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体温と死亡リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
体温と死亡リスク.jpg
2017年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
体温と死亡リスクについての論文です。

体温は高い方が良いのでしょうか、
それとも低い方が良いのでしょうか?

これはまだ解決されていない問題です。

この問題は体温が何を指すのかによっても違います。

人間の脳や内臓の中心部の温度は、
深部体温と言って、ほぼ人種で一定に保たれている、
という考え方があります。

その一方で通常測定されている体温の大部分は、
皮膚の表面の温度で、
これは外気温によっても大きく左右されますし、
人間は深部体温を一定に保つために、
表面温度を上下させるので、
それを測定して評価することは、
実際には非常に難しいのです。

今回の研究はアメリカの病因の大規模な医療データを活用して、
感染症の診断や抗菌剤の処方がされておらず、
体温が正常範囲の中にある35488名の体温(体表温)と、
病気のリスクや生命予後との関連を検証しています。

その結果、
体温の平均値は36.6度(95%CI: 35.7 から37.3)で、
年齢が10年上がるごとに0.021度ずつ低下しています。
人種差でみると白人種に比較して、
アフリカ系アメリカ人は0.052度有意に上昇していました。
甲状腺機能低下症では0.013度体温は低下していて、
癌では体温が0.02度上昇、
BMIが1上がる毎に体温は0.002度上昇していました。
脈拍や血圧も体温上昇と正の関連を示していました。

この人種差や病気、BMIや脈拍血圧などの計測値は、
体温の数値の個人差のうち、
8.2%しか説明することは出来ず、
説明困難な体温の個人差と、
最も関連を持っていたのは死亡リスクでした。
体温が1.49度上がると、
1年間の死亡リスクは8.4%有意に増加していました。

今回の大規模データにおいては、
原因は明確ではありませんが、
体温の基礎値と死亡リスクが関連を持っていました。

基本的に体温は年齢と共に低下しているので、
やや矛盾した要素があるようにも思いますが、
通常測定された体温が、
多くのリスクと関連を持っているという結果は大変興味深く、
今後より詳細な知見に結び付くことを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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