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赤堀雅秋「神の子」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は大みそかでクリニックは休診です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
神の子.jpg
今年も大活躍の赤堀雅秋さんですが、
年の瀬に下北沢の本多劇場で、
大森南朋さんを主役とした新作を上演しています。

赤堀さんの劇作は、
2017年の「鳥の名前」と「流山ブルーバード」が素晴らしくて、
それからは欠かさず足を運ぶようにしています。

食い詰めの中年男達が、
どうしようもない蟻地獄のような世界で、
虚無的な闘いを繰り広げるようなドラマから、
最近は岩松了さんを思わせるような、
何気ない日常会話の往来の中に、
密やかな情念を成長させ、
それが事件を起こすというような、
奥行のある作劇に変化を見せています。

今回は大森南朋さん、田中哲司さん、でんでんさんという、
工事現場の誘導員の仕事をしながら、
パチンコと仕事とスナックを往来するだけの、
無為な人生を過ごしている3人の中年男が、
長澤まさみさん演じる謎の女性に関わり、
ボランティアの清掃活動を行うことから、
人生の何かを変えようとする姿を描きます。

現実の事件を彷彿とさせるような、
無差別殺人実行を口走る、
赤堀さん演じる、
危険な中年男なども登場しますが、
結果として事件が起こるというようなことはなく、
田中哲司さんの人生にのみ変化が起こりますが、
他の2人の人生はそのままに、
ひょっとして長澤さんの存在自体、
大森さんの妄想だったの?
という気配を漂わせつつ物語は終わります。

語り口は平明で笑いもある台詞も軽快に流れ、
底流にある雰囲気は現代を反映してかなり重いのですが、
比較的リラックスして観ることが出来ます。

そこにもう少し、
観客の心に食い入るような部分や、
予想外の人物の行動や展開などが、
あれば良いというようには思うのですが、
今回の作品はやや消化不良のまま、
予定調和的に流れてしまった、
という印象です。

長澤さんの役柄も掘り下げのないままに、
ただ謎めいているだけで終わってしまいますし、
途中で歌を歌ったり、
バレエを踊ったりするのも、
あまり考えた上での構成とは思えず、
細部を詰めないまま、
見切り発車した、
という印象を持ちました。

そんな訳で今回は完成度が低く、
今ひとつではあったのですが、
こうしたこともあるのでしょうから、
また次作に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い大晦日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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