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小児における新型コロナウイルス罹患後症候群の頻度 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ロングCOVIDの実態.jpg
JAMA誌に2021年7月15日ウェブ掲載されたレターですが、
新型コロナウイルス感染症罹患後に、
持続する症状の頻度を解析した短報です。

新型コロナウイルス感染症の罹患後に、
だるさや微熱などの症状が長期間持続することや、
肺疾患や生活習慣病などの全身疾患が、
新たに生じることも多いことは、
これまでにも多くの報告があります。

主にヨーロッパでは、COVID-19罹患後症候群という概念で、
初発から12週間以上持続する症状を定義していましたが、
以前ご紹介したアメリカの研究では、
より広く発症から21日以上持続する体調不良を、
シンプルに後遺症と表現していました。
それ以外にロングCOVID(long COVID)、
というような表現も使用されています。
要するに、まだ統一された概念ではないようです。

新型コロナウイルス感染症には、
年齢による発症の違いがあります。

ただ、この新型コロナウイルス感染症罹患後症候群に、
年齢による発症の差があるのかという点については、
これまであまりデータがありませんでした。

今回の研究はスイスにおいて、
55か所の学校を無作為に抽出し、
そこに通う6歳から16歳の小児1355名に、
CIVID-19の抗体検査を施行し、
陽性であった109名と陰性であった1246名の、
その後の経過を比較検証しています。

その結果、
抗体が陽性であった109名のうち4%に当たる4名と、
抗体が陰性であった1246名のうち2%に当たる28名に、
1つ以上の症状が12週間以上に渡って持続していました。

抗体陽性例で持続が見られた症状は、
3%でだるさ、2%で集中力の低下、
2%で睡眠不足、などとなっていました。

このように、今回の検証では、
新型コロナウイルス感染症後に持続していた症状は、
6歳から16歳くらいの小児においては、
それほど頻度の多いものではなく、
また、抗体陰性のコントロールと比較して、
明確に上昇しているとは言えませんでした。

ただ、今回のデータは、
ある時点で抗体陽性であった学生のうち、
明らかに過去の感染を除外しただけなので、
厳密にその時点で感染したことが、
証明されている訳ではありません。

従って、今回の結果のみで、
小児における新型コロナウイルス感染症の後遺症は少ない、
というように言い切ることは出来ませんが、
現時点で後遺症が多いと言う根拠はない、
という言い方はして問題はないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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