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「テネット」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
テネット.jpg
クリストファー・ノーラン監督の待望の新作「テネット」が、
9月18日からロードショー公開されています。
その初日にアイマックスで観て来ました。

うーん。

これは「インセプション」と似たスタイルの映画で、
出来も同じくらいかな、という感じです。
確かに一回観ただけでは、
後半良く分からない部分があるのですが、
もう1回観てそれを確認したいかと言うと、
そこまでしなくてもいいかな、
というようには思ってしまいました。

面白いし退屈はしません。
カーチェイスは斬新で迫力がありますし、
時間の逆行の不気味さが明らかになる辺りは、
これまでにない物を見せられた、
というような興奮を感じました。
ただ、あまりに無理筋だな、と思えるような設定や、
ロマンスの部分の魅力のなさ、
「インセプション」と同じく、
クライマックスのゴタゴタする感じがあって、
後半はやや「どうでもいいかな」
というようにも感じてしまいました。
ロシアが悪者というのも、
色々都合があるのでしょうし、
新感覚の007を目指したのかな、
とも思いましたが、
何か古めかしいな、と感じました。

ノーラン監督ファン向けの力作で、
一般の映画ファンの方にもれなく訴えかける、
というような映画ではありません。
「インターステラー」みたいな感動とは無縁です。

以下少しネタバレがありますので、
鑑賞予定の方は、
必ず鑑賞後にお読み下さい。

これはね、007のようなスパイ映画の世界に、
時間の逆行というSF的設定を組み込んだ映画で、
雰囲気はかなり最近の007に寄せているんですね。
また、ノーランの作品は以前からディックの感じがありましたが、
これももろ「逆さ回りの世界」ですね。
ただ、未来から来た銃弾に、
時間の逆行性が残っていたり、
時間を逆行することを、
エスカレーターを逆向きに歩くような、
川を逆向きに上るような感覚で描いているのが、
なかなか新鮮で面白いのです。
物語自体も映像の流れに、
後の逆行の情報も同時に含まれているので、
一度観ただけでは良く分からない、
というリピーターを増やすような仕様になっています。
この辺はちょっと悪賢いですね。

ただ、正直物語自体の躍動感や、
キャラの魅力と情感というような部分で言うと、
かなり不満が残ります。

途中でヒロインが瀕死の状態になり、
それを助けるために主人公が過去に危険なダイブをしますよね。
定番の趣向ですし、
「インセプション」でも同じような筋立てがあったと思いますが、
主人公とヒロインとの関係性が不明で、
そうした行為に及ぶ必然性が、
あまり体感されませんよね。
これだと、ヒロインが撃たれるという設定自体が、
何か無駄であるように感じました。
これじゃ駄目なのじゃないかしら。

それから、
9つに分割されたアルゴリズム
(と言っても実際は機械の金属部品のようなもの)を、
全部揃えると世界が滅ぶというのですが、
それがもう分かった時には8つが悪玉の手にあるのですね。
それじゃ、9つもある意味がないじゃん。
1つだけで全然良かったんじゃないの?
というようにも思いました。

また、第三次世界大戦より深刻な世界の消滅、
ということの実態が、
あまりピンと来ないですよね。
悪玉が死ぬと世界が終わる、とかと言いながら、
時空を超えて奥さんと痴話げんかしている感じでしょ。
普通幻想シーンで破滅の実態を説明したり、
アベンジャーズでは一度滅ぼしておいて、
それを見せてから、
時間を戻って今度は救ったりするでしょ。
あれは要するに観客に一度は破滅のスペクタクルを見せておこう、
というサービスであるのですよね。
サービスであるとともに、
「なるほど主役が頑張らないとこうなるのね」
ということを観客に体感させる意味があるのです。
ノーラン監督はそうしたことを一切しないので、
イメージが沸かないので詰まらないのですね。
世界は救われたんですよ、良かったね、と言われても、
どう滅ぶ筈だったのかが観念的なので、
カタルシスがまるでないのです。
これじゃ、駄目なのじゃないかな、
と感じました。

そんな訳で、
概ね「多分こんな感じかな」というような予想を、
あまり超えることのなかった映画で、
ノーラン監督としては通常運転、
と言う感じの作品でした。
少し残念です。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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