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抗菌剤による大動脈瘤リスク(台湾の疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
フルオロキノロンの大動脈瘤リスク.jpg
JAMA Internal Medicine誌に2020年9月8日ウェブ掲載された、
ニューキノロン系と呼ばれる抗菌薬による、
大動脈瘤やその解離のリスクについての論文です。

ニューキノロン系の抗菌剤というのは、
レボフロキサシン(クラビット)、シプロフロキサシン(シプロキサン)、
オフロキサシン(タリビット)、ガレノキサシン(ジェニナック)、
シタフロキサシン(ジェニナック)などがあります。

このタイプの抗菌剤は経口剤が主体で使用が簡便で、
その効果は強力なので、
国内外を問わず広く使用されています。

ただ、このタイプの抗菌剤は、
ペニシリン系の抗生物質と比較すると、
人間の細胞に対する毒性が強く、
神経細胞に対する毒性から痙攣を誘発するなど、
他の抗菌剤にはあまり見られない、
有害事象や副作用の原因となります。

そうしたニューキノロンに特徴的な副作用の1つが、
アキレス腱の炎症やその断裂です。
これは、ニューキノロンの抗菌作用以外の作用に、
その原因があると考えられています。

報告によると、
マトリックス・メタロプロテアーゼという、
コラーゲンなどの膠原繊維を分解する酵素があり、
その酵素を刺激することにより、
腱組織などの炎症に結び付きやすいと想定されています。

一方で大動脈瘤の発生やその解離にも、
このマトリックス・メタプロテアーゼの活性化が、
影響しているという仮説があります。
動脈壁の膠原繊維などの組織が障害されることにより、
動脈壁が脆弱となって、
瘤形成や解離の誘因になると言うのです。

これがもし事実であるとすると、
ニューキノロン系抗菌剤の使用により、
大動脈瘤のリスクが増加したり、
大動脈瘤の解離が進行するという可能性が示唆されます。

実際これまでに幾つかの観察研究で、
大動脈瘤やその解離と、
ニューキノロン系抗菌剤の使用との関連を、
示唆する結果が報告されています。
ただ、あまり精度の高い研究ではなく、
更なる検証の必要性が指摘をされていました。

以前ブログでご紹介したことのある、
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
スウェーデンの大規模疫学データでは、
ニューキノロン系抗菌剤(78%はシプロフロキサシン)の処方と、
その後60日間に起こった大動脈瘤もしくはその解離の、
最初の診断との関連を検証しています。

トータルで360088件のニューキノロン系抗菌剤の処方が、
360088件のペニシリン系抗生物質である、
アモキシシリンの処方事例と比較されています。

その結果…

ニューキノロン系抗菌剤の使用後60日以内の、
大動脈瘤とその解離の診断率は、
年間1000人当たり1.2件であったのに対して、
アモキシシリン使用後では0.7件で、
アモキシシリンと比較してニューキノロン系薬剤では、
大動脈瘤と解離のリスクが1.66倍(95%CI: 1.12から2.46)
有意に高くなっていました。
これは絶対リスクとしては、
100万人に治療をした場合に、
それにより82件の大動脈瘤もしくは解離が発生する、
という頻度と計算されます。
これを大動脈瘤の診断と解離の診断とに分けて解析すると、
大動脈瘤の診断のリスクが1.90倍(95%CI: 1.22から2.96)、
大動脈瘤解離のリスクが0.93倍(95%CI: 0.38から2.29)となり、
ニューキノロンと関連が深いのは、
解離よりも大動脈瘤自体の診断であると考えられました。

ただ、抗菌剤は感染症の治療に用いるものですから、
特定の抗菌薬が使われることの多い感染症というものが、
当然存在している筈です。
従って、フルオロキノロンとペニシリンの差は、
その使われやすい感染症の違いによっている、
という可能性も考えられるのです。

今回の研究は台湾のものですが、
健康保険の大規模データを活用して、
大動脈瘤やその解離を発症した28948名を、
年齢性別などをマッチさせた289480名のコントロールと比較して、
そのリスクと感染症や抗菌剤の使用との関連を検証しています。
その結果、
感染症自体は大動脈瘤とその解離のリスクを有意に増加させていて、
敗血症と腹部感染症が最もそのリスクは高くなっていました。

一方で特定の感染症の影響を除外すると、
フルオロキノロンはペニシリンなど他の抗菌剤と比較して、
大動脈瘤やその解離のリスクに、
有意な影響を与えていませんでした。

今回の結果のみをもって、
フルオロキノロンが安全とは言い切れませんが、
フルオロキノロンの使用と大動脈瘤との関連は、
そう単純なものではないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルスに対するステロイド治療の有効性(メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は基本事務作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ステロイドのコロナウイルスへの効果メタ解析.jpg

新型コロナウイルス感染症は、
8割以上の患者さんは軽症で推移しますが、
肺炎から重篤な呼吸不全に進行するケースがあり、
人工呼吸器の装着が必要となるような事例では、
その致死率も25%以上と報告されています。

抗ウイルス剤のレムデシビルは、
患者の回復までの期間を短縮する効果が、
臨床試験で報告されていますが、
現状重症の事例で明確に死亡リスクを低下させた、
という信頼のおけるデータが、
存在しているような治療は殆どありません。

現時点で、
その唯一の例外が重症者に対するステロイド治療です。

新型コロナウイルス感染症の肺病変の重症化には、
免疫系の過剰な反応が影響しているのでは、
という考え方があります。
炎症性サイトカインなどの増加は、
その可能性を示唆しています。

デキサメサゾンなどの、
強力な合成ステロイド(糖質コルチコイド)剤には、
強い抗炎症作用と免疫抑制作用があり、
免疫の暴走を抑えるような効果が期待されます。

その一方で免疫の抑制は、
ウイルス感染の経過を悪化させるような可能性も、
否定は出来ません。

強力なステロイド剤の使用は、
諸刃の刃という側面があるのです。

少数の事例のデータにおいて、
メチルプレドニゾロンというステロイド剤の使用により、
新型コロナウイルス感染症の予後が改善した、
というようなデータはあるものの、
大規模なデータや介入試験での有効性は限定的でした。

最近イギリスで行われNew England…誌に論文が掲載された、
RECOVERYという大規模臨床試験があります。
この研究はそのギャップを埋めようとしたもので、
新型コロナウイルス感染症と診断されて入院した患者さんを、
1対2の比率でクジ引きで2つの群に分けると、
4321名は通常の治療を行ない、
2104名はデキサメサゾンというステロイドを、
経口もしくは経静脈投与で、
1日6ミリグラムを最長10日間使用して、
登録後28日の時点での生命予後を比較検証しています。

その結果、
デキサメサゾン使用群の22.9%に当たる482名と、
通常治療群の25.7%に当たる1110名が、
登録28日の時点までに死亡していて、
デキサメサゾンの使用は28日間の死亡リスクを、
17%(95%CI:0.750.93)有意に低下していました。

これを人工呼吸器使用者のみで解析すると、
デキサメサゾン使用群は通常治療群と比較して、
28日間の死亡リスクを36%(95%CI:0.51から0.81)、
より大きく低下させていました。
一方で人工呼吸器や酸素療法を施行していない患者のみの解析では、
デキサメサゾンの使用は生命予後に有意な影響を与えていませんでした。

この大規模な検証においては、
重症の事例において、
デキサメサゾンの使用は患者の生命予後を、
短期的に改善していました。

この結果を受けて、
レムデシビルに次ぐ新型コロナウイルス治療薬として、
日本でもデキサメサゾンが承認の運びになりました。

しかし、現状はまだ1つの臨床試験の結果であるに過ぎません。

今回の論文はこのRECOVERYを含む、
これまでの主だったステロイド治療の有効性に関する、
介入試験の結果をまとめたメタ解析です。

RECOVERYでは集中治療を要するような、
重症の事例で特にその有効性が確認されているので、
今回のメタ解析ではこれまでの臨床ケースから、
そうした重症事例のみを抽出して検証しています。

使用されているステロイドは、
デキサメサゾンとコルチコステロイド、
メチルプレドニゾロンと多岐に渡っています。

その結果…

7つの介入試験に含まれる、
トータルで1703名の新型コロナウイルス重症事例を対象に、
ステロイド治療の効果を検証したところ、
登録後28日の時点での総死亡のリスクを、
ステロイド治療は34%(95%CI:0.53から0.82)、
有意に低下させていました。

これはほぼRECOVERYのサブ解析に一致した結果で、
新型コロナウイルス感染症の重症事例においての、
ステロイド治療の有効性は、
ほぼ確認されたと言って良いようです。

今後その使用薬剤や使用法の統一など、
ガイドラインの記載が整理されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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パーマネントヘアカラーの発癌リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
パーマネントヘアカラーの発がんリスク.jpg
British Medical Journal誌に2020年9月2日ウェブ掲載された、
ヘアカラーの発癌リスクについての論文です。

永久染毛剤(パーマネントヘアカラー)は、
一度染めると色が2ヶ月持続するという利便性から、
ヘアカラーや白髪染めとして、
世界中で広く使用されています。
欧米では40歳以上の女性の50から80%、
男性の10%がこうしたへカラーを使用していると、
上記文献には記載されています。

こうしたヘアカラーの職業的な使用は、
若干ながら発癌性の指摘があります。
それでは、日常的な使用においても、
発癌リスクはあるのでしょうか?

この点はまだ明確ではありません。

そこで今回の研究では、
アメリカの看護師を対象とした大規模疫学研究のデータを活用して、
117200名の女性を36年間観察し、
パーマネントヘアカラーの個人的な利用と、
その後の癌のリスクとの関連を検証しています。

その結果、
殆どの癌の発症リスクや死亡リスクと、
パーマネントヘアカラーの個人的使用との間には、
有意な関連はありませんでした。

一方で、
パーマネントヘアカラー未使用者と比較して、
使用者の基底細胞癌のリスクは、
1.05倍(95%CI:1.02 から1.08)有意に増加していました。
また、ホルモン受容体陰性乳癌、卵巣癌のリスクと、
パーマネントヘアカラーの累積使用量との間にも、
有意な相関が認められました。
地毛がダークヘアの女性のみでは、
パーマネントヘアカラーの使用とホジキンリンパ腫に関連が認められ、
基底細胞癌リスクとの関連が最も高かったのは、
ライトカラーの女性でした。

このように、
一部の癌においては、
パーマネントヘアカラーの使用は、
若干のリスクの増加に繋がっている、
という可能性が示唆されました。

ただ、リスクは小さなもので、
それも一部の癌に限定されたものなので、
この問題は今後も慎重な検討が必要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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BCGワクチンの高齢者感染予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
BCGワクチンの高齢者への予防効果.jpg
Cell誌に2020年8月31日ウェブ掲載された、
BCGワクチンの高齢者での感染予防効果についての論文です。

BCGワクチンというのは、
牛の結核菌由来の生ワクチンで、
結核の予防ワクチンとして開発されました。

そのまま他のワクチンのように接種すると、
皮膚が腫れあがったり水疱が出来るような副反応が強いので、
日本では独特の剣山のような器具を用いて、
複数の針を皮膚に押し当て、
判子を押すようにして注射する方法が開発され使用されています。
ただ、これは日本とその器具を輸入して使用している、
一部の国のみの接種法です。

日本では定期接種として、
1歳未満のお子さんの時期に接種が行われていますが、
こうした接種スケジュールも、
一部の結核の流行国以外では行われていません。

それはBCGを一旦打ってしまうと、
結核菌に対する身体の免疫が活性化されるので、
結核に実際に感染した際の診断が難しくなってしまうことと、
このワクチンの成人の結核の予防効果は、
充分に確認されていない、
という点がその主な理由です。

BCGワクチンは牛の結核菌を使用するという、
古い製法によるワクチンで副反応が強く、
その効果も現代の目で見るとそれほど高いものではないのです。
しかし、その後BCGを超える結核予防ワクチンが、
登場していないこともまた事実で、
そのためにやや消極的に使用されている、
というのが実際である訳です。

ところが…

BCGワクチンには、
結核予防以外に有効性があるのでは、
という見解が、
最近相次いで報告されるようになりました。

その幾つかは以前ブログでもご紹介しています。

複数の疫学研究において、
出生時にBCGワクチンを接種することにより、
子供の死亡リスクが減少する、
という報告が存在しています。
その後の解析によりこれは結核の予防効果のためではなく、
お子さんの時期の敗血症や呼吸器の感染症が、
トータルに減少したためと考えられています。

動物実験においても、
BCG接種がその後の死亡リスクを低下させ、
結核以外の細菌感染を予防するという結果が報告されています。

BCGはまた、
癌に対して非特異的免疫療法としても、
その効果が確認されています。
膀胱癌への補助的治療としてのBCGの効果は、
世界的に評価されている知見です。
更に疫学データにおいては、
出生時のBCGワクチンの接種が、
肺癌のリスクを低下させたという知見もあります。

それでは、
何故結核ワクチンのBCGが、
他の多くの感染症や癌に対して効果があるのでしょうか?

免疫には、
対象を選ばず相手を攻撃する自然免疫と、
相手に合わせて抗体を産生し、
次に同じ病原体の攻撃を受けた際には、
速やかに対応する獲得免疫という2種類があります。

これまでの研究により、
BCGは自然免疫の賦活による効果と、
獲得免疫の賦活による効果の、
両方があると想定されています。

最近になってBCGワクチンが注目されているのは、
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に対しても、
BCGワクチンには一定の予防効果があるのではないか、
という考え方があるからです。

今回の臨床試験は、
ギリシャの総合病院で行われたもので、
65歳以上で病院に入院した患者を退院時に登録し、
本人にも実施者にも分からないように、
2つの群に分けると、
一方はBCGワクチンを1回接種し、
もう一方は偽のワクチンを同じように接種して、
退院後12ヶ月までの間に、
発熱や咳、肺炎などの感染症の所見を、
どのくらい発症したかどうかを比較検証しています。
トータルで198名の患者が登録されています。
BCGワクチンは0.1mLという少量を、
ツベルクリンのような皮内注射で接種しています。
これは副反応のリスクを減らすためと思われます。

その結果、
BCGワクチンは退院後初回の感染症発症までの期間を、
偽ワクチンと比較して有意に延長させていました。
(中間値で16週対11週)

12ヶ月の間の新規感染症の発症リスクは、
偽ワクチンと比較してBCG接種群では、
45%有意に低下していました。

感染症の中でウイルス由来と思われる呼吸器感染症が、
最もBCGワクチンによる予防効果が高く、
その発症リスクを79%(95%CI: 0.06から0.72)有意に抑制していました。

この場合のウイルス性呼吸器感染症というのは、
38度以上の発熱以外に、
咽頭炎や咳、肝脾腫などの所見のうち2つ以上を満たすもの、
と規定されているもので、
敢くまで症状のみの診断である点には注意が必要です。
この中にはCovid-19が含まれている可能性がありますが、
その比率までは分かりません。

有害事象については、
BCGワクチンと偽ワクチンとの間で、
有意な違いは認められませんでした。

このように、
今回の例数は十分とは言えませんが、
厳密な方法による臨床試験において、
高齢者へのBCGワクチンの接種は、
その後12ヶ月の感染症の発症リスクを、
かなり明確に低下させていました。

同様の臨床試験が、
複数進行していると以前発表がありましたから、
今後データが積み重なってゆくと、
この知見の真偽はより明確になると思います。

将来的には高齢者へのBCGワクチンの再接種が、
議論になるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「インターステラー」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
1日レセプト作業の予定です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
インターステラー.jpg
クリストファー・ノーラン祭りとして、
ノーラン監督の旧作が連続してアイマックスで上映されています。
実は「ダークナイト」も「インセプション」も、
「インターステラー」も映画館では観ていなかったので、
今回の連続上映はとても堪能しました。

それで今回はこの「インターステラー」ですが、
まあ封切りで御覧になった方には、
「何を今更…」と思われるかと思いますが、
この映画は凄いですね。

何となく傾向はお分かりの方もいるかと思いますが、
僕はこれ大好きですね。
本当に大好きで、一目ぼれして抱き締めて、
そのまま地方の温泉宿に逐電して、
今の生活を全て捨てても悔いがない、
というくらい好きです。

何を言っているか良く分からないでしょ。

そのくらい好きです。

もう観ている途中から興奮してドキドキしていて、
途中からこれでもか、というくらい盛り上がりが来るでしょ。
ええっ! ここまでやってくれるの?
まだ先があるの?
という感じでグイグイ引き付けられて、
後半は泣いて泣いてグズグズになって、
マスクがさあ、ベチョベチョになって困りました。

最高です!

終わったらもう駆け出して、
「大変だよ。みんな凄い映画があるんだよ。
それをアイマックスでやっているんだよ。
こんな機会はもう滅多にないよ。観ないと人生後悔するよ!」
と大声で叫びながら駆け出したいくらい。
(もちろんやってはいません)

そんなこんなで、
未見の方には是非観て頂きたい傑作なのですが、
まあこれ「愛は地球を救う!」という映画なんですね。

煎じ詰めればそういうことなのです。

なのでね、
「馬鹿を言うな。何を甘いことを言っているのだ、虫唾が走るわ!」
というような人がいるでしょ。
そういう人には向きません。
観るときっとむかつくと思います。

実は僕も大学くらいの時はそうでした。
「愛」なんて言われるとむかつきましたし、
SFなのに最後は「愛の力」とかと言われると、
「ラスボスが結局それかい!」と思って頭に来ました。
でもね、今はもうちょっと違うんですよね。
大袈裟に言えば、「愛」とはどういうものか、
多少は知っているし、
人間というのは、
所詮はそのくらいしか頼るものがない、
ということも何となく分かっているから。

そうなってみるとね、
この映画の深さは身に沁みます。

マット・デイモン演じる天才科学者がね、
「父親が死ぬとき、最後に見るのは子供の顔だ」と言うでしょ。
深いし残酷だし凄い台詞ですよね。
あのシチュエーションでそれを言わせるというのがね。
これがオリジナルの台本だと言うのですから、
これはもう奇跡的だと思うのです。
凄いですよ。

この映画はね、
「2001年宇宙の旅」のオマージュなんですね。
それとゼメキスの「コンタクト」を足して割ったような感じ、
惑星巡りは「スターウォーズ」も入れていますね。
「2001年宇宙の旅」の代表的な場面、
スターゲートとか、宇宙船のドッキング、
無音の宇宙、意志を持つ人工知能、
宇宙空間における人間の孤独、次元を超えた人間の進化、
宇宙からのメッセージ、
こうした要素は全てこの映画の中に再現されているでしょ。
その上でそれを乗り越えようとしているんですね。
全てのSF映画の頂点に立とうとする凄味、
それがこの映画の中にはありますね。

「インセプション」はノーラン監督としては、
あまり出来の良い映画ではなかったと思うのですが、
あの映画の経験は、
地球と宇宙の場面をフラッシュバックするところとか、
五次元世界の表現、スペースコロニーのビジュアルなどに、
活きていますね。
あの映画があったから、
「インターステラー」はよりグレードアップした映画になった、
という気もします。

「パラサイト」のモールス信号は、
多分この映画からの発想ですよね。
そういった意味で、
その後の多くの映画にも影響を与えている傑作だと思います。

まあ、これは壮大なほら話なのですが、
それをこの完成度でこの密度で成立させている、
というところがこの映画の奇跡的なところですよね。
最終的には大甘のファンタジーを、
力技で成立させているところが凄いのです。
ブラックホールと重力方程式まで持ち出して、
愛の証明をすることもないのだけれど、
それを無理矢理しているところが感動的なのです。

ディテールも凝っているでしょ。
オープニングのトウモロコシ畑に砂嵐というのは、
如何にもアメリカ的な終末像でスケール感がありますし、
科学者の「悪」をリアルに描いているところも、
大人の映画、という感じで渋いですよね。
悪人は登場しないけれど「悪」はあるのですね。
重力方程式が解けない方程式であることを、
天才科学者が今際の際に告白して、
それが23年の時差で宇宙船にメッセージとして届くとか、
これぞSF、という感じでいいですよね。
惚れ惚れします。

そんな訳でもう偏愛している一目ぼれの映画なので、
幾らでも書くことはあるのですが、
ネタバレも失礼なのでこれくらいにすることにします。

これはもう生涯の1本と言っていい個人的な傑作です。

アイマックスの画像も良いですし、
この機会に是非、
感染防御の上映画館にお出かけください。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「mid90s ミッドナインティーズ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
mid90s.jpg
2018年製作のアメリカ青春映画で、
俳優出身の新人監督の第1作ですが、
青春のきらめきと青さと切なさがギュッと詰まった、
こちらの方が「青くて痛くて脆い」という感じの、
愛すべき映画です。

これね、相当いいですよ。

85分という上映時間は今ではとても短い部類ですが、
内容は本当に密度高くギュッと詰まっていて、
短くて物足りない、というような感じはありません。
主人公と一緒に、
ある時代をスッと駆け抜けるという感じ。
そのスピード感がまた素敵なのです。

90年代半ばのロスに住む13歳の少年が、
スケボーのショップに集まる不良達に魅せられ、
思春期の一時期を共に過ごすという物語。
あの頃の不安定な自我と、
大人とは別個の社会の中で、
死や転落や快楽が、
ギリギリにあるような不思議な感じを、
とても感性豊かに描いています。

本当に16ミリのフィルムで撮った訳ではないように思いますが、
スタンダードサイズの画角で粗い画質は、
如何にも16ミリで刻んだ思い出を、
そのままブローアップしたように見えます。
オープニングの数シーンを観るだけで、
その抜群のセンスに痺れますし、
少しでも同じような経験のある方は、
すぐにその世界に没入出来ると思います。

それでいて全体はとても緻密に組み上げられていて、
ビギナーズラックもあるのかも知れませんが、
監督の演出力もなかなかのものだと思います。

一例を挙げると、
ラスト前で病院の待合室で寝ている少年たちを、
主人公の母親が見るというカットがあるでしょ。
このカットの前にかなりの省略があって、
それを描くために30分くらいを費やしても良いのですが、
この台詞のない一瞬だけで、
何が起こったのかが全て分かりますよね。
何故こうしたことが可能なのかと言えば、
それは観客が頭の中で、
望んでいた結末だからですよね。
あの一瞬がスクリーンに流れる時に、
観客の頭の中では、
そこに至るまでの経緯が、
想像され走馬灯のように流れているのです。
それを計算して説明をせずに、
無言の一瞬で終わらせるのが、
とても上手いと感心しました。

ともかく色々な要素が詰まっているのですよね。
何処に共感するかは観客個人の経験にもよるのだと思います。
個人的には、
スケボーで向こう見ずに穴を飛び越えるところで、
グループの人間関係が変わるでしょ。
ああいうところの生々しさがささりました。

画角も小さくで画面も粗いので、
こんな映画ならテレビで観ても、
というように思う方もいると思うのですが、
わざわざ大画面に拡大して見るのがね、
また没入出来ていいんですよね。
青春のほろ苦い記憶が、
急に目の前にガッと広がるような感じがするでしょ。
ああした感じは映画館ならではと思います。

ともかくA24がまたやった!
という感じの青春映画の快作で、
抜群に瑞々しくで切なくて愛おしい映画です。
是非お時間のある方は、
感染対策には気を配りつつ、
映画館で御覧下さい。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染症による小児入院事例の特徴(イギリスの臨床データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの小児の特徴.jpg
British Medical Journalに、
2020年8月ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の小児の入院事例を解析した論文です。

新型コロナウイルスの報告事例における小児の比率は、
1から2%程度と報告されています。
インフルエンザなど、
他の多くの呼吸器感染を起こすウイルスと比較して、
これは際立った特徴の1つです。
更には小児の感染事例は大人より軽症や無症状の比率が高く、
中国からの流行初期の報告では、
小児の重症化率は0.6%という低率でした。

その後小児でも重症化の事例が報告されるようになりました。

特徴的なのは、
全身の血管の炎症や心筋の炎症などを伴うケースで、
当初川崎病様として報告され、
心原性ショックを来すような事例が、
最初イギリスで、
それからイタリア、フランスでも報告されました。

通常の新型コロナウイルス感染症では、
重症の事例は肺炎からのARDSによる呼吸状態の悪化で、
人工呼吸器や人工肺などによる、
呼吸管理が治療の中心となります。
その一方で小児の川崎病様の重症事例では、
心不全や心原性ショックを発症するので、
心不全やショックの治療が、
むしろ主体となる点が大きく異なっているのです。

この病態を現状WHOは、
COVID-19に関連する小児多系統炎症症候群
(multisystem inflammatory syndrome in children and adolescents temporarily related to covid-19)
という長い病名を付けています。
略してMIS-Cです。
年齢は基本的に19歳未満としています。

診断は3日以上持続する発熱と血液の炎症反応の上昇、
川崎病様の皮疹や結膜充血、
心原性ショックや心不全の所見、
急性の消化器症状や凝固系の異常などを、
組み合わせて行うことになっています。

今回のデータはイギリスやウェールズ、スコットランドの、
138の病院に入院した19歳未満の新型コロナウイルス感染症の患者、
トータル651名を解析したものです。

年齢の中央値は4.6歳で、
35%は1歳未満の乳幼児でした。
56%が男児で人種や57%が白人、
10%が黒人、
42%が神経疾患や血液疾患、喘息などの持病を持っていました。
集中治療を要するような重症の事例は18%でした。

診断可能であった患者の11%に、
MIS-Cが発症していました。
MIS-Cと診断された患者は、
年齢の中間値は10.7歳と高く、
白人は少なく(64%)、
集中治療を要する重症の事例は73%で、
そうでない小児患者の5倍高くなっていました。

このように、
トータルでは小児の感染率は低く、
重症の事例も少ないのですが、
全身の血管の炎症や心不全を来す、
MIS-Cを発症した事例は高率に重症化していて、
小児の新型コロナウイルス感染症においては、
その鑑別が非常に重要であると考えられました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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カナグリフロジンの下肢切断リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
カナグリフロジンの下肢切断リスク.jpg
British Medical Journal誌に、
2020年8月25日ウェブ掲載された、
糖尿病の新薬とその有害事象についての論文です。

2型糖尿病の治療において、
最近注目をされている新薬が、
SGLT2阻害剤です。

この薬は腎臓の近位尿細管において、
ブドウ糖の再吸収を阻害することで、
ブドウ糖の尿への排泄を促進する作用を持つ薬です。

この薬を使用すると、
通常より多くのブドウ糖を含む尿が出て、
それと共にブドウ糖が体外に排出されます。

これまでの糖尿病の治療薬は、
その多くがインスリンの分泌を刺激したり
ブドウ糖の吸収を抑えるような薬でしたから、
それとは全く異なるメカニズムを持っているのです。

確かに余分な糖が尿から排泄されれば、
血糖値は下がると思いますが、
それは2型糖尿病の原因とは別物で、
脱水や尿路感染の原因にもなりますから、
あまり本質的な治療法ではないようにも思います。

しかし、2015年のNew England…誌に掲載された、
エンパグリフロジン(商品名ジャディアンス)というSGLT2阻害剤の、
臨床試験結果をまとめた論文では、
偽薬と比較して総死亡のリスクが32%、
心血管疾患による死亡のリスクが38%、
それぞれ有意に低下していました。

この発表は大きな注目を集めました。
これまでの糖尿病の治療薬で、
単独で総死亡のリスクを低下させたり、
心血管疾患による死亡のリスクを低下させるような薬は、
殆ど存在していなかったからです。

続いて2017年のNew England…誌には、
今度はカナグリフロジン(商品名カナグル)という、
SGLT2阻害剤のCANVASという臨床試験の結果が報告されています。
この臨床試験は、
心血管疾患のリスクが高く比較的高齢の患者さんを対象としていて、
エンパグリフロジンと同じように、
心血管疾患による死亡などのリスクを低下させていましたが、
その一方で糖尿病性壊疽による下肢切断のリスクを、
ほぼ2倍に増加させていました。
(年間患者1000人当たり6.3人対3.4人)

このリスク増加をどのように考えれば良いのでしょうか?

今回の検証では、
アメリカの健康保険の医療データを活用して、
SGLT2阻害剤と共に現在注目されている糖尿病治療薬である、
GLP1-アナログという注射薬との比較で、
糖尿病性壊疽による下肢切断のリスクを、
他の条件をマッチングさせて検証しています。

患者は、
グループ1;65歳未満で心血管疾患なし、
グループ2;65歳未満で心血管疾患あり、
グループ3;65歳以上で心血管疾患なし、
グループ4;65歳以上で心血管疾患あり、
の4つのグループに分けて解析しています。

新規にカナグリフロジン、
もしくはGLP-1アナログを開始した、
トータルで310840名の患者が対象となっています。

その結果、
GLP-1アナログと比較した時の、
カナグリフロジン使用時の下肢切断リスクは、
グループ1から3では有意な増加はなかった一方で、
65歳以上で心血管疾患ありのグループ4では、
1.73倍(95%CI: 1.30から2.29)有意に高く、
その差は6か月の治療で、
556名に1名の下肢切断がそのために発症する、
というレベルと推算されました。

このように、
原因は現時点で明確ではありませんが、
リスクの高い患者においては、
カナグリフロジンの使用は下肢切断リスクを、
若干ながら増加させる可能性が示唆されました。
現状、65歳以上で心血管疾患を持っている糖尿病の患者さんでは、
その使用はより慎重に考えた方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

実年齢56歳、血管・骨年齢30代の名医が実践!  コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?

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新型コロナウイルス感染症の合唱団でのクラスター(アメリカの事例) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後はレセプト作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの合唱団での感染事例.jpg
Morbidity and Mortality Weekly Report誌に、
2020年5月15日に掲載された、
アメリカでの合唱団の練習において発生した、
新型コロナウイルス感染症のクラスターを解析した論文です。

昨日ご紹介したソーシャルディスタンシングの、
解説記事に引用されていたものなので、
改めて読んでみました。

このアメリカの合唱団には122名の団員がいて、
毎週火曜日の夜に2.5時間の合唱練習を行なっていました。

2020年3月3日の練習の時には、
体調不良者は1人もいませんでした。

この日に出席した団員の1人が、
3月7日から感冒症状を示しました。
(のちに検査で新型コロナウイルス感染症と診断)

そして、この団員は3月10日の練習にも参加しました。

すると、
3月11日に3名、12日に7名の団員が、
発熱などの症状を示しました。

その後も次々と団員の体調不良は増え続け、
結果として3日の練習に参加した78名のうち、
65.4%に当たる51名が感染し、
10日の練習に参加した61名(1名は有症状)のうち、
52名が感染症状を示して、
32名は検査により新型コロナウイルス感染症と確定され、
20名も同様の症状でほぼ間違いないと診断されました。
これは1名の有症状者から二次感染が起こったとすると、
実に86.7%に感染したということになります。

感染者のうち、3名が入院し、
そのうちの2名が死亡しています。

日本においても、
合唱団の練習でのクラスターがあり、
カラオケスナックやカラオケ喫茶でのクラスターも、
同様の事例と思われますが、
通常の会話と比較して、
大きな声で集団で歌うという状況は、
非常に飛沫感染が成立しやすく、
特に新型コロナウイルス感染症(Covid-19)においては、
その影響は非常に強く現れるようです。

上記文献のまとめとしては、
感染流行時期においては、
集団で1つの場所に集まったり、
至近距離での会話を避け、
極力2メートル(文献では6フィート)程度以上の距離を確保し、
それが困難である場合にはマスクなどを装着することが推奨される、
という今となっては常識的な予防法が解説されています。

またこの事例の教訓としては、
1人の有症状者を逃さないことが、
感染の拡大阻止に何より重要であるということで、
「少しでも体調不良があれば、他人との接触を避ける」
というシンプルな対策が、
現状は最も効率的で有効な感染拡大予防策であり、
検査は二次的な診断のための確認作業に過ぎない、
ということは再度強調しておきたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ソーシャルディスタンシングの有効性と限界 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ソーシャルディスタンシングの解説.jpg
British Medical Journal誌に,
2020年8月25日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症予防のための、
ソーシャルディスタンシングの有効性を検証した解説記事です。

ソーシャルディスタンシングというのは、
人間同士が接触する時に、
必要な距離を取り、接触する場所を選び、
必要最小限な時間に接触を留めることで、
ウイルス感染のリスクを最小限に抑制しよう、
という対策のことです。

上記解説記事では、
Physical distancingという用語が用いられていて、
それ以外にSocial distancingという言い方も、
アメリカなどで使用されています。

ソーシャルディスタンシングの実際については、
国内外において、
1もしくは2メートルの距離を取ることが、
基準として提唱されています。

ただ、その根拠となるデータは、
主に1940年代の古い単純化された理論と実験が元になっています。
その信頼性は実際にはそれほど高いものではありません。

ウイルスを含む飛沫粒子は、
通常の会話と大声を出したり歌ったりする時では、
その飛び方が大きく異なりますし、
屋外であれば風の方向は湿度、
室内であれば換気の状態によっても、
大きく異なります。
接触する時間についても、
今濃厚接触は15分以上とされていますが、
これも5分から15分と様々な基準があり、
勿論長時間になるほど感染リスクが高くなるのは、
これはもう当たり前ですが、
どのくらいの短時間であれば良いのか、
というような点については、
確たるデータはないのが実際なのです。

それではこちらをご覧下さい。
ソーシャルディスタンシングの図1.jpg
これはソーシャルディスタンシングの効果に、
影響を与える因子を一覧にして、
そのリスクを検証したものです。

元図は左右に分かれていて、
右が密な空間の場合で、
左は人数の少ない空間の場合です。
これはその図の左側のみを示しています。
図の大きさの関係で半分のみ表示しています。

緑はリスクの低い状態で、
黄色はややリスクのある状態、
赤は高リスクであることを示しています。

人間同士の距離が取れる環境であっても、
換気の悪い室内で、
大声で歌ったりすれば、
短時間でも高リスクになっています。
これがカラオケスナックなどで、
感染が拡大しやすい理屈ですね。

本当はもっとリスクを数値化して、
示せるようになればより説得力が増すのですが、
現状の知見の範囲では、
このように3種類に分けるくらいが限界であるようです。

現状日本の方針では、
小さな飲食店でも、
客席の間隔は極力2メートル以上開けるように努力する、
というような趣旨になっていますが、
それを継続することは、
多くの店にとって存続を危うくすることではないかと思います。

距離を近づけざるを得ないとすれば、
他のリスク因子を調節することで、
リスクの低下を図ることが重要で、
今後新しい知見を元にして、
より明確な感染抑止基準が、
策定されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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