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「ミスト」(映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ミスト.jpg
これはWOWOWで撮ってあったものを最近観ました。

フランク・ダラボン監督はフランス生まれのハンガリー人で、
「ショーシャンクの空に」と「グリーンマイル」という、
いずれもスティーブン・キング原作の作品を脚本・監督し、
非常に高い評価を得ました。
両方とも感動的な作品です。
ちょっと優等生的な感じもします。

ただ、経歴を見ると、
「エルム街の悪夢3/惨劇の舘」や、
「ブロブ/宇宙からの不明物体」などの台本を書いていて、
いずれもホラーをマニアの視点から再構成したような、
面白いB級娯楽映画の快作でした。

なので、感動映画の大家となってからも、
こういう世界をもう一回ホラーでひっくり返してやろう、
というような思いがあったのではないかと思います。

そして、出来上がった作品は、
「ブロブ/宇宙からの不明物体」を思わせるような、
奇怪な霧の中から正体不明の怪物が襲い来る中、
スーパーマーケットに閉じ込められた、
アメリカの田舎町の住民のドラマで、
「ショーシャンクの空」のような脱出と逆転劇があるのでは、
という多くの観客の期待と希望を裏切って、
ある種映画史に残る壮絶なエンディングが待っています。

これね、怪物からのサバイバルのホラーとしては、
物凄く良く出来ているんですね。
怪物は何種類かいて、
基本的な造形には目新しさはないのですが、
細部の造形に個性があって、
生理的な嫌悪感を巧みに煽るのが上手いと思います。
全体像はしっかり見せないような怪物もいて、
そのバランスも巧みだと思います。
一番巨大な怪物は、
シルエットしか見せないでしょ。
見せられないのではなく、見せないのです。
その一方で見せるべきものは、
じゃんじゃん見せています。
このバランスが素晴らしいのです。
おどかしもあるのですが、
基本的には人間の側の圧倒的な無力感が、
この作品の恐怖を作り出しているんですね。
「とても助からない」という雰囲気が、
じわじわと感じられ、
徐々に膨らんでくるのが怖いのです。

そして、スーパーマーケットでの人間ドラマは、
現実をちょっとデフォルメして、
性格を少し醜悪方向にアレンジした住民達が、
怪物への恐怖に精神の均衡を失い、
混乱の中に自滅してゆきます。

ここはアメリカ映画が得意とする、
パニック映画の典型的なパターンなんですね。
典型的な名作を1つ挙げるなら、
リメイクもされた「ポセイドン・アドベンチャー」です。
この映画では転覆して上下が逆になった豪華客船の、
船内の下方に残された乗客が、
そこを脱出して上方を目指すか、
それともその場に留まって助けを待つかの二手に分かれ、
ジーン・ハックマン扮する主人公に率いられた一派が、
待たずに脱出しようという、
アメリカ的な行動主義を提示して、
犠牲者は出すものの最後には脱出に成功します。
その一方でそこに残った人たちは、
すぐに何か爆発して死んでしまいます。

積極的行動こそ善という、これはハリウッドの正義です。

今回の作品でも同じような対立が起こるのですが、
その結末は同じにはなりません。
ここに作り手たちの狙いの1つがある訳です。
登場する主人公は如何にも行動主義の主役に見えますが、
その性格はやや行き当たりばったりで、
不安になると前言を翻したりもしますし、
カッとすると理性を失って騒ぐような側面も描かれています。
これが周到な伏線になっているのです。
拳銃の使い方なども非常に上手いですね。
本当の家族がバラバラになり、
ラストに疑似家族が成立する、
というのも巧みな構成です。

狂信的な女性が登場して、
黙示録が暗唱されたり、
聖書のモチーフに似通った人物が登場したりと、
作品には聖書とキリスト教が裏テーマとして使われています。
ラストも聖書の通りのことが起こったのだと、
思えなくもないところが、
これも何処まで真剣なのか分からない部分はありますが、
この映画の一筋縄ではゆかないところを示しています。

そんな訳でこの作品は、
ホラーというジャンルを熟知しているダラボン監督が、
これまでのホラーを超える作品を生み出そうとした意欲作だと、
言って良いように思います。

ただ、ラストのあまりの後味の悪さと身も蓋もないところが、
映画の印象をかなり固定化してしまい、
監督の意図とはかなり違った作品として、
捉えられてしまったことは少し残念な気はします。

この作品の後ダラボン監督はあまり作品を撮っていませんし、
ホラーのジャンルにも近づこうとしていないように思えるのは、
監督にとってもこの作品が、
ある種のトラウマになってしまったからかも知れません。

僕は嫌いな映画ではありませんし、
一見の価値は間違いなくありますが、
鑑賞後に沈んだ気分になることは間違いがないので、
TPOを選んで観る必要はある映画です。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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