SSブログ

新型コロナウイルス感染症の合唱団でのクラスター(アメリカの事例) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後はレセプト作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの合唱団での感染事例.jpg
Morbidity and Mortality Weekly Report誌に、
2020年5月15日に掲載された、
アメリカでの合唱団の練習において発生した、
新型コロナウイルス感染症のクラスターを解析した論文です。

昨日ご紹介したソーシャルディスタンシングの、
解説記事に引用されていたものなので、
改めて読んでみました。

このアメリカの合唱団には122名の団員がいて、
毎週火曜日の夜に2.5時間の合唱練習を行なっていました。

2020年3月3日の練習の時には、
体調不良者は1人もいませんでした。

この日に出席した団員の1人が、
3月7日から感冒症状を示しました。
(のちに検査で新型コロナウイルス感染症と診断)

そして、この団員は3月10日の練習にも参加しました。

すると、
3月11日に3名、12日に7名の団員が、
発熱などの症状を示しました。

その後も次々と団員の体調不良は増え続け、
結果として3日の練習に参加した78名のうち、
65.4%に当たる51名が感染し、
10日の練習に参加した61名(1名は有症状)のうち、
52名が感染症状を示して、
32名は検査により新型コロナウイルス感染症と確定され、
20名も同様の症状でほぼ間違いないと診断されました。
これは1名の有症状者から二次感染が起こったとすると、
実に86.7%に感染したということになります。

感染者のうち、3名が入院し、
そのうちの2名が死亡しています。

日本においても、
合唱団の練習でのクラスターがあり、
カラオケスナックやカラオケ喫茶でのクラスターも、
同様の事例と思われますが、
通常の会話と比較して、
大きな声で集団で歌うという状況は、
非常に飛沫感染が成立しやすく、
特に新型コロナウイルス感染症(Covid-19)においては、
その影響は非常に強く現れるようです。

上記文献のまとめとしては、
感染流行時期においては、
集団で1つの場所に集まったり、
至近距離での会話を避け、
極力2メートル(文献では6フィート)程度以上の距離を確保し、
それが困難である場合にはマスクなどを装着することが推奨される、
という今となっては常識的な予防法が解説されています。

またこの事例の教訓としては、
1人の有症状者を逃さないことが、
感染の拡大阻止に何より重要であるということで、
「少しでも体調不良があれば、他人との接触を避ける」
というシンプルな対策が、
現状は最も効率的で有効な感染拡大予防策であり、
検査は二次的な診断のための確認作業に過ぎない、
ということは再度強調しておきたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(3)  コメント(0)