キャベツとアセトアミノフェン [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
1983年のClin. Pharmacol. Ther.誌に掲載された、
キャベツと芽キャベツを沢山食べることの、
薬の代謝に対する影響についての論文です。
古い文献ですが、
検索した範囲において、
人間で検証されたデータのまとまったものは、
これ以外はあまり見つかりませんでした。
食事の豆知識的なところに、
キャベツを一緒に食べると風邪薬や頭痛薬が効かなくなる、
というような内容が時々書いてあります。
そうしたことがあるとして、
実際にどの程度の量のキャベツを食べると、
どの程度の影響があるのでしょうか?
その肝心な点が、
そうしたネット記事などには書かれていません。
中には、「キャベツを食べると風邪薬は全く効かない」
などと、明らかに誇大な表現が、
何ら根拠など示すことなく書かれているものもあります。
キャベツや芽キャベツには、
幾つかの興味深い点があります。
その1つはヨードの吸収を阻害するような成分が含まれていることで、
このため、ヨードの欠乏地域においては、
キャベツによる甲状腺機能低下症が、
生じる可能性があります。
そして、もう1つがグルクロン酸という成分を、
キャベツが多く含んでいるということです。
グルクロン酸は人間においては、
肝臓の解毒作用の中心的な物質の1つで、
肝細胞に薬物などの異物が取り込まれると、
それがグルクロン酸に囲まれるようにして結合し、
胆汁から腸に排泄されると、
そのまま便となって身体の外に出て行きます。
これをグルクロン酸抱合と呼んでいます。
グルクロン酸は非常に水に溶けやすい性質があるので、
水に溶けにくい薬物などを、
水に溶けやすくして排泄するという仕組みなのです。
さて、肝臓で代謝される多くの薬が、
グルクロン酸抱合を受けて排泄されますが、
その代表的な薬の1つがアセトアミノフェンです。
アセトアミノフェンは安全性の高い解熱鎮痛剤として、
お子さんの解熱剤から風邪薬の成分、
高用量では癌を含む全身の疼痛の緩和などの使用されています。
このアセトアミノフェンをグルクロン酸を多く含む食品と一緒に摂ると、
アセトアミノフェンがグルクロン酸抱合されて、
そのまま排泄されてしまい、
その効果が減弱する可能性が想定されます。
今回ご紹介する論文では、
健康な被験者10名(男性)に、
通常の食事とキャベツを芽キャベツを増やした食事を食べさせ、
10日間食べたところでアセトアミノフェンを内服させて、
その代謝を比較しています。
強化食では昼と夕に、
それぞれ芽キャベツ150グラムとキャベツ100グラムが、
添加されています。
その結果、
キャベツと芽キャベツを強化した食事を摂取すると、
その翌日空腹時に内服したアセトアミノフェンの代謝において、
薬物濃度の時間的指標であるAUCは16%低下し、
その排泄率は17%増加していました。
薬の内服後尿中へのグルコサミン抱合されたアセトアミノフェンの排泄は、
11時間に渡って増加が認められ、
排泄量は平均で8%増加していました。
キャベツと芽キャベツでトータル250グラムという量は、
キャベツ4分の1玉くらいに相当します。
キャベツを意識的に多く摂るダイエットを行なえば、
このくらいの量は摂取して不思議ではありません。
この程度の量のキャベツを毎日摂取すると、
アセトアミノフェンの効果は、
最大で2割程度低下する可能性がある、
ということになります。
従って、付け合わせ程度のキャベツが、
薬の効果に大きな影響を与えることはありませんが、
それを超えて意識的にキャベツを沢山食べることを続けると、
アセトアミノフェンのみならず、
グルクロン酸抱合を受けて排泄する薬の効果が、
一定レベル低下する可能性があると、
そう考えて大きな間違いはないようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
1983年のClin. Pharmacol. Ther.誌に掲載された、
キャベツと芽キャベツを沢山食べることの、
薬の代謝に対する影響についての論文です。
古い文献ですが、
検索した範囲において、
人間で検証されたデータのまとまったものは、
これ以外はあまり見つかりませんでした。
食事の豆知識的なところに、
キャベツを一緒に食べると風邪薬や頭痛薬が効かなくなる、
というような内容が時々書いてあります。
そうしたことがあるとして、
実際にどの程度の量のキャベツを食べると、
どの程度の影響があるのでしょうか?
その肝心な点が、
そうしたネット記事などには書かれていません。
中には、「キャベツを食べると風邪薬は全く効かない」
などと、明らかに誇大な表現が、
何ら根拠など示すことなく書かれているものもあります。
キャベツや芽キャベツには、
幾つかの興味深い点があります。
その1つはヨードの吸収を阻害するような成分が含まれていることで、
このため、ヨードの欠乏地域においては、
キャベツによる甲状腺機能低下症が、
生じる可能性があります。
そして、もう1つがグルクロン酸という成分を、
キャベツが多く含んでいるということです。
グルクロン酸は人間においては、
肝臓の解毒作用の中心的な物質の1つで、
肝細胞に薬物などの異物が取り込まれると、
それがグルクロン酸に囲まれるようにして結合し、
胆汁から腸に排泄されると、
そのまま便となって身体の外に出て行きます。
これをグルクロン酸抱合と呼んでいます。
グルクロン酸は非常に水に溶けやすい性質があるので、
水に溶けにくい薬物などを、
水に溶けやすくして排泄するという仕組みなのです。
さて、肝臓で代謝される多くの薬が、
グルクロン酸抱合を受けて排泄されますが、
その代表的な薬の1つがアセトアミノフェンです。
アセトアミノフェンは安全性の高い解熱鎮痛剤として、
お子さんの解熱剤から風邪薬の成分、
高用量では癌を含む全身の疼痛の緩和などの使用されています。
このアセトアミノフェンをグルクロン酸を多く含む食品と一緒に摂ると、
アセトアミノフェンがグルクロン酸抱合されて、
そのまま排泄されてしまい、
その効果が減弱する可能性が想定されます。
今回ご紹介する論文では、
健康な被験者10名(男性)に、
通常の食事とキャベツを芽キャベツを増やした食事を食べさせ、
10日間食べたところでアセトアミノフェンを内服させて、
その代謝を比較しています。
強化食では昼と夕に、
それぞれ芽キャベツ150グラムとキャベツ100グラムが、
添加されています。
その結果、
キャベツと芽キャベツを強化した食事を摂取すると、
その翌日空腹時に内服したアセトアミノフェンの代謝において、
薬物濃度の時間的指標であるAUCは16%低下し、
その排泄率は17%増加していました。
薬の内服後尿中へのグルコサミン抱合されたアセトアミノフェンの排泄は、
11時間に渡って増加が認められ、
排泄量は平均で8%増加していました。
キャベツと芽キャベツでトータル250グラムという量は、
キャベツ4分の1玉くらいに相当します。
キャベツを意識的に多く摂るダイエットを行なえば、
このくらいの量は摂取して不思議ではありません。
この程度の量のキャベツを毎日摂取すると、
アセトアミノフェンの効果は、
最大で2割程度低下する可能性がある、
ということになります。
従って、付け合わせ程度のキャベツが、
薬の効果に大きな影響を与えることはありませんが、
それを超えて意識的にキャベツを沢山食べることを続けると、
アセトアミノフェンのみならず、
グルクロン酸抱合を受けて排泄する薬の効果が、
一定レベル低下する可能性があると、
そう考えて大きな間違いはないようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2020-01-22 08:10
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