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「mid90s ミッドナインティーズ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
mid90s.jpg
2018年製作のアメリカ青春映画で、
俳優出身の新人監督の第1作ですが、
青春のきらめきと青さと切なさがギュッと詰まった、
こちらの方が「青くて痛くて脆い」という感じの、
愛すべき映画です。

これね、相当いいですよ。

85分という上映時間は今ではとても短い部類ですが、
内容は本当に密度高くギュッと詰まっていて、
短くて物足りない、というような感じはありません。
主人公と一緒に、
ある時代をスッと駆け抜けるという感じ。
そのスピード感がまた素敵なのです。

90年代半ばのロスに住む13歳の少年が、
スケボーのショップに集まる不良達に魅せられ、
思春期の一時期を共に過ごすという物語。
あの頃の不安定な自我と、
大人とは別個の社会の中で、
死や転落や快楽が、
ギリギリにあるような不思議な感じを、
とても感性豊かに描いています。

本当に16ミリのフィルムで撮った訳ではないように思いますが、
スタンダードサイズの画角で粗い画質は、
如何にも16ミリで刻んだ思い出を、
そのままブローアップしたように見えます。
オープニングの数シーンを観るだけで、
その抜群のセンスに痺れますし、
少しでも同じような経験のある方は、
すぐにその世界に没入出来ると思います。

それでいて全体はとても緻密に組み上げられていて、
ビギナーズラックもあるのかも知れませんが、
監督の演出力もなかなかのものだと思います。

一例を挙げると、
ラスト前で病院の待合室で寝ている少年たちを、
主人公の母親が見るというカットがあるでしょ。
このカットの前にかなりの省略があって、
それを描くために30分くらいを費やしても良いのですが、
この台詞のない一瞬だけで、
何が起こったのかが全て分かりますよね。
何故こうしたことが可能なのかと言えば、
それは観客が頭の中で、
望んでいた結末だからですよね。
あの一瞬がスクリーンに流れる時に、
観客の頭の中では、
そこに至るまでの経緯が、
想像され走馬灯のように流れているのです。
それを計算して説明をせずに、
無言の一瞬で終わらせるのが、
とても上手いと感心しました。

ともかく色々な要素が詰まっているのですよね。
何処に共感するかは観客個人の経験にもよるのだと思います。
個人的には、
スケボーで向こう見ずに穴を飛び越えるところで、
グループの人間関係が変わるでしょ。
ああいうところの生々しさがささりました。

画角も小さくで画面も粗いので、
こんな映画ならテレビで観ても、
というように思う方もいると思うのですが、
わざわざ大画面に拡大して見るのがね、
また没入出来ていいんですよね。
青春のほろ苦い記憶が、
急に目の前にガッと広がるような感じがするでしょ。
ああした感じは映画館ならではと思います。

ともかくA24がまたやった!
という感じの青春映画の快作で、
抜群に瑞々しくで切なくて愛おしい映画です。
是非お時間のある方は、
感染対策には気を配りつつ、
映画館で御覧下さい。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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