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新型コロナウイルス感染症の人種差とセリンプロテアーゼ [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
TMPRS2と人種差.jpg
JAMA誌に2020年9月10日ウェブ掲載されたレターですが、
新型コロナウイルス感染症の人種差の原因を検証した内容です。

アメリカは今では新型コロナウイルス感染症の、
最大の感染国ですが、
他の人種と比較して黒人種では、
2から3倍感染率も死亡率も高いという特徴があります。
(人種をどう記載するのが差別的ではないのか、
よく分かりませんが、
本文ではBlack Individualsと書かれているので、
一応黒人種と記載しました)

この人種差の原因は現時点では不明ですが、
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、
人間の身体の細胞にある、
ACE2という受容体に結合することにより感染します。
その後にもう1つのステップがあり、
コロナウイルスに特徴的な表面の突起(スパイク)が、
感染細胞にあるセリンプロテアーゼ(TMPRSS2)という酵素により、
変化(プライミング)を受け、
それにより細胞内に侵入することが出来ると考えられています。

それでは、
このステップの何処かに人種差があり、
それが黒人種における感染リスクの増加に、
繋がっているという可能性はないでしょうか?

今回の研究では鼻腔におけるセリンプロテアーゼ活性に注目し、
ニューヨークで喘息の研究のために採取された、
305名の鼻粘膜の細胞から、
その部位におけるセリンプロテアーゼの遺伝子発現量を、
人種により比較検証しています。

人種の内訳は、
アジア系が8.4%、黒人系が15.4%、
ラテン系が26.6%、
複数の人種の遺伝子が合わさっている人が9.5%、
白人種が40.3%となっています。

解析の結果他の人種と比較して、
黒人種では鼻腔のセリンプロテアーゼ(TMPRSS2)の遺伝子発現が、
有意に増加しているという結果が得られました。

これをもって黒人系の感染と重症化リスクの高さと、
セリンプロテアーゼの発現量との間に関連がある、
とまでは言い切れませんが、
興味深いデータであることは間違いがなく、
セリンプロテアーゼ阻害剤の感染予防としての可能性の検証を含め、
今後の検証に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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