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虚血性脳梗塞後のコレステロール目標値について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
脳卒中とコレステロール.jpg
2019年のths New England Journal of Medicine誌に掲載された、
脳梗塞後のコレステロールの目標値についての論文です。

心筋梗塞を起こした患者さんにおいては、
LDLコレステロールを70mg/dL未満とするような、
強力なコレステロール降下療法を継続することが、
その再発予防において有効であることが分かっています。

その一方で同じ心血管疾患であっても、
脳卒中については明確なコレステロール降下の目標値が、
定まっていません。

コレステロールを低下させることにより、
脳卒中を起こした患者さんにおいて、
その再発が予防されたという報告はありますが、
その一方で脳内出血や出血系梗塞においては、
むしろ患者さんの予後が悪化した、
というような報告もあるからです。

日本を含むアジア人種では、
出血系梗塞や脳内出血の頻度が多く、
人種間の差があるのではないか、
という考え方も根強くあります。

そこで今回の研究では、
フランスと韓国の2か国において、
虚血性梗塞を起こして3か月以内、
もしくは一過性脳虚血発作を発症して15日以内の、
2860名をクジ引きで2つの群に分けると、
一方はLDLコレステロールが90から110mg/dLを目指すという、
通常のコントロール目標を設定し、
もう一方は70mg/dL未満という、
より厳密なコントロール目標を設定して、
両者の予後を比較検証しています。

中間値で3.5年の経過観察において、
心血管疾患による死亡と、
虚血性梗塞、心筋梗塞、血流改善のカテーテル治療を併せたリスクは、
通常のコントロールと比較して強化コントロール群では、
22%(95%CI: 0.61から0.98)有意に低下していました。
脳内出血の発症率と新規に診断される糖尿病のリスクには、
両群で有意な違いはありませんでした。
これは強化治療群ではより高用量のスタチンを使用するので、
スタチンの有害事象である糖尿病が増加しないかどうかと、
コレステロールを強力に低下することにより、
出血リスクが増加するという過去データがあるので、
そのリスクについて検証しているのです。

この研究は実際には資金的な事情で早期に終了しているので、
結果もまた不充分なものではありますが、
虚血性梗塞や一過性脳虚血発作の発症早期であれば、
より強力なコレステロール低下療法にメリットがある、
という結果は大変興味深く、
今後更なる研究の積み重ねを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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