であるように思います。

今日はすいません。
そんな感じでつれづれなるままに雑感でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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フルーツジュースと2型糖尿病リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
ちょっと野暮用で1日忙しくはしている予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
フルーツジュースと糖尿病.jpg
2020年のThe Journal of Nutrition誌に掲載された、
フルーツジュースと2型糖尿病の発症リスクとの関連についての論文です。

果汁以外に砂糖や果糖、人工甘味料などを含むジュースが、
血糖を上昇させ、2型糖尿病のリスクにもなることは、
これまでの多くの疫学データから、
ほぼ確立された事実です。

その一方でフレッシュな果物を、
多く摂るような食生活は、
むしろ2型糖尿病の予防に繋がることが、
これも最近の疫学研究のメタ解析などで示されています。

それでは、
添加物として糖質や保存料、着色料などを含まない、
100%の果汁のみを搾って作ったフルーツジュースは、
2型糖尿病の発症リスクとどのような関連があるでしょうか?

成分的に考えれば、ほぼ同じであるのですから、
フレッシュな果物が糖尿病の予防になるのであれば、
フレッシュジュースも同じように予防になると思われますが、
現行の多くの食事のガイドラインにおいては、
ジュースは果物とは別物という扱いで、
その摂取は制限される文面が多いようです。

この問題はまだ結論が出ているとは言えないのです。

そこで今回の研究では、
オランダの大規模な疫学研究のデータを活用して、
果物やフレッシュなフルーツジュースの摂取量と、
その後の2型糖尿病の発症リスクとの関連を、
36147名の対象者の、
中間値で14.6年という長期の経過観察期間において検証しています。

その結果、
果物もフレッシュなフルーツジュースの摂取量も、
その後の2型糖尿病の発症リスクに、
有意な関係を認めませんでした。

今回の検証においては、
果物も果汁のみのフレッシュなフルーツジュースも、
その糖尿病への影響については、
ほぼ同じと考えて良さそうです。

これはほぼ予想された結果とも言えますが、
今回のデータでは果物自体の効果もあまり明確ではなく、
この問題は今後も引き続き検証が必要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(付記)
文脈に誤りがありましたので、
コメントでご指摘を受け修正しました。
(2020年1月24日午後7時45分修正)
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心房細動再発予防における禁酒の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
禁酒と心房細動.jpg
2020年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
心房細動のリスクとアルコールとの関連についての論文です。

心房細動は心房が痙攣様に収縮して、
脈拍が乱れた状態が続く不整脈で、
75歳までに人口の10%はこの不整脈を発症すると報告されています。
(海外データ)

その最も深刻な合併症は、
心臓に生じた血栓による脳卒中ですが、
それ以外に心不全などのリスクも増加し、
抗凝固剤の適切な使用により、
脳卒中のリスクが予防されても、
総死亡のリスクは心房細動がない場合の、
2倍に増加すると報告されています。

また命に関わることはなくても、
不整脈発作時の動悸や息切れなどの症状は、
人によってはかなり不快なもので、
日常生活にも大きな制限が生じることも稀ではありません。

心房細動の治療としては、
不整脈を電気ショックなどの方法で元に戻すことと、
抗凝固剤や抗不整脈剤を使用する内服治療があります。

また、最近では不整脈の原因となっている部分を、
カテーテルを利用して焼却する、
カテーテルアブレーションと呼ばれる侵襲的な治療が、
広く行われるようになっています。

ただ、そのいずれの治療においても、
問題となることの1つは心房細動の再発です。

一旦は治療により心房細動が洞調律(正常な脈拍)に戻っても、
その後の再発率は決して低いものではありません。

そこで重要なのが、
生活改善による心房細動の予防効果です。

アルコールは喫煙などと並んで、
心房細動のリスクを高める代表的な生活習慣です。

しかし、適度な飲酒は、
心血管疾患には予防的に働くというデータもあるように、
飲酒の習慣のある人が禁酒をした場合に、
それがどれだけ心房細動の予防や再発予防に結び付くのか、
という点についての臨床データはあまりありません。

そこで今回の研究ではオーストラリアの6か所の病院において、
発作性心房細動もしくは持続性の心房細動があり、
治療によりそれが洞調律に戻っていて、
かつ飲酒の習慣のある140名の患者を登録し、
くじ引きで70名ずつの2つの群に分けると、
一方は禁酒を指導し、
もう一方はアルコール量の制限はせずに、
6か月間の経過観察を行なっています。
心房細動の再発に関しては、
ウェアラブル端末などを使用して、
観察期間においては持続的にモニタリングがされています。
(患者によりモニタリングには違いがあり)

飲酒量については、
1週間でアルコール120グラム以上の飲酒を基準にしています。

その結果、
開始後2週間は除外した観察期間において、
禁酒群では70人中37人(53%)、
コントロール群では70人中51人(73%)が心房細動を再発していて、
禁酒は心房細動再発までの期間を有意に延長させていました。

このように明確に、
心房細動における禁酒の効果が確認されたことの意義は大きく、
今後より長期の検証を含めて、
知見の積み重ねが、
心房細動のより良い管理に結び付くことを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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キャベツとアセトアミノフェン [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
キャベツとアセトアミノフェン.jpg
1983年のClin. Pharmacol. Ther.誌に掲載された、
キャベツと芽キャベツを沢山食べることの、
薬の代謝に対する影響についての論文です。

古い文献ですが、
検索した範囲において、
人間で検証されたデータのまとまったものは、
これ以外はあまり見つかりませんでした。

食事の豆知識的なところに、
キャベツを一緒に食べると風邪薬や頭痛薬が効かなくなる、
というような内容が時々書いてあります。

そうしたことがあるとして、
実際にどの程度の量のキャベツを食べると、
どの程度の影響があるのでしょうか?

その肝心な点が、
そうしたネット記事などには書かれていません。

中には、「キャベツを食べると風邪薬は全く効かない」
などと、明らかに誇大な表現が、
何ら根拠など示すことなく書かれているものもあります。

キャベツや芽キャベツには、
幾つかの興味深い点があります。

その1つはヨードの吸収を阻害するような成分が含まれていることで、
このため、ヨードの欠乏地域においては、
キャベツによる甲状腺機能低下症が、
生じる可能性があります。

そして、もう1つがグルクロン酸という成分を、
キャベツが多く含んでいるということです。

グルクロン酸は人間においては、
肝臓の解毒作用の中心的な物質の1つで、
肝細胞に薬物などの異物が取り込まれると、
それがグルクロン酸に囲まれるようにして結合し、
胆汁から腸に排泄されると、
そのまま便となって身体の外に出て行きます。
これをグルクロン酸抱合と呼んでいます。
グルクロン酸は非常に水に溶けやすい性質があるので、
水に溶けにくい薬物などを、
水に溶けやすくして排泄するという仕組みなのです。

さて、肝臓で代謝される多くの薬が、
グルクロン酸抱合を受けて排泄されますが、
その代表的な薬の1つがアセトアミノフェンです。

アセトアミノフェンは安全性の高い解熱鎮痛剤として、
お子さんの解熱剤から風邪薬の成分、
高用量では癌を含む全身の疼痛の緩和などの使用されています。

このアセトアミノフェンをグルクロン酸を多く含む食品と一緒に摂ると、
アセトアミノフェンがグルクロン酸抱合されて、
そのまま排泄されてしまい、
その効果が減弱する可能性が想定されます。

今回ご紹介する論文では、
健康な被験者10名(男性)に、
通常の食事とキャベツを芽キャベツを増やした食事を食べさせ、
10日間食べたところでアセトアミノフェンを内服させて、
その代謝を比較しています。

強化食では昼と夕に、
それぞれ芽キャベツ150グラムとキャベツ100グラムが、
添加されています。

その結果、
キャベツと芽キャベツを強化した食事を摂取すると、
その翌日空腹時に内服したアセトアミノフェンの代謝において、
薬物濃度の時間的指標であるAUCは16%低下し、
その排泄率は17%増加していました。
薬の内服後尿中へのグルコサミン抱合されたアセトアミノフェンの排泄は、
11時間に渡って増加が認められ、
排泄量は平均で8%増加していました。

キャベツと芽キャベツでトータル250グラムという量は、
キャベツ4分の1玉くらいに相当します。

キャベツを意識的に多く摂るダイエットを行なえば、
このくらいの量は摂取して不思議ではありません。
この程度の量のキャベツを毎日摂取すると、
アセトアミノフェンの効果は、
最大で2割程度低下する可能性がある、
ということになります。

従って、付け合わせ程度のキャベツが、
薬の効果に大きな影響を与えることはありませんが、
それを超えて意識的にキャベツを沢山食べることを続けると、
アセトアミノフェンのみならず、
グルクロン酸抱合を受けて排泄する薬の効果が、
一定レベル低下する可能性があると、
そう考えて大きな間違いはないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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