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ソーシャルディスタンシングの有効性と限界 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ソーシャルディスタンシングの解説.jpg
British Medical Journal誌に,
2020年8月25日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症予防のための、
ソーシャルディスタンシングの有効性を検証した解説記事です。

ソーシャルディスタンシングというのは、
人間同士が接触する時に、
必要な距離を取り、接触する場所を選び、
必要最小限な時間に接触を留めることで、
ウイルス感染のリスクを最小限に抑制しよう、
という対策のことです。

上記解説記事では、
Physical distancingという用語が用いられていて、
それ以外にSocial distancingという言い方も、
アメリカなどで使用されています。

ソーシャルディスタンシングの実際については、
国内外において、
1もしくは2メートルの距離を取ることが、
基準として提唱されています。

ただ、その根拠となるデータは、
主に1940年代の古い単純化された理論と実験が元になっています。
その信頼性は実際にはそれほど高いものではありません。

ウイルスを含む飛沫粒子は、
通常の会話と大声を出したり歌ったりする時では、
その飛び方が大きく異なりますし、
屋外であれば風の方向は湿度、
室内であれば換気の状態によっても、
大きく異なります。
接触する時間についても、
今濃厚接触は15分以上とされていますが、
これも5分から15分と様々な基準があり、
勿論長時間になるほど感染リスクが高くなるのは、
これはもう当たり前ですが、
どのくらいの短時間であれば良いのか、
というような点については、
確たるデータはないのが実際なのです。

それではこちらをご覧下さい。
ソーシャルディスタンシングの図1.jpg
これはソーシャルディスタンシングの効果に、
影響を与える因子を一覧にして、
そのリスクを検証したものです。

元図は左右に分かれていて、
右が密な空間の場合で、
左は人数の少ない空間の場合です。
これはその図の左側のみを示しています。
図の大きさの関係で半分のみ表示しています。

緑はリスクの低い状態で、
黄色はややリスクのある状態、
赤は高リスクであることを示しています。

人間同士の距離が取れる環境であっても、
換気の悪い室内で、
大声で歌ったりすれば、
短時間でも高リスクになっています。
これがカラオケスナックなどで、
感染が拡大しやすい理屈ですね。

本当はもっとリスクを数値化して、
示せるようになればより説得力が増すのですが、
現状の知見の範囲では、
このように3種類に分けるくらいが限界であるようです。

現状日本の方針では、
小さな飲食店でも、
客席の間隔は極力2メートル以上開けるように努力する、
というような趣旨になっていますが、
それを継続することは、
多くの店にとって存続を危うくすることではないかと思います。

距離を近づけざるを得ないとすれば、
他のリスク因子を調節することで、
リスクの低下を図ることが重要で、
今後新しい知見を元にして、
より明確な感染抑止基準が、
策定されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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