SSブログ

「ゴジラvsコング」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ゴジラ vs コング.jpg
東宝ゴジラ映画のリニューアルと言った雰囲気の、
公認アメリカ映画のシリーズ第4作が、
今ロードショー公開されています。

前作の「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」は、
「三大怪獣地上最大の決戦」が元ネタでしたが、
今回は題名の通り、
「キングコング対ゴジラ」が元ネタで、
そこにもう1つのゴジラシリーズの有名キャラが登場し、
更には地球内部の空洞を探検する、
「地底旅行」の趣向まで盛り込まれた、
相当に盛りだくさんの内容です。

ゴジラシリーズなどの、
東宝円谷特撮映画は、
公開当時は子供だましで恥ずかしいと、
日本の観客には相当に馬鹿にされていた訳ですが、
今では立派な世界的カルトですし、
その内容も意外に今でも成立するアイデアの宝庫です。

僕はリアルタイムでロードショーで観たのが、
「ゴジラ対ヘドラ」や「ゴジラ対ガイガン」くらい。
「怪獣大戦争」と「ゴジラ対モスラ」は、
確かリバイバル公開があってそれで観ました。
また、当時は東宝映画祭りとして、
「地球防衛軍」や「キングコング対ゴジラ」が、
短縮版として一緒に上映されていたのも一緒に観ました。
ドラマの部分をズタズタにカットした、
今思えば酷い上映でしたが、
当時は娯楽映画を再上映時に短縮版にするのは、
興行的には普通のことでした。
それから、旧作は主に池袋文芸座と大井武蔵野館の、
特集上映で鑑賞しました。
「怪獣総進撃」は近くの神社で野外上映会があったのを覚えています。

特に感心したのは「地球防衛軍」で、
あれは今観てもワクワクしますね。
大スクリーンで観る、富士の裾野の決戦は圧巻です。

「キングコング対ゴジラ」は、
東宝のサラリーマン喜劇と、
怪獣映画をミックスした作品なんですね。
「怪獣来るぞ」「何処に疎開しよう」みたいな、
怪獣がいる日常が、
結構コミカルに描かれていたのが印象的でした。
ただ、短縮版のためにフィルムがズタズタにされてしまったため、
その後修復はされましたが、
完全版は長く存在しない状態でした。

今回のモンスターバースシリーズは、
東宝特撮映画の後期に、
アメリカとの合作映画が何度か作られたのですが、
それに似た雰囲気の作品になっています。
一番似ているのは、多分「キングコングの逆襲」ですね。
そして、海をコングを輸送するところ、
一旦心停止したコングが電気ショックで蘇生するところ、
最後に海に逃れて終わりになるところは、
オリジナルを尊重しています。

それを変にリアルにすることなく、
お間抜け上等で最新の技術で映像化しています。

怪獣同士のバトルは確かに見応えがあるのですね。

特にキャメラワークが自由自在で、
物凄いスピード感で上から下から、海の中までと、
目まぐるしく動き回り、
2大怪獣の激闘を盛り上げます。

ただ、全部CGでしょ、という感じは濃厚にあるので、
昔特撮映画を観た時のような感激はないのですね。
CGも最初に「ジュラシックパーク」の第1作を観た時は、
結構興奮したものですが、
そうした興奮もないのは仕方がありません。
「あー、やってるな」という程度の感じではあります。

怪獣達に比べると、
人間の方はあまり目立ったドラマはなく、
役者さんも皆あまりしどころはないという感じですね。
かなりドラマパートは短縮されたようですし、
それも怪獣2匹を主役に据えよう、
という作り手の方針なのだと思います。
確かにキングコングは本当に表現力や演技力が豊かで、
アカデミーの俳優賞も、
これからはCGキャラが受賞する時代になるかも知れません。
それに引き換え、人間の役者さんの方は、
紙芝居のような、
吹けば飛ぶような役柄が殆どです。

これで本当にいいのかしら?

難しいところです。

小栗旬さんも、役柄としては謎の悪役で、
決して悪くはないのですが、
台詞は10もないくらいですし、
ラストはかなりお間抜けな感じでお気の毒です。
でも、他のキャストも皆どっこいどっこいでした。

このシリーズはいつもラストに予告みたいな場面が付くのですが、
今回は何もありませんでした。
多分一旦打ち止めになるのでしょうか?
残念な気もする一方で、
こんなものを量産するのもなあ、
という気もしてしまいました。

そんな訳でなかなかのクオリティのCGショーの大作ですが、
かつての怪獣映画に感じたワクワクは、
個人的にはあまり感じることは出来ませんでした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0) 

新型コロナウイルスmRNAワクチンの重症予防効果(アメリカの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナワクチンの重症化予防効果.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年7月30日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスmRNAワクチンの、
医療従事者における感染予防効果と、
重症化予防効果を検証した臨床データです。

新型コロナウイルスワクチンのうち、
ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社による、
2種類のmRNAワクチンが、
接種後1から2か月の間において、
約95%という高い有効性を持つことは、
ほぼ間違いのない事実です。

ただ、無症状を含めた感染の予防効果と、
感染してしまっても、
症状が軽くウイルス量が少ないのかどうか、
つまり重症化予防効果があるのか、
というような点については、
まだそれほどデータの蓄積がないのが実際です。

今回の検証はアメリカの複数地域において、
サポートスタッフなどを含む医療従事者、
トータル3975名を登録し、
2020年12月14日から2021年4月10日まで、
17週間の経過観察を施行。
その間は1週間に一度のRT-PCR検査を定期的に施行して、
それ以外にも発熱などの症状があれば、
その時点で検査を行なうという対応を継続しています。
そして観察期間中の感染率を、
その時点でのワクチンの接種状況と比較検証しています。
接種されたワクチンは、
基本的にファイザー社もしくはモデルナ社のmRNAワクチンです。

その結果、
観察期間中に204名(5%)の対象者が、
新型コロナウイルス感染症に罹患していて、
そのうちの5名は2回目のmRNAワクチン接種後,
2週間以降で感染、
11名は初回接種後14日以降で2回目接種後2週間以内で感染、
156名はワクチン未接種での感染でした。
32名は1回目接種後14日未満での感染のため、
ワクチンの有効性の解析には不適で除外されています。

ここから関連する因子を補正して計算すると、
2回のワクチン接種後14日以降の有効率は91%
(95%CI:76から97)で、
1回ワクチン接種後2週間以降の有効率は81%
(95%CI:64から90)と算出されました。
これは有症状と無症状の感染を併せた有効率です。

ここでウイルスの排泄量をワクチン接種者と非接種者の感染で比較すると、
ワクチン接種者ではウイルス量が40%低下していて、
38度以上の発熱などの症状の発症率も58%低く、
臥床期間も2.3日短くなっていました。

これは概ねワクチン接種後1から2か月程度の期間の感染ですが、
実際に有症状と無症状を併せた感染のリスクを、
90%以上低下させる効果があり、
ワクチン接種後の感染事例においては、
未接種と比べてウイルス量が少なくて症状も軽く、
重症化予防効果のあることも確認されました。

このように、
短期の有効性については非常に高い効果のある、
mRNAワクチンですが、
現状の問題は変異株、特にデルタ株への有効性と、
接種後数か月以降の時期における有効性で、
今後そうした点についても、
信頼の置けるデータの蓄積を待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0) 

極私的新型コロナウイルス感染症情報(2021年7月29日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

今日はクリニック周辺の新型コロナウイルス感染症の現況です。

ご存じのように東京では、
若年者の感染者が急増しています。

クリニックでのRT-PCR検査でも、
7 月15日くらいから陽性者が増え、
特に7月24日以降においては、
検査数自体は昨年末から今年の1月くらいと比べると、
かなり少ないのですが、
陽性率は50%を超えるような状態が続いています。

報道にもありますように、
30代以下の感染者が圧倒的に多く、
クリニックで確認された60代以上の感染者は、
7月は1人もいません。

東京都内においても、
発症にはかなり山谷があると思うのですが、
今現在で言うと品川周辺は、
これまでのピークを越えている印象です。

症状も変化している印象はあって、
30代以下の発症では、
発熱も微熱程度か、高熱は1日くらいのことが多く、
熱が落ち着いてから咳が始まって、
だるさは1から2週間は継続するという感じが典型的です。
初期から頭痛が強いのは、
割合と今も特徴的かと思います。

それが40代から50代での感染になると、
高熱の持続するケースが多くなり、
咳込みも強く、寒気や関節痛も持続して、
かなり重症感の強い事例が多くなります。

これも報道にもありますように、
10代から30代くらいで軽症の感染が爆発的に流行し、
殆どは軽症のまま終わるのですが、
それが上の世代に感染して、
重症化するという図式です。

昨年の時点では明らかに小児の感染は少なかったのですが、
最近は1から2歳でも当たり前に陽性になります。

このように、
同じ病気でありながら、
症状も変化すれば年齢分布も変化する、
と言う点がこの病気の非常に厄介なところで、
定期的に患者さんを診ていないと、
新型コロナかどうかの判断は、
不可能と言って過言ではありません。

端的に言えば、
今品川周辺で、
10代から30代くらいの風邪症状、
特に熱が1日出たけど、すぐに微熱になったよ、
咳が出て少し頭がいたいけど、
これコロナじゃないよね?
というような症状は、
ほぼ全てコロナと考えて、
大きな間違いはありません。

陽性率が高くて検査数が少ないのは、
そもそも軽い症状で元気は元気なので、
その世代の人は余程でないと、
病院を受診したりはしないのですね。
受診する場合の多くは、
会社や学校で「検査を受けろ」と言われたり、
帰省するので必要になった、
というような場合が殆どで、
それ以外は、
クリニックに平気でぶらりと、
「ただの風邪なので診て下さい」
と受診される感じです。

現状そうした患者さんを、
他の患者さんと一緒に診る訳にはいかないので、
その対応には本当に苦慮しています。

2階で発熱者の診察をしていて、
そうした患者さんがぶらりと来られると、
発熱者は事前に時間を決めて頂いているので、
外で一旦待って頂いて、
合間を縫って2階に案内する、
という感じに対応しないといけません。

それが重なってしまうと、
本当に呆然としてしまうしかありません。

どうかどうか、風邪の症状で受診される際は、
まず電話で事前に連絡をお願いします。

それは切に切にお願いしたいところですし、
上記のような風邪症状は、
かなりの確率で新型コロナなので、
軽症であっても、
そのつもりで生活をして頂きたいと思います。

保健所もてんてこ舞いの状態で、
濃厚接触者の補足も間に合っていませんし、
入院もホテルも一杯で、
多くの方が自宅待機か自宅療養、
という現状は変わっていません。

陽性の届け出を保健所に出しても、
患者さんに連絡が行くのは2日後、
というようなケースが最近2例あり、
担当者にお聞きすると、
もう1日中電話を掛け続けているけれど、
とても間に合っていない、というお話でした。

7月中旬から、ようやくゲノム解析の結果も、
クリニックに報告されるようになり、
変異株の状況も少しずつ明らかになってきています。
現状クリニックでの検査では、
3分の1程度がデルタ株という感じです。

そんな訳で色々なご意見も方もいると理解していますが、
現状は保健所も医療機関も、
手一杯で手詰まりの状態であることは間違いがなく、
上記のような今の風邪症状は、
高い確率でコロナなのだよ、という考えのもとに、
極力感染を広げないための方策を、
最低限取って頂きたいと切に願います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(1) 

新型コロナウイルスワクチン接種後の顔面神経麻痺について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は事務作業などの予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナワクチンによる顔面神経麻痺.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年4月27日掲載されたレターですが、
新型コロナウイルスのmRNAワクチン接種後の、
顔面神経麻痺の頻度について検証した内容です。

ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社による、
新型コロナウイルスのmRNAワクチンは、
有症状感染の発症予防効果として、
短期的には約95%という高い有効性を持ち、
現状流行の主体である変異株の感染に対しても、
一定の有効性を持つことが確認されています。

その副反応についても、
発熱や筋肉痛などの症状については、
高い比率で認められるものの、
強い全身性アレルギー反応であるアナフィラキシーや、
若年男性に多い急性心筋炎などは、
確認はされているものの頻度としては高いものではありません。

それ以外に、
臨床試験でコントロール群より高い頻度で認められていたのが、
顔面神経麻痺です。

これが本当にワクチン由来の副反応であるのかは、
現時点では不明ですが、
ウイルス感染や自己免疫は、
顔面神経麻痺の原因の1つではあり、
これまでに開発された多くのワクチンにおいても、
頻度は低いながら認められている副反応ではあるので、
実際に多くの一般の方に接種が行われた時に、
他のワクチンと比較して、
新型コロナワクチンでの発症が多いかどうか、
と言う点が、1つの問題となるのです。

今回のデータは、
WHOの専門部会で収集された、
新型コロナウイルスmRNAワクチンの有害事象、
トータル133883名を解析したもので、
そのうちの0.6%に当たる844名で、
顔面神経麻痺とその関連疾患が、
報告されていました。
このうちの749名はファイザー・ビオンテック社ワクチンの接種後で、
95名はモデルナ社ワクチンの接種後の発症でした。

844名中の67.8パーセントに当たる572名が女性で、
年齢の中央値は49歳、
ワクチン接種から発症までの中央値は2日でした。

これを他のワクチン接種における発症と比較したところ、
他のワクチン全体でも、
インフルエンザワクチンのみとの比較でも、
新型コロナワクチンにおける顔面神経麻痺の発症率は、
高いということはなく、
インフルエンザワクチンの方が、
より発症率は高くなっていました。

このようにこれまでの疫学データを見る限り、
新型コロナウイルスワクチン接種後の顔面神経麻痺は、
他のインフルエンザワクチンなどの接種後と比較して、
より高いということはなく、
新型コロナワクチン特有の有害事象と言えるものではないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0) 

高齢者の身体状態と抗凝固剤の使用時の予後との関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
抗凝固剤の骨折リスク比較.jpg
Annals of Internal Medicine誌に、
2021年7月20日ウェブ掲載された、
抗凝固剤のフレイルな高齢者に対する使用を検証した論文です。

心房細動という不整脈における、
脳塞栓症などの予防や、
下肢静脈血栓塞栓症における、
肺血栓塞栓症の予防などには、
抗凝固剤という、
強力に血液の凝固を抑える薬が使用されます。

古くから使用されているのが、
注射薬のヘパリンと経口薬のワルファリンで、
最近その利便性からその利用が増えているのが、
直接作用型経口抗凝固剤と呼ばれる薬です。
ダビガトラン(プラザキサ)やリバロキサバン(イグザレルト)、
アピキサバン(エリキュース)、
などがそれに当たります。

この直接作用型経口抗凝固剤は、
これまでの臨床試験などの結果より、
ワルファリンに匹敵する塞栓症予防効果があり、
脳出血などの重篤な出血系の合併症は少なく、
他の薬や食品などにより、
その作用が変動することも少ないので、
現在ではワルファリンに替わって、
こうした抗凝固剤の主流となっています。

ただ、
抗凝固剤を使用する患者さんには高齢者が多いのですが、
臨床試験には高齢者はあまり多くは含まれていません。
高齢者の特質として、
体力の低下による身体の衰え(フレイル)があり、
転倒や嚥下障害などのリスクは高まりますが、
そうしたリスクが抗凝固剤の使用に対して、
どのような影響を与えるのかという点については、
これまであまり検証されたことがありません。

そこで今回の研究では、
アメリカの高齢者医療保険のデータを活用して、
心房細動に対して、
直接作用型経口抗凝固剤のダビガトラン、リバロキサバン、アピキサバンを、
使用開始した患者さんを、
そのフレイル度で3つの群に分け、
ワルファリンを使用開始した患者さんと、
マッチングさせて比較検証しています。
フレイル度は、フレイルなし群、前フレイル状態群、フレイル群に、
フレイルのスコアで分類されています。

まずダビガトランとワルファリンの比較では、
トータルで158730名の患者が対象となり、
観察期間の中間値は72日間です。
その間の死亡と虚血性梗塞と重篤な出血を併せたリスクは、
ダビガトランとワルファリン群で有意な差はなく、
フレイル度による検証では、
フレイルなし群でのみ、
ダビガトランがワルファリンより19%(95%CI:0.68から0.97)、
死亡と虚血性梗塞と重篤な出血を併せたリスクを、
有意に低下させていました。

つまり、効果と安全性のバランスにおいて、
フレイルなしの高齢者では、
ワルファリンよりダビガトランが勝っていたけれど、
フレイルの傾向がある場合には、
両者の差は明確ではない、という結果です。

次にリバロキサバンとワルファリンの比較では、
トータルで275944名の患者が対象となり、
観察期間の中間値は82日間です。
その間の死亡と虚血性梗塞と重篤な出血を併せたリスクは、
リバロキサバンとワルファリン群で有意な差はなく、
フレイル度による検証では、
フレイルなし群でのみ、
リバロキサバンがワルファリンより12%(95%CI:0.77から0.99)、
死亡と虚血性梗塞と重篤な出血を併せたリスクを、
有意に低下させていました。

つまり、ダビガトランと同等の傾向が、
リバロキサバンでも認められた、
ということになります。

最後にアピキサバンとワルファリンの比較では、
トータルで218738名の患者が対象となり、
観察期間の中間値は84日間です。
その間の死亡と虚血性梗塞と重篤な出血を併せたリスクは、
アピキサバンがワルファリンより、
32%(95%CI: 0.65から0.72)有意に低下していました。
フレイル度による検証では、いずれの群でも、
アピキサバンがワルファリンよりリスクを低下させていて、
フレイル群でも、
27%(95%CI:0.67から0.80)有意に低下させていました。
このリスク低下は、
死亡リスクでも虚血性梗塞リスクでも、認められていますが、
特に重篤な出血のリスクは、
50%近い低下を示していました。

このように、
高齢者で特にフレイルの傾向のある人に対しては、
他の経口抗凝固剤より、
アピキサバンの有意性が明らかで、
これはこれまでの同様の臨床データと、
ほぼ一致する結果でもあるので、
今後の薬剤選択については、
薬剤間の差異を充分考慮する必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0) 

一次予防におけるスタチン使用の安全性(2021年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチン副作用メタ解析.jpg
British Medical Journal誌に、
2021年7月15日ウェブ掲載された、
コレステロール降下剤であるスタチンの、
一次予防における安全性を検証した論文です。

スタチンというのは、
コレステロール合成酵素の阻害剤で、
強力に血液中のコレステロールを低下させる作用を持ち、
高コレステロール血症の治療薬として、
世界的に広く使用されている薬剤です。

その使用は、
特に心筋梗塞などの心血管疾患の、
再発予防(二次予防)に有効性が高く、
こうした病気の診療においては、
必須の薬としての地位が確立しています。

スタチンにはコレステロール低下作用だけではなく、
抗炎症作用など、
動脈硬化などの血管病変を抑制するような、
多彩な作用が確認されていて、
その相乗効果として、
血管病変のトータルな進行予防に有効であることが、
これまでの精度の高い臨床データにより、
明らかになっています。

ここまで優秀な薬であるスタチンですが、
その一方で多くの副作用や有害事象が、
報告されている薬でもあります。

その中でも代表的なものは、
筋肉痛などの筋肉に伴う有害事象、
肝機能障害や急性の腎機能障害、
血糖上昇などの耐糖能異常、
そして白内障などの目の異常があります。

この中で最も多いのが筋肉痛ですが、
稀に横紋筋融解症という、
重い病態が発生することが報告され、
そのため少しでも筋肉痛があると、
スタチンは中止されることが、
臨床の現場では通常、
という状態が長く続きました。

ただ、その後の検証の積み重ねにより、
スタチンによる横紋筋融解症の発症自体は、
従来言われていたより極めて稀で、
多くのスタチン使用に伴う筋肉由来の自覚症状は、
薬剤とは無関係か、
関連するとしても薬の継続には問題はない、
という考え方が大勢を占めるようになりました。

肝障害や腎障害は勿論リスクはありますが、
他の多くの薬剤と同等かむしろ低いレベルで、
糖尿病のリスク自体もあることは間違いありませんが、
頻度的に高いものではありません。
白内障などの目の症状については、
相反する意見やデータもあり、
リスク自体が疑問視されています。

このように以前想定されていたよりも、
スタチンの有害事象や副作用は軽微なもので、
少なくとも疾患の再発予防への使用に、
影響を与えるものではありません。
この場合再発リスクは非常に高く、
その予防効果も高いものなので、
軽微な有害事象は使用の妨げにはならないからです。

ただ、そのリスクはあっても、
まだ病気になっていない人への使用(一次予防)については、
実際に病気になる確率は、
再発と比べればかなり低いものなので、
軽微な副作用も問題となる可能性があります。
こうした予防薬の使用の可否は、
有効性とリスクとのバランスによって決まるからです。

今回の研究は、
これまでの主だった臨床データをまとめて解析する、
システマティックレビューとメタ解析によるものですが、
この問題の現時点での検証を行っています。

これまでの62の臨床研究に含まれる、
トータル120456名を平均で3.9年観察した大規模データを、
まとめて解析したところ、
筋肉系の自覚症状や、肝障害、腎機能障害、目の異常の有害事象については、
スタチン使用による軽度のリスク増加が確認されました。
ただ、糖尿病の発症や検査で確認された筋肉の異常については、
スタチン使用による明確なリスク増加は確認されませんでした。
そして、その予防効果と有害事象のバランスから、
一次予防においても、
スタチンには有害事象に勝る有効性がある、
という判断になりました。

スタチンのうち、
アトルバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチンについては、
それぞれ幾つかの有害事象との関連が認められましたが、
スタチン間の明確な差は認められませんでした。
アトルバスタチンの使用量が増えると、
肝障害が用量依存性に増加する、
というデータが報告されていますが、
それ以外の薬や有事事象については、
そうした関連は明確ではありませんでした。

このように、
従来考えていたより、
スタチンによる有害事象のリスクは低いもので、
勿論適宜検査や診察で、
その可能性は検証しつつ薬は継続される必要がありますが、
一次予防においてもスタチンの有効性は、
その有害事象のリスクを凌ぐという結果自体は、
揺らがないものと考えて良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0) 

サイクリングの糖尿病生命予後への有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
終日新型コロナワクチン接種のお手伝いの予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
サイクリングの糖尿病への有効性.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年7月19日ウェブ掲載された、
サイクリングが糖尿病の患者さんの生命予後に、
与える影響についての論文です。

糖尿病の患者さんは糖尿病のない人と比較して、
総死亡のリスクも心血管疾患による死亡リスクも、
高いことが知られています。

糖尿病治療の目標は、
従ってその生命予後を糖尿病のない人と同じにすることですが、
そこにおいて薬物治療や食事療法と同じように重要であるのが、
運動習慣であるという点は、
専門家の一致した見解です。

ただ、それではどのような運動が、
糖尿病の患者さんにおいて最もその予後改善に結び付くのか、
と言う点については、
まだ明確なことが分かっていません。

心血管疾患の予防のためには、
ウォーキングに少し強度の高い運動を混ぜたような、
運動プログラムが有効と報告されていますが、
実際には糖尿病の患者さんが、
そうした運動に定期的に時間を割くことは、
それほど簡単なことではありません。

そこで習慣化しやすい運動として、
注目されているのがサイクリングです。

サイクリングは一定の運動強度があり、
出勤や買い物などをサイクリングに切り替えることにより、
簡単に運動習慣を作れるという利点があります。

サイクリングが心血管疾患のリスク低下に繋がる、
という点については、
これまでに複数のデータが存在していますが、
糖尿病の患者さんにおいての生命予後改善効果については、
これまでに信頼の置けるデータがありませんでした。

そこで今回の研究では、
ヨーロッパで生活習慣と癌との関連を検証した、
大規模な疫学研究のデータを活用して、
糖尿病の患者さんにおけるサイクリングの習慣と、
生命予後との関連を比較検証しています。

7459名の糖尿病患者を5年経過観察したところ、
サイクリングの習慣のある患者はない患者と比較して、
総死亡のリスクが週に60分未満でも22%(95%CI:0.61から0.99)、
150から299分では32%(95%CI:0.57から0.82)、
有意に低下していました。
こうした傾向は心血管疾患による死亡リスクについても、
ほぼ同様に認められました。

このように、糖尿病の患者におけるサイクリングの習慣は、
週に300分未満では運動時間に伴って、
生命予後の改善効果が確認されました。

週に300分で頭打ちになっていることの解釈は、
確実なものはありませんが、
サイクリングには事故のリスクはあり、
それが影響した可能性も否定は出来ません。

この問題は今後より詳細な検証が必要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(2)  コメント(0) 

デルタ株に対する新型コロナワクチンの有効性(イギリスの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも須田医師が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
デルタ株に対するコロナワクチンの効果.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年7月21日ウェブ掲載された、
新型コロナワクチンのデルタ株に対する有効性についての論文です。

新型コロナウイルスワクチンのうち、
ファイザー・ビオンテック社と、
モデルナ社の2種類のmRNAワクチンと、
アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンについては、
その高い有効性が臨床試験においても、
その後の疫学データにおいても確認されています。

ただ、現時点でクリアでない問題は、
数ヶ月を超える有効性が不明であるという点と、
変異株、特にその性質に違いのあるとされるデルタ株に対する、
有効性が明確ではないという点です。

今回の検証は、
主にファイザー・ビオンテック社ワクチンと、
アストラゼネカ社ワクチンが接種されているイギリスにおいて、
RT-PCR検査のパターンからアルファ株とデルタ株を同定して、
両者に対する2種類のワクチンの有効性を比較しているものです。

その結果、
新型コロナワクチン1回接種後の有効性は、
アルファ株に対するものが48.7%(95%CI: 45.5から51.7)、
デルタ株に対するものが30.7%(95%CI: 25.2から35.7)で、
ファイザー社とアストラゼネカ社ワクチンの間で、
明確な差は認められませんでした。

ファイザー・ビオンテック社ワクチンの、
2回目接種後の有効性は、
アルファ株に対するものが93.7%(95%CI: 91.6から95.3)、
デルタ株に対するものが88.0%(95%CI: 85.3から90.1)であったのに対して、
アストラゼネカ社ワクチンの2回目接種後の有効性は、
アルファ株に対するものが74.5%(95%CI: 68.4から79.4)、
デルタ株に対するものが67.0%(95%CI:61.3から71.8)と推計されました。

それを図示したものがこちらになります。
デルタ株に対するコロナワクチン2回の効果グラフ.jpg

今回の検証からは、
数ヶ月という期限付ですが、
デルタ株に対する新型コロナワクチンの有効性は、
アルファ株のそれと比較すると劣るものの、
2回接種以降については、
一定の水準には達していると、
現時点ではそう考えて良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(2)  コメント(0) 

劇団「地蔵中毒」第14回公演 無教訓意味なし演劇vol.14『母さんが夜なべをしてJavaScript組んでくれた』 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
地蔵中毒.jpg
劇団地蔵中毒の新作公演に足を運びました。

この劇団は今回が観るのは3回目です。

最初に2年前に観た時は、
シュールなコントとドタバタとがない混ぜとなっていて、
面白いところもある一方で、
ダラダラと意味不明の場面が続くような感じもあったのですが、
今年の2月に観た作品では、
かなり演出も洗練されていて、
小劇場的な奇想から、
ダイナミックなラストに至る点も魅力的でした。

今回の作品では、演出はより洗練されていて、
以前は特徴の1つとされていた、
「ゆっくりと時間を掛けた間延びする暗転」も、
殆どありませんでした。

「カラマーゾフの兄弟」が原作とされていて、
ただ、題名を借りただけなのかしら、と思っていると、
意外に原作の骨格を使用した作品になっていて、
ラスト「カラマーゾフ万歳」という台詞も、
そのまま使われていました。

ただ、皿屋敷さんの真面目な感じが出すぎたかな、
という感じもあって、
感情を梃子にして物語が予想外の方向に動く、
というようなダイナミズムがないので、
原作のある分、今回は予定調和的に流れたかな、
という感じがしました。
もう少し物語自体で盛り上がるという感じがないと、
2時間という上演時間は長すぎると思います。

ラストの巨大な作り物も素敵なのですが、
前作の「観音様から夏祭り」という奇想と比べると、
ただ大きな物を出しただけ、という感じが否めなくて、
少し物足りなさは感じました。
最後に人間の時代が終わるというのは、
小劇場の物語としては定番過ぎるので、
もう一ひねりあっても良いのではないかとも感じました。

この作品で「神殺し」というのは、
ちょっとテーマ的に重過ぎると思いますし、
赤ちゃんをラストで無雑作に投げ捨てるのは、
確か「ファンキー」でしたか、松尾スズキさんもやっていましたが、
あまりやらない方が良かったと感じました。

前回も気になったのですが、
客席には中高年のおじさんが一定数生息していて、
かつての「毛皮族」の客席を彷彿とさせました。
この劇団にはちょっとエッチな部分があって、
必ずキャットファイトみたいな場面も用意されているので、
多分その空気感が、
こうしたおじさんやおじいさんを、
樹液の蜜のように引き付けるのかな、
というように感じました。

小劇場には昔から、
こうしたニーズがあるのですね。

面白い現象だと思います。

キャストはなかなか充実していて、
演技レベルも安定しているので安心して観ていられます。
ただ、もう少し破天荒な人が数人いた方が、
より盛り上がるという気もしました。

いずれにしても、
これぞ小劇場という気分を、
今最も感じさせてくれる劇団であることは確かで、
これからも新作を楽しみに待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0) 

「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ファブル.jpg
岡田准一さんが「殺さない殺し屋」を演じる、
コミック原作のアクション映画第二弾が、
今ロードショー公開されています。

これは前作も観たのですが、
出来は今回の方が数段上ですね。
前作は岡田さんがコミカルな演技をするのが、
とても合わない感じで、
全体のバランスが悪い感じがあったのですが、
今回はもうそうした岡田さんの演技は、
最小限に切り詰めて、
もっぱらアクションをつるべ打ちの様に見せることに、
徹した趣向が成功していたと思います。

アクションは凄いですよ。

まずオープニングのカーチェイスで観客の度肝を抜きますし、
クライマックスの団地のアクションシーンは、
映画史に残ると言っても過言ではない充実度です。
ここまでのことをしてしまって、
その後の堤真一さんとの対決は、
どうするつもりなのだろうと思っていると、
アクションではなくドラマと展開で見せるという趣向になっていて、
普通ラスボスとの対決を延々と見せることになるところを、
一切やらないというセンスの良さにも感心しました。

アクションは凄いのですが、
トータルな上映時間の中で、
それほどアクションシーンが多いということではないのですね。
端的に言えば、オープニングとクライマックスだけなのですが、
ダラダラ時間を使わないで、
見せ場を集中させるところにも、
作り手の自信のようなものを感じました。

ちょっとコマ落としが多すぎるかな、という気がしますが、
編集が非常に緻密ですよね。
同じ場面を複数の角度や、
接近と俯瞰で撮って、
それをパズルのように組み合わせているのですが、
その編集自体にもリズムがあって、
よくぞここまで練り上げた、という思いがします。
あのリズムは「フレンチコネクション」に近い感じですね。

内容はまあ、トータルには何ということもないものなのですが、
キャストはアクションスターとして圧倒的な、
岡田さんがいいですし、
周辺メンバーも良い仕事をしています。
堤真一さんの狂気もなかなかで、
その配下の安藤政信さんが、
物語の軸として、
とても良い仕事をしていました。
前作は安田顕さんの作品で、
今回は安藤さんの作品と言っても、
ドラマ的にはそう間違っていないと思います。

そんな訳で、
かつての東映アクション映画の、
良いところを再構成してリニューアルしたような素敵な娯楽映画で、
時間潰しに映画館に入って、
意外に充実した気分になって外に出るような、
そんなアクション映画の快作です。

お好きな方は是非。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも感染対策には充分留意しつつ、
良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
nice!(0)  コメント(0)