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新型コロナmRNAワクチンの医療従事者での予防効果(アメリカ比較解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
mRNAワクチンの医療従事者への有効性.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年9月22日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスワクチンの医療従事者への予防効果を、
実際の臨床データで解析した論文です。

新型コロナウイルスワクチンのうち、
ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社による、
2種類のmRNAワクチンの短期の有効性は、
ほぼ確立されたものと言って良いのですが、
その有効性の実臨床における比較データは、
まだそれほど多くある訳ではありません。

今回のデータはアメリカの医療従事者への接種結果を解析したものです。

遺伝子検査もしくは抗原検査で診断された1482の感染事例と、
年齢などをマッチさせた3449名のコントロールを比較して解析したところ、
ワクチンを2回接種して7日以降の有症状感染予防効果は、
ファイザー・ビオンテック社ワクチンで88.8%(95%CI:84.6から91.8)、
モデルナ社ワクチンで96.3%(95%CI:91.3から98.4)、
と算出されました。
この予防効果は年齢が50歳未満と50歳以上で違いはなく、
基礎疾患や人種による差もありませんでした。
ワクチンの有効性は2回目接種後3から8週と比較して、
9から14週では低下する傾向を示しましたが、
かなりのばらつきが認められました。

このように、
mRNAワクチン2種の有効性は、
今回の医療従事者のデータでも確認されていますが、
抗原量の多いモデルナ社ワクチンが、
ファイザー・ビオンテック社ワクチンと比較して、
やや高いという結果が得られており、
これは最近の臨床データにおいては、
ほぼ一致した傾向であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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エンパグリフロジンの心不全への有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
エンパグリフロジンの心不全予後改善効果.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年10月14日掲載された、
糖尿病治療薬の心不全への有効性についての論文です。

SGLT2阻害剤は尿へのブドウ糖の排泄を促すことにより、
血糖値を低下させる作用を持つ薬です。

この薬が注目されたのは、
心血管疾患による死亡や総死亡のリスクを、
有意に30%以上低下させるという、
画期的なデータがエンパグリフロジンというSGLT2阻害剤で、
報告されたからです。

その後この心血管疾患の生命予後改善効果の多くは、
心不全の予後改善による部分が大きいことが解析され、
SGLT2阻害剤は心不全の治療薬としても、
有効な可能性が開かれたのです。

ただ、これまでのデータは殆ど糖尿病患者で、
駆出率の低下した、比較的重度の心不全に限ったものでした。

つまり、より軽症で心機能の保たれた心不全への有効性や、
糖尿病患者以外への有効性については、
まだ明確とは言えないのです。

今回の検証は心機能の指標である駆出率が40%を超えている、
比較的軽症の心不全の患者、トータル5988名を、
患者本人にも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はSGLT2阻害剤のエンパグリフロジンを、
1日10mgで上乗せ使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
中間値で26.2ヶ月の経過観察を行なっています。
患者のほぼ半数が糖尿病を合併しています。

その結果、
心血管疾患による死亡もしくは心不全による入院を併せたリスクは、
偽薬と比較してエンパグリフロジンの使用で、
21%(95%CI:0.69から0.90)有意に低下していました。
このリスク低下は主に心不全による入院リスクの低下によるもので、
この予防効果は糖尿病の有無に関わらず認められていました。

このように、
比較的軽症の心不全で糖尿病でなくても、
エンパグリフロジンの心不全への有効性が認められた意義は大きく、
SGLT2阻害剤は今後は糖尿病治療薬よりも、
むしろ心不全治療薬として重要視されるようになるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染症の家族の免疫獲得状況と家族内感染リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ワクチンと家族内感染リスク.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年10月11日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の家族内感染についての論文です。

新型コロナウイルス感染症の流行時期には、
その拡大に最も大きな影響を与える因子の1つが、
家族内感染です。

デルタ株主体の流行となった第5波と言われる時期には、
5人家族に1人の感染者が発生すると、
たちまちのうちに残りの家族全員が感染する、
という事態が日常的に起こっていました。

病院も宿泊療養施設も一杯で、
本来すぐに隔離するべき患者さんが、
自宅療養で待機するしかなくなったので、
その高い感染力も相俟って、
家族内感染により感染者は数倍に膨れ上がったのです。

それでは、家族の中に、
ワクチンを2回接種していたり、
以前に新型コロナウイルス感染症に罹患していて、
免疫が充分にあると想定される成員がいることで、
残りの免疫のない家族の感染リスクは、
どの程度低下するものなのでしょうか?

今回の検証はスウェーデンにおいて、
2から5人で構成される814806家族の感染状況を解析した、
国レベルの非常に大規模なものです。

それによると、
家族の中に以前の感染があったか、
ワクチンを2回接種済みの、
免疫があると想定される成員が多くいるほど、
免疫のない家族への家族内感染のリスクは低い、
という結果が得られました。

免疫のある成員が1人いるだけで、
家族内感染のリスクは45から61%(95%CI:0.37から0.61)、
有意に低くなり。
免疫のある成員が2人になると75から86%、
3人で91から94%、
4人では97%とそれぞれ有意に低くなっていました。

このように、
ワクチン接種が進むことにより、
それが家族の全員ではなくても、
家族内感染のリスクはかなり低くなっていて、
これが新型コロナウイルス感染症のコントロールの、
1つのポイントであるのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「キャンディマン」(2021年再映画化版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
キャンディマン.jpg
ホラーの鬼才ジョーダン・ピールが、
製作と共同脚本に当たった新作ホラーで、
1992年の同題映画の続編的なニュアンスですが、
これまでのピールの映画以上に、
黒人差別の告発的雰囲気の強い映画です。

91分でタイトにまとまっていて、
その意味では悪くないのですが、
スタイリッシュでとても不気味で気持ち悪くはあるのですが、
あまり怖いという感じではなく、
全体的にも社会派ドラマ的部分と、
ホラーというおどかし娯楽映画としての部分が、
あまり上手く整理されていない、
という印象を受けました。

主人公の若い黒人が、
キャンディマンの都市伝説を調べ始めたところから、
どんどん闇の世界に入って行くというのは、
定番のサイコスリラーの感じなのですが、
その一方でキャンディマンと鏡の前で唱えるだけで、
お化けがすぐに登場して殺されるという場面も、
最初から連発されるので、
観ていてもどちらが主筋なのか分からず、
どちらも中途半端に思えて落ち着きません。
ラストから逆算して考えると、
キャンディマンはその時空では常に1人でないと、
いけないのではないかと思われるのですが、
実際には何でもありで、
そうした内容ではないのです。

お化けに殺される場面が、
それなりに見せ場として成立していれば良いのですが、
残酷描写も中途半端ですし、
さんざん思わせぶりをしておきながら何も起こらず、
そのアパートの部屋をグッと引きにして、
100メートルくらい離れると、
窓越しにお化けに襲われる、というような場面もあって、
斬新なキャメラワークと言えなくもありませんが、
肝心のところをとても小さくしか見せないので、
何じゃこりゃ、という気持ちが拭えません。

ともかく監督は、
怖がらせのショッカー演出というものは、
基本的に出来ないし、
おそらくやりたくもないという人なので、
確かに凝った映像もあるし、
スタイリッシュな演出もあって、
それなりに才能もあるのだろうな、とは思うのですが、
とてもホラーの撮れる人ではないのではないか、
というのが個人的な感想でした。

登場人物の全てが、
不幸になるか死んでしまうという暗澹とする作品で、
それが全て警官や白人に迫害されて殺された、
無垢の黒人の恨みなのだから仕方がない、
ということになるので、
かなりしんどい鑑賞となりました。

ジョーダン・ピールの作品がお好きな方は、
今回はスキップしておいても良いように思います。
気分が暗くなるのは必定なので、
メンタルの強い方のみご覧ください。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「DUNE デューン 砂の惑星」(2021年映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
デューン.jpg
「砂の惑星」は、
フランク・ハーバートによる1960年代SFの古典叙事詩で、
1984年にデビット・リンチ監督で映画化されたものの、
監督の意図からはかなり外れた作品となり、
公開当時からとても不評でした。
ホロドフスキーが映画化を目論むも実現には至りませんでした。

その曰く付きの作品が、
ドゥニ・ビルヌーブ監督により、
原作にほぼ忠実な大作として再映画化されました。

ビルヌーブ監督は今SF映画を撮らせたら随一の鬼才で、
「メッセージ」も凄かったですし、
「ブレードランナー2049」も感動的で素晴らしかったですよね。

それで嫌が上にも期待は高まります。

これは今回初めて原作を読んだのですが、
とても面白いんですね。
最初100ページくらいは作品の世界観を理解するのに苦労するので、
ハードルはやや高いのですが、
それ以降はグイグイと作品世界に引込まれます。
1つの別世界を創造したという力技の魅力です。

実際に観た感想としては、
さすがビルヌーブという凄みはありました。

映像がともかく圧倒的で、
全体にリアルな質感が素晴らしいですよね。
サンドウォームという怪物が出て来るのですが、
最後までその全体像は見えません。
最初にその予兆みたいに砂漠の砂の表面に波紋が立つのですね。
それから一気に蟻地獄みたいな穴が開きます。
その感性豊かな表現とリアルさが素晴らしいですね。
色々な現実にはない機械が出て来るのですが、
メカニックの造形や動きが、
昔のサンダーバードみたいなんですよね。
とてもその動きにもリアルさがあってワクワクします。
こういう動きは、
「スターウォーズ」などには、
あまりなかったディテールだと思います。

砂と水の表現なども本当に素晴らしくて、
色々な意味で、
「アラビアのロレンス」以来の本格的砂漠映画、
と言っても良いように思います。

これ、欧米による中東の侵略と、
その後のキリスト教とイスラム教の対立を含めた、
中東の歴史をベースにしているんですね。
ただ、原作は別にそうしたものではなくて、
勿論植民地主義の影響は、
書かれた年代的にない訳ではないのですが、
基本ラインは別の生態系を持つ新たな世界のクリエーション、
という部分にあるので、
現代史と照らしたようなものではないのですが、
映画は明らかにそうした視点を持っています。
その意味でも、
映画は「アラビアのロレンス」によく似ているのです。

原作を読んでから映画を観ると、
ビルヌーブの工夫が分かります。
前半で香料の採掘機械が、
サンドウォームに襲われることろがあるでしょ。
割とどうでも良い場面なんですが、
原作でもとてもビジュアルで魅力的なところなんですね。
それで、ほぼそのままに映像化して、
それで結構盛り上がりを作っていますよね。
その辺りの原作尊重はさすがと思います。
あれ、「サンダーバード」の「死の谷」でしょ。
あの機械の動きは素晴らしいと思います。

ただ、そういう宣伝の仕方をあまりしていないのですが、
実際にはパート1なんですよね。
それも物語的にはやや中だるみ的な場面で終わるんですね。
にも関わらずビルヌーブ映画のいつもの悠然たるテンポで物語は進むので、
ちょっと後半は、「どうせこのまま終わるよな」と思ってしまって、
ちょっと集中力が切れかかるような感じはありました。

「ブレードランナー2049」も確かに長いのですが、
1本で完結していてラストに余韻もあるので、
納得出来るんですよね。
この撮り方でしっかり完結せずに次作に続く、
というのはちょっとしんどいと感じました。

この作品は「スターウォーズ」の元ネタの1つで、
「風の谷のナウシカ」の元ネタの1つでもあるので、
それを一度忠実な形で映画化するというのは、
意味のあることだと思うんですね。
今回そのオリジナルの凄味のようなものは、
充分感じることは出来ました。

これはもう是非完走して欲しいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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PM2.5と長期の生命予後(カナダの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日なのでクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
PM2.5と死亡リスク.jpg
British Medical Journal誌に2021年10月8日ウェブ掲載された、
微小粒子状物質(PM2.5)の曝露量と、
生命予後のとの関連を検証した論文です。

微小粒子状物質「PM2.5」というのは、
直径2.5μm以下の大気中のごく小さな粒子のことで、
肺の末梢気道まで入り込んで沈着する可能性があることより、
喫煙と同じように呼吸器疾患などの原因になる可能性があり、
これまでに気管支喘息などとの関連が報告されています。

その発生源は工場などから出されるばい煙や粉じん、
排気ガス、黄砂のようなものまで様々です。

その規制のガイドラインとしては、
日本では1年平均値として15μg/㎥以下という基準が設定されていますが、
WHOは将来的な目標として10μg/㎥以下という基準を提示しています。

ただ、そうした被曝量が、
果たして実際にどのような影響を、
住民の生命予後に与えるのかというような問題は、
それほど明確に検証されている、
という訳ではありません。

今回の検証はカナダにおいて、
663100名の住民を1996年、2001年、2006年で調査し、
その時の大気の状態と生命予後との関連を比較検証しているものです。

その結果、
PM2.5の曝露量が10.6の状態から7.4の状態の地域に移動すると、
5年間での死亡リスクは6.8%(95%CI:1.7から11.7)、
有意に低下していました。
その一方でPM2.5の曝露量が4.6から9.2の地域に移動すると、
死亡リスクは今度は増加する傾向を示しました。
この地域の移動による死亡リスクの低下は、
心血管疾患による死亡リスクで最も顕著に見られ、
その一方で曝露量が増加した地域においては、
呼吸器疾患による死亡リスクの増加が、
より顕著に認められました。
癌による死亡リスクについては、
曝露量の変化による影響は認められませんでした。

このように現在の基準では、
それほどのリスクはないと考えられている曝露量においても、
その変化による死亡リスクには明確な影響が認められてて、
今後その影響はより詳細に検証される必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナmRNAワクチンの副反応サーベイランスデータ [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナワクチンのサーベイランス.jpg
JAMA誌に2021年9月3日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスmRNAワクチンの、
副反応の広汎な調査結果をまとめた論文です。

新型コロナウイルス予防ワクチンのうち、
その高い有効性が確立しているのが、
ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社の、
2種類のmRNAワクチンであることは間違いがありません。

その一方でこのワクチンについては、
全身性のアレルギー反応であるアナフィラキシー以外に、
血栓症や急性心筋炎、顔面神経麻痺など、
様々な副反応が報告されていて、
それが時にはかなり扇情的に、
報道などで取り上げられています。
ただ、こうした副反応が実際にどのくらいの頻度で、
発症するものなのかについては、
それほど実証的なデータを元にして、
その安全性の議論がなされているとは言えません。

今回のデータはアメリカにおける、
大規模な副反応のサーベイランスデータを解析したもので、
全人口の3.6%に当たる1256万6658人が登録された、
非常に大規模なものです。
2種類のmRNAワクチンの副反応として報告されている。
急性心筋梗塞、顔面神経麻痺(ベル麻痺)、脳静脈洞血栓症、
ギランバレー症候群、急性心筋炎・心膜炎、肺塞栓症、
脳卒中、血栓性血小板減少性紫斑病、などの発症率を、
ワクチン接種後21日以内と、
22日から42日以内とを比較しています。
これは22日以降であれば、ワクチンが誘因となった可能性は低いので、
それと比較して21日以内の発症率が明らかに高ければ、
ワクチンに起因した可能性が高い、
という解釈で解析を行なっています。

その結果、
上記の副反応のいずれもが、
ワクチン接種後21日以内と、22日から42日の間の発症率に、
有意な差は認められませんでした。
興味深いことは血栓性の副反応については、
かなり頻度自体は多いのですが、
ギランバレー症候群は接種後21日以内での報告数が10件と、
非常に稀にしか起こっていないことが分かります。
アナフィラキシーについては、
ファイザー・ビオンテック社ワクチンで100万接種当たり4.8件、
モデルナ社ワクチンで100万接種当たり5.1件が報告されていて、
ワクチン間の差はほぼないことが分かります。

従って、
現状1000万人規模の解析においても、
2種のmRNAワクチンに起因する血栓症などの副反応については、
明確にワクチンとの因果関係は実証はされておらず、
ワクチン接種の必要性が高い状況においては、
その安全性に大きな影響を与えることはないと、
そう考えて大きな問題はないようです。

ただ、若年男性で多い急性心筋炎などの特徴的な事例もあり、
ワクチンの副反応については、
今後も持続的な検証が必要ではあることは間違いありません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルスワクチン3種類の比較(アメリカ救急医療の疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は事務作業などに宛てる予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナワクチン3種の比較.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年10月7日掲載された、
アメリカで使用された3種類の新型コロナウイルスワクチンの、
効果を比較した論文です。

個々の新型コロナウイルスワクチンの有効性は、
多くの臨床試験において検証され、
特にファイザー・ビオンテック社とモデルナ社の、
2種類のmRNAワクチンについては、
有症状の新型コロナウイルス感染症への高い予防効果が確認されています。

ただ、実臨床において、
新型コロナウイルス感染症の入院や重症化を、
どの程度予防したかを示すデータは、
それほど多くはありません。
また、個々のワクチンの有効性を直接比較したようなデータも、
あまりまとまったものはないのが実際です。

今回のデータはアメリカにおいて、
2種類のmRNAワクチンと、
ジョンソン・エンド・ジョンソン社のウイルスベクターワクチンの、
3種類のワクチンの有効性を、
187の病院への50歳以上の41552名の入院事例と、
221カ所の救急医療機関への50歳以上の21522名の救急受診事例を、
ワクチンの接種歴と併せて解析することで、
比較検証しているものです。

その結果、
どちらかのmRNAワクチンを2回接種後14日以上経過した場合には、
新型コロナウイルス感染症に伴う入院を89%(95%CI:87から91)、
集中治療室への入室を90%(95%CI: 86から93)、
救急受診のリスクを91%(95%CI: 89から93)、
それぞれ有意に低下させていました。
この重症化予防効果は、
2種類のワクチン間では明確な差はなく、
85歳以上の年齢層でも、慢性疾患においても、
黒人やヒスパニック系の人種でも、
81から95%の高いレベルで認められました。

ジョンソン・エンド・ジョンソン社のウイルスベクターワクチンについては、
新型コロナウイルス感染症に伴う入院のリスクを68%(95%CI:50から79)、
救急受診のリスクを73%(95%CI:59から82)有意に低下させていました。

このように、
2種類のmRNAワクチンは、
接種終了後112日までの期間という限定の上ですが、
ほぼ同様の高い重症化予防効果を示していました。
ウイルスベクターワクチンについては、
かなりその有効性は見劣りがするのですが、
それでも一定の有効性が確認されています。

今後はワクチンのより長期の有効性と、
ブースター接種を含めたその作用減弱への対策に、
ワクチンの検証は移りつつあるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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スタチンと糖尿病進行リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンと糖尿病進行リスク.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年10月4日ウェブ掲載された、
コレステロール降下剤の糖尿病進行リスクについての論文です。

スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
強力なLDLコレステロールの低下作用を持ち、
その使用により、
心筋梗塞などの心血管疾患の、
予防効果のあることが実証されている薬剤です。

ただ、有効性の確立している一方で、
多くの有害事象や副作用のある薬でもあります。

その中で体重増加作用と、
新規の糖尿病の発症リスクを増加させる作用については、
スタチン自体のターゲットである、
HMGCRという酵素の阻害作用自体にその原因のあることが、
遺伝子の解析からほぼ明らかになっています。

HMGCRの活性のみが低下する変異のある人では、
スタチンを使用するのと同じように、
体重増加や糖尿病のリスクが増加することが確認されたからです。

このようにスタチンという薬のメカニズム自体が、
どうやら新規糖尿病の発症リスクと、
関連を持っているということは分かりました。

そのメカニズムとしては、
インスリン抵抗性がスタチンにより増加することが、
これまでに複数報告されています。

ただ、それでは実臨床において、
糖尿病の患者さんがスタチンを使用する時に、
どのくらいの糖尿病悪化のリスクがあるのでしょうか?

この問題が重要であるのは、
糖尿病の患者さんは心血管疾患のリスクが高く、
スタチンの使用が推奨されているからです。

今回の研究はアメリカにおいて、
糖尿病で新規にスタチンを使用した83022名を、
胃薬を新規に開始した同じ83022名とマッチングさせて検証しています。
その結果、インスリンの新規使用や糖尿病治療薬の増量、
血糖値の200mg /dLを超える増加などの糖尿病の進行は、
スタチン使用群では55.9%に見られたのに対して、
胃薬使用群では48.0%に認められ、
スタチンは胃薬と比較して、
糖尿病の進行リスクが1.37倍(95%CI:1.35から1.40)有意に増加していました。
この糖尿病進行リスクの増加は、
低力価のスタチンより高力価のスタチンにおいて、
より強く認められました。

このデータからは、
糖尿病の患者さんに新規にスタチンを開始すると、
13人に1人の割合で糖尿病の悪化が生じると推計されます。

スタチンを心血管疾患の二次予防(再発予防)として使用する場合には、
その使用のメリットがリスクを上回ることは間違いがありませんが、
糖尿病の患者さんへのスタチンの一次予防については、
その糖尿病悪化のリスクの見積もり方によっては、
リスクがメリットを上回る可能性も否定は出来ません。

今後この問題は、
より詳細な検証が必要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ファイザーワクチン接種後の心筋炎リスク(イスラエルの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ファイザーワクチン後の心筋炎リスク.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年10月6日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスワクチン接種後の、
急性心筋炎リスクについての論文です。

この問題はこれまでにも何度か記事にしています。

ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社による、
2種類の新型コロナウイルスワクチンが、
少なくとも短期的には高い有効性を持つことは、
これまでの膨大な臨床データで実証された事項です。

その副反応についても重篤なものが少ないことは、
これもほぼ確認されていると言って良いのですが、
このワクチンにやや特異的な有害事象として、
指摘されているのが急性心筋炎です。

この有害事象は当初はモデルナワクチンの2回接種後に、
10代の男性のみに起こる現象として紹介されましたが、
その後ファイザー社のワクチンでも同様の現象は見られることや、
女性や20代以上の年齢層においても、
頻度は少ないものの発症事例自体はあることが、
明らかになって来ました。

今回のデータはイスラエルの国レベルの疫学調査によるもので、
2020年12月20日から2021年5月31日の間に、
ファイザー・ビオンテック社の新型コロナワクチン接種後、
初回接種から21日以内、2回目接種から30日以内に発症した、
急性心筋炎の確認事例を、
それ以外の時期の報告頻度と比較検証しているものです。

その結果、
対象期間中に283の急性心筋炎事例が報告されていて、
そのうちの142例はファイザーワクチン接種後に発症しています。
そのうち診断が確実かそれに近いものが136例で、
その95%に当たる129例は軽症でした。
1例のみ劇症型の死亡事例がありました。

ワクチン後の発症事例は1回目接種より2回目接種において、
年齢は16から19歳がそれより高い年齢層より多くなっていました。

標準的な急性心筋炎の発症率と比較して、
ワクチン接種後の発症リスクは5.34倍(95%CI:4.48から6.40)と高く、
特に16から19歳の男性では、
発症リスクは13.60倍(95%CI: 9.30から19.20)と最も高くなっていました。

そのリスクは、
2回目のワクチン接種後30日以降においても、
ワクチン未接種者と比較すると、
2.35倍(95%CI: 1.10 から5.02)と有意に高く、
16歳から19歳の男性では、
8.96倍(95%CI:4.50から17.83)と最も高くなっていました。

このようにファイザー社のワクチンにおいても、
10代の男性においては急性心筋炎の発症リスクが、
特に2回目接種後に増加することは間違いのないことであるようです。

その発症率自体は、
500万人以上のワクチン接種で136例という低いもので、
その重症度も軽症が殆どなので、
ワクチン接種の安全性を揺るがすようなものではありませんが、
こうした事例が特に10代の男性において多く発症するという事実は、
接種者も医療従事者も常に意識する必要がありますし、
ワクチンに関わる医療者の1人として、
その可能性を常に疑いながら、
診療に当たりたいとは思っています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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