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新型コロナウイルス不活化ワクチンの有効性(チリでの第2相臨床試験) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナ不活化ワクチンの有効性チリ.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年7月7日ウェブ掲載された、
中国製不活化ワクチンの、
南米チリでの臨床試験結果をまとめた論文です。

新型コロナウイルスワクチンとして、
最もその有効性が確立されているのは、
ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社による、
mRNAワクチンであることは間違いがありません。
次にデータが豊富であるのは、
アストラゼネカ社のアデノウイルスベクターワクチンで、
それ以外に途上国を中心として、
ワクチン外交的な戦略もあって、
広く使用されているのが中国製の不活化ワクチンです。

中国の不活化ワクチンは幾つかの種類がありますが、
代表的なものの1つが、
シノバック・バイオテックス社による、
コロナバックと命名されたワクチンです。

このワクチンの第3相臨床試験は、
ブラジル、チリ、インドネシア、トルコで行なわれていて、
その結果はまだ部分的にしか公表されていません。

今回のデータはコロナバックの国を挙げての集団接種が、
2021年2月からスタートしたチリのもので、
16歳以上トータル1000万人余の健康保険のデータを解析し、
ワクチン未接種の547万人余と、
1回のみ接種した54万人余、
2回の接種を終えた417万人を比較して、
3か月間の新型コロナウイルス感染症の発症との関連を検証しているものです。

ワクチンの有効性については、
2回の接種終了後14日以上経過した時点での、
感染の有無で評価を行なっています。

その結果、
コロナバックの2回接種により、
新型コロナウイルス感染症の診断事例で検証した予防効果は、
65.9%(95%CI:65.2から66.6)で、
新型コロナウイルス感染症による入院の予防効果は、
87.5%(95%CI:86.7から88.2)、
感染により集中治療室に入室するリスクの予防効果は、
90.3%(95%CI:89.1から91.4)、
新型コロナウイルス感染症による死亡の予防効果は、
86.3%(95%CI:84.5から87.9)と算出されました。

チリにおいては別個にファイザー社ワクチンの接種も行われていて、
同様の解析を行なったところ、
感染予防効果は92.6%、入院の予防効果は95.1%、
集中治療室に入室するリスクの予防効果は96.2%、
死亡の予防効果は91.0%とそれぞれ算出されています。

変異株はアルファ株が3割程度認められていて、
それ以外の問題となる変異株は少数という集団のようです。

このデータは実際に接種を行なった時の有効性を見ていて、
例数も非常に多いと言う点で意義のあるものですが、
3か月の期間が取られていても、
実際に感染した患者は、
接種完了後せいぜい1から2か月と思われますから、
長期の有効性については情報を提供してはくれません。

他の発表データを併せて考えると、
現状新型コロナウイルス不活化ワクチンの、
有症状感染予防効果は、
概ね60%程度と思われ、
90%を超えるファイザーやモデルナのmRNAワクチンと比較すると、
明らかに見劣りはしますが、
安定した供給が可能で、
価格も安く抑えられるという点は利点です。

ただ、ファイザー社のワクチンが、
6か月程度でその有効性をかなり低下させるのでは、
という趣旨の報道がありましたが、
不活化ワクチンがより短期間で、
そうした有効性の低下を来すという可能性も否定は出来ず、
変異株に対する効果も未知数であることに変わりはありません。

今後の検証を待ちたいと思いますが、
ワクチンは外交の道具として使われている側面もあり、
何処まで信頼性のあるデータが提出されるのか、
今後のデータ発表の経緯にも注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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