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コーヒーのHIV・HCV重複感染における死亡リスク低下作用 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コーヒーとHIV死亡リスク.jpg
2017年のJournal of Hepatology誌に掲載された、
コーヒーの摂取量と、
HIVとHCVのウイルス感染を併発した患者さんにおける、
生命予後との関連を検証した論文です。

複数の大規模な疫学データにおいて
コーヒーが生命予後に良い影響を与えることは、
ほぼ実証された事実です。

ただ、個別の病気の患者さんにおいて、
どの程度の効果があるかについてはまだ不明の点が多く残っています。

HIV感染症の治療は格段の進歩を遂げていますが、
その中で問題となることの1つが、
C型肝炎ウイルス(HCV)との重複感染です。

HIVとHCVは、
いずれも血液を介して感染する病気なので、
その両者を持っている患者さんが多いことが知られています。

そして、
HIV感染症の患者さんの死亡原因として、
慢性C型肝炎を原因とする、
肝臓癌や肝不全、肝硬変が、
免疫自体の低下による感染症などより、
増えているという現実があるのです。

勿論今ではC型肝炎もHIVも、
有効な治療のある病気です。
しかし、それでも重複感染の予後は、
一定レベル以上改善していないのが実際であるようです。

コーヒーには抗酸化作用と抗炎症作用とがあり、
脂肪肝炎などの改善効果や、
C型慢性肝炎の進行抑制、
また肝臓癌の予防効果などにおいても、
有効であったというデータが複数存在しています。

それでは、
コーヒーの習慣のあるなしにおいて、
HIV・HCV重複感染の患者さんの生命予後には、
差があるのでしょうか?

今回の研究はフランスにおいて、
1028名のHIV・HCV重複感染の患者さんを登録して、
中間値で5.0年の経過観察を行なっています。
その結果、年間患者100人当たり1.64人が死亡していて、
1日3杯以上コーヒーを飲む人は、
1日3杯は飲まない人と比較して、
総死亡のリスクが50%(95%CI: 0.3 から0.9)、
有意に低下していました。

それを図示したものがこちらです。
コーヒーとHIV死亡リスクの図.jpg

この問題はまだ明確な結論が出ている、
とは言えませんが、
たった3杯のコーヒーで、
これだけの予後の差が見られたという今回の結果は、
非常に興味深く、
今後の更なる検証に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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