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穂の国とよはし芸術劇場PLATプロデュース「荒れ野」(2019年再演版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日からクリニックは年末年始の休診となります。
年始は1月6日(月)からの予定です。

ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
荒れ野.jpg
2017年に初演され、
その年一番と言って良い感銘を受けた傑作舞台「荒れ野」が、
同一キャストで今回再演されました。

初演があまりに素晴らしかったので、
再演で却ってガッカリしたらいやだな、
と思って、
行くかどうか迷っていたのですが、
桑原さんの原作による映画「ひとよ」も良かったので、
矢張り見なければと思い急遽駆けつけることにしました。

とてもとても良かったです。

初演は今回より小さな空間で、
舞台を取り込こむように客席があったのですが、
今回は会場はスズナリで、
舞台と客席は向かい合うという、
オーソドックスなセットになっています。

これがまず良かったと思います。
初演は壁やガラス戸が取り払われたセットで、
臨場感はある一方、
ガラス戸で2つの空間を仕切るという意味合いが、
分かりにくくなってしまったきらいがありました。

今回の方が正解だったと思います。

細部は結構忘れていたのですが、
それでも最初の「あなたならどうする」の歌から、
作品世界に一気に引き込まれ、
最後まで間然とするところのない構成に酔いしれました。

改めて思いますが、
これだけの芝居はざらにありません。

昔銀座の並木座で、
黒澤明監督の作品の特集上映に足を運び、
「生きる」を観たのですが、
通常はいびきをかいている高齢者が殆どの客席が、
その時だけは皆身を乗り出すようにして、
映画を観ていたことがありました。

なるほど、名作というのはこういうことかと、
得心がいったような思いにとらわれたことを、
今でもはっきり覚えています。

今回の舞台も僕が鑑賞した時には、
僕より年長の観客が大部分でしたが、
通常ならいびきの大行進になるところが、
ほぼ全員の観客が矢張り食い入るように、
舞台を見つめていました。

これぞ名作なのです。

キャストは手練れで素晴らしく、
特に小林勝也さんの飄々たる存在感には、
今回も圧倒されました。
小林さんの唯一無二の演技を観るだけでも、
この作品を観る意味はあると感じました。
ただ、一部のキャストの芝居には、
若干の「やり過ぎ感」は今回感じました。
受ける部分をもっと大袈裟にやろう、
というような意識が垣間見えて、
初演時よりややオーバーアクトになっていたのです。
その辺りに同一キャストによる再演の、
負の部分を少し感じました。
この芝居はともかく戯曲が素晴らしいので、
演技は台詞に奉仕するという意識で、
抑制的であるべきなのです。
その点でも小林さんの芝居はさすがでした。

もう上演は終わってしまいとても残念ですが、
またの再会を期待したいと思います。
この芝居はまたキャストが変わると、
別の魅力が浮上するようにも思います。
作品の底流にあるエロチックな部分が、
この上演ではかなり抑えられているのですが、
それがより明確化したような上演も、
それはそれでありかな、
というようにも思えるからです。

いずれにしても、
年末に最高の芝居に出逢えてまずは幸せでした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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