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胃食道逆流症リスクと飲み物 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
逆流性食道炎と飲み物.jpg
2019年のClinical Gastroenterology and Hepatology誌に掲載された、
習慣的に飲んでいる飲み物と、
胃食道逆流症との関連についての論文です。

胃食道逆流症は、
胃の入り口の筋肉の緩みや胃酸過多、
肥満や円背などを原因として、
胃酸が食道に逆流し、
胸やけや吐き気などの原因となり、
悪化すると食道粘膜のびらんや出血などの変化を伴う病気です。

この病気の主な治療は、
胃酸の分泌を強く抑制する薬を、
継続的に使用することですが、
原因を治すというものではない上に、
主に使用されるプロトンポンプ阻害剤の、
長期使用に伴う多くのリスクが最近問題視されていて、
薬に頼らない治療の選択肢が求められています。

胃食道逆流症は生活習慣との関連が深く、
その中で議論になっていることの1つが、
常用している飲み物との関連です。

胃酸分泌を促進するような飲み物は、
胃食道逆流症のリスクを増加させる可能性があり、
その観点からはカフェインを含むコーヒーやお茶、
炭酸飲料などはその可能性が指摘されています。
しかし、これまでにあまり精度の高い研究結果は、
報告されていません。

そこで今回の研究では、
アメリカで看護師を対象とした大規模な疫学研究のデータを活用して、
この問題の検証を行なっています。

対象となっているのは、
登録時に胃食道逆流症の症状がなく、
癌の既往もなく、
胃酸抑制剤の使用もされていない、
看護師の女性48308名で、
長期の経過観察により、
そのうちの7961名が胃食道逆流症を発症していました。

常用している飲み物との関連を調べたところ、
その飲み物を全く飲まない場合と比較して、
1日6杯以上飲んでいる人では、
胃食道逆流症を発症するリスクが、
コーヒーで34%(95%CI: 1.13から1.59)、
紅茶で26%(95%: 1.03から1.55)、
炭酸飲料で29%(95%: 1.05から1.58)、
それぞれ有意に増加していました。
一方で牛乳、水、柑橘を含むジュースの摂取回数と、
胃食道逆流症の発症との間には、
明確な関連は認められませんでした。

通常カフェインが悪者のように想定されますが、
今回の検証ではコーヒーと炭酸飲料のリスクは、
カフェインの含有量ではあまり影響されず、
紅茶に至ってはカフェインを含まない方が、
むしろリスクが増加しているという、
解釈の困難な結果になっていました。
また、これまでの研究では柑橘系のジュースは、
胃食道逆流症のリスクを上げると考えられていましたが、
今回の結果ではそうした関係は認められませんでした。

飲み物による胃食道逆流症のリスクは、
喫煙やアルコールなどと比較すれば軽微で、
あまり重く考える必要はないと思いますが、
胸やけなどが生じやすい人では、
コーヒーや紅茶、炭酸飲料の多飲は避けた方が良く、
今回のデータでは1日そうした飲み物は、
3杯程度までにしておくのが、
無難な選択であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(付記)
前半でカフェインを誤ってニコチンと表記していました。
コメントでご指摘を受け修正しました。
(令和1年12月11日午後5時50分修正)
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