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BMIと死亡リスク(イギリスの大規模疫学調査) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
BMIと死亡リスク.jpg
2018年のLancet diabetes & endocrinology誌に掲載された、
BMIという体格の指標と死亡リスクとの関連についての論文です。

これは多分まだご紹介していなかったと思うのですが、
ひょっとしたら書いていたかな、
という気もしてちょっと自信がありません。
もし既出の話題であればご指摘下さい。

まあこういう研究は沢山あります。

BMIというのはキログラムで表示した体重の数値を、
メートルで表示した身長で2回割り算して得られる数字で、
この数値が25以上であると過体重と判断され、
世界的にも30を超える状態は肥満と診断されます。

一般住民や心血管疾患の既往のない集団での疫学データにおいては、
BMIが20から24.9の間が最も死亡リスクが低く、
25を超えると総死亡のリスクも、
心血管疾患の発症リスクもいずれも増加に転じます。

しかし、その一方で心血管疾患を持つ患者さんの集団では、
BMIが20から24.9より高い、過体重や軽度の肥満の方が、
死亡リスクが低いという、
かなり意外な結果が複数報告されています。

これをBMIパラドックスと呼ぶこともあります。

何故、心血管疾患の患者さんでは、
体重が重い方が予後が良いのでしょうか?

以前ご紹介した論文では、
もう心筋梗塞などを発症したような状態においては、
内臓脂肪がある程度あった方が、
生命予後には良い影響があるのではないか、
という見解があり、
また別の研究においては、
体組成で筋肉量が多いと予後が良いのだ、
というような説明もありました。

今回の研究はイギリスのプライマリケアのデータベースを活用したもので、
3632674名という大規模なデータを解析したものです。
BMIと生命予後のとの関連を検証した単一のデータとしては、
これまでで最も大規模なものだと思います。

その結果、
総死亡のリスクはBMIが21から25で最も低く、
25未満においてはBMIが5増加すると、
総死亡のリスクは19%(95%CI: 0.80から0.82)
有意に低下する一方で、
25を超えてBMIが5増加すると、
総死亡のリスクは21%(95%CI: 1.20から1.22)
こちらは有意に増加していました。

病気別にみてみると、
癌、心血管疾患、呼吸器疾患のいずれもが、
同様のパターンを示していました。
ただ、精神疾患などにおいては、
BMIが24から27の範囲で、
BMIが高いほど死亡リスクは低下していました。

このように今回の最も大規模な疫学データにおいては、
BMIは21から25が最も死亡リスクが低い、
という傾向が確認され、
一部の報告にあった心疾患では25を超えた方がリスクが低い、
という結果は否定されています。

まあ健康な体重や体格というのは、
かなり個別の要素に左右されるという気がしますから、
BMI21から25を一応の目安と考えて、
後は個別の病気の有無や体調などから、
その人にとっての適正体重を、
適宜設定すればそれで良いというように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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