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新型コロナウイルス感染症に対するヒドロキシクロロキンの効果(フランスの観察研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療には回る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ヒドロキシクロロキンの臨床効果(フランス).jpg
British Medical Journal誌に2020年5月14日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスに対するヒドロキシクロロキンの有効性を検証した、
フランスでの観察研究の結果をまとめた論文です。

これは5月18日にご紹介した中国の多施設臨床試験と、
セットで同じ紙面に載ったものです。
本当は同時に紹介した方が良かったのですが、
事情あってバラでのご紹介となります。
ただ、ほぼほぼ結論は一緒です。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の治療には、
多くの薬剤が試みられていますが、
その中でも世界的にその有効性が期待され、
一定の臨床データも存在している薬の1つが、
リン酸クロロキンとヒドロキシクロロキン硫酸塩です。

アメリカのトランプ大統領はこの薬を何故か気に入っていて、
自らも「予防のため(?)」に内服している、
という報道がありました。

クロロキンはマラリアの治療薬として合成されたもので、
マラリアに有効性がある一方、
心臓への毒性やクロロキン網膜症と呼ばれる、
失明に結び付くこともある目の有害事象があり、
その使用は慎重に行う必要のある薬です。

ヒドロキシクロロキンはクロロキンの代謝産物で、
マラリアの診療に使用されると共に、
関節リウマチやSLEなどの膠原病の治療にもその有効性が確認され、
使用が行われています。
日本ではもっぱらこのヒドロキシクロロキンが、
膠原病の治療薬として保険適応されて使用されています。
その有害事象は基本的にはクロロキンと同一ですが、
その用量設定はマラリア治療よりずっと少なく、
有害事象も用量を守って適応のある患者さんが使用する範囲において、
クロロキン網膜症以外の有害事象は少ない、
というように判断されています。

クロロキンが膠原病に効果があるのは、
免疫系の活性化を抑えて、
免疫を調整するような作用と、
ウイルスの細胞との膜融合と取り込みを阻害する、
抗ウイルス作用によると考えられています。

アジスロマイシン(商品名ジスロマックなど)と言う抗菌剤と、
併用されることがあるのは、
アジスロマイシンにも免疫調整作用があるので、
その相乗効果を期待している、ということのようです。

この治療が注目されたのはフランスで、
少人数の臨床試験において画期的な治療効果があった、
という報告があったからです。
ただ、別個に行われた臨床試験においては、
同様の結果は再現されていません。

またヒドロキシクロロキン単独の効果については、
以前査読前の論文をご紹介しましたが、
そこでは62名の患者さんを2つの群に分けて、
一方にヒドロキシクロロキンの投与を行ない、
症状改善までの期間が2日程度短縮した、
という結果が報告されています。
ただ、単独施設の結果ですし、
長期の予後や治癒を見たものではないので、
それでクロロキンの有効性が認められた、
とは言い難いものでした。

先日ご紹介した中国の複数施設の報告は、
偽薬を使用したような厳密な方法ではありませんが、
くじ引きで患者を分け、
PCR検査の陰性化を指標としているので、
これまでの研究の中では最も厳密な方法によるものでした。
対象は中国国内の16の病院に入院した、
新型コロナウイルス感染症の軽症から中等症の患者150名です。

軽症というのは発熱や咳などの症状はあるものの肺炎はない事例で、
中等症というのは肺炎があるものの、
呼吸不全のような状態ではなく、
動脈血酸素飽和度は94%以上に保たれているものです。
これまでの臨床試験は、
ほぼ肺炎患者のみを対象としていましたから、
より軽症の患者を対象としているのがこの研究のポイントです。
新型コロナウイルス感染症の診断はPCR検査で確認されています。
その結果はPCRでの陰性化率においても、
症状改善までの時間においても、
両群で明確な差は認められませんでした。

つまり、ヒドロキシクロロキンの有効性は、
実証はされませんでした。

今日ご紹介する臨床データはフランスの4か所の病院のもので、
患者を最初に登録するような試験ではなく、
後からデータを確認して、
新型コロナウイルス肺炎と診断されて入院した患者のうち、
酸素療法が必要な状態であった、
入院から48時間以内に1日600㎎のヒドロキシクロロキンが使用された84名を、
使用されなかった89名と比較し、
入院後21日の時点での予後を比較検証しています。

その結果21日の時点の患者の予後には、
ヒドロキシクロロキンの使用と未使用による違いはなく、
心電図変化などの循環器系の有害事象は、
ヒドロキシクロロキンの使用群で多く認められました。

このように、ヒドロキシクロロキンの有効性を、
いち早く主張したフランスにおいても、
観察研究としてデータを取ってみると、
どうもあまり思わしい結果が得られていません。

偽薬を使用するような厳密な臨床試験はまだ行われていないので、
真の意味での有効性が今後明らかになる、
という可能性はゼロとは言えませんが、
現状積極的に治療薬として使用する根拠は、
科学的なものはあまりないと、
そう考えて大きな間違いはないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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