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SGLT2阻害剤の実臨床での有用性(カナダのプライマリケアデータ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は終日事務作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
SGLT2阻害剤と心血管疾患リスク.jpg
British Medical Journal誌に、
2020年9月23日ウェブ掲載された、
最近評価の高い糖尿病の治療薬SGLT2阻害剤の、
心血管疾患予防効果を、
実臨床のレベルで検証した論文です。

SGLT2阻害剤は、
尿に出るブドウ糖を増加させることによって、
血糖値を下げるという、
新しいメカニズムの薬です。

それが近年注目されているのは、
臨床試験において心血管疾患のリスクの低下や、
死亡リスクの低下が報告されているからです。

最初にそうしたデータが発表されたのは、
エンパグリフロジンというSGLT2阻害剤で、
それ以降もエンパグリフロジンと比較するとやや見劣りはするものの、
カナグリフロジン、ダパグリフロジンという、
別個のSGLT2阻害剤の臨床試験において、
同種の傾向があることが報告されています。
ただ、カナグリフロジン使用群での下肢切断リスクの増加など、
個別には気になる有害事象も報告されています。

現在2型糖尿病の実臨床において、
GLP1アナログやDPP4阻害剤のインクレチン関連薬と共に、
SGLT2阻害剤は最も広く使用されている薬です。

ただ、実臨床での使用において、
臨床試験と同じような心血管疾患の予防効果が、
明確に示されている、という訳ではありません。
また、臨床試験は主に偽薬とSGLT2阻害剤が比較されていますが、
実臨床で主に問題となるのは、
インクレチン関連薬との比較です。
また、SGLT2阻害剤の効果はどの薬でも同じなのか、
それとも同様のメカニズムの薬であっても、
個々の薬剤での有効性に違いがあるのかどうか、
というような点についても明らかではありません。

今回の研究はカナダにおいて、
プライマリケアの大規模なデータベースを活用して、
209867名のSGLT2阻害剤の新規使用患者を、
同様の背景を持つ209867名のDPP4阻害剤の新規使用患者と、
マッチングさせて平均で0.9年の経過観察を行っています。

データ数は充分ですが、
比較的短期の使用効果のみを見ている、
という点には注意が必要です。

その結果、
SGLT2阻害剤の使用はDPP4阻害剤と比較して、
心血管疾患の発症リスクを、
24%(95%CI: 0.69から0.84)有意に低下させていました。

内訳では心筋梗塞のリスクを18%(95%CI:0.70から0.96)、
心血管疾患による死亡リスクを40%(95%CI: 0.54から0.67)、
心不全のリスクを57%(95%CI: 0.37から0.51)、
総死亡のリスクも40%(95%CI: 0.54から0.67)、
それぞれ有意に低下させていました。
虚血性脳卒中のリスクについては低下傾向はるものの、
有意ではありませんでした。

このSGLT2阻害剤の心血管疾患予防効果は、
エンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジンの、
3種類の薬剤間で明確は差は認められませんでした。

このように、1年未満という短期間のデータですが、
DPP4阻害剤と比較してSGLT2阻害剤には、
明確な心血管疾患予防効果と生命予後の改善効果が、
実臨床で明確に示された、
という影響は大きく、
今後の薬剤選択に大きな影響を与える可能性がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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