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新型コロナウイルス感染症による小児入院事例の特徴(イギリスの臨床データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの小児の特徴.jpg
British Medical Journalに、
2020年8月ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の小児の入院事例を解析した論文です。

新型コロナウイルスの報告事例における小児の比率は、
1から2%程度と報告されています。
インフルエンザなど、
他の多くの呼吸器感染を起こすウイルスと比較して、
これは際立った特徴の1つです。
更には小児の感染事例は大人より軽症や無症状の比率が高く、
中国からの流行初期の報告では、
小児の重症化率は0.6%という低率でした。

その後小児でも重症化の事例が報告されるようになりました。

特徴的なのは、
全身の血管の炎症や心筋の炎症などを伴うケースで、
当初川崎病様として報告され、
心原性ショックを来すような事例が、
最初イギリスで、
それからイタリア、フランスでも報告されました。

通常の新型コロナウイルス感染症では、
重症の事例は肺炎からのARDSによる呼吸状態の悪化で、
人工呼吸器や人工肺などによる、
呼吸管理が治療の中心となります。
その一方で小児の川崎病様の重症事例では、
心不全や心原性ショックを発症するので、
心不全やショックの治療が、
むしろ主体となる点が大きく異なっているのです。

この病態を現状WHOは、
COVID-19に関連する小児多系統炎症症候群
(multisystem inflammatory syndrome in children and adolescents temporarily related to covid-19)
という長い病名を付けています。
略してMIS-Cです。
年齢は基本的に19歳未満としています。

診断は3日以上持続する発熱と血液の炎症反応の上昇、
川崎病様の皮疹や結膜充血、
心原性ショックや心不全の所見、
急性の消化器症状や凝固系の異常などを、
組み合わせて行うことになっています。

今回のデータはイギリスやウェールズ、スコットランドの、
138の病院に入院した19歳未満の新型コロナウイルス感染症の患者、
トータル651名を解析したものです。

年齢の中央値は4.6歳で、
35%は1歳未満の乳幼児でした。
56%が男児で人種や57%が白人、
10%が黒人、
42%が神経疾患や血液疾患、喘息などの持病を持っていました。
集中治療を要するような重症の事例は18%でした。

診断可能であった患者の11%に、
MIS-Cが発症していました。
MIS-Cと診断された患者は、
年齢の中間値は10.7歳と高く、
白人は少なく(64%)、
集中治療を要する重症の事例は73%で、
そうでない小児患者の5倍高くなっていました。

このように、
トータルでは小児の感染率は低く、
重症の事例も少ないのですが、
全身の血管の炎症や心不全を来す、
MIS-Cを発症した事例は高率に重症化していて、
小児の新型コロナウイルス感染症においては、
その鑑別が非常に重要であると考えられました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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