SSブログ

屋内大規模ライブイベントにおける感染対策の効果(フランスの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コンサートの感染対策の有効性.jpg
the Lancet Infectious Diseases誌に、
2021年11月26日ウェブ掲載された、
室内の大規模イベント会場における、
感染対策の有効性について検証した論文です。

新型コロナウイルス感染症の流行期には、
コンサートなどの大規模イベントが軒並み中止されました。

これは特に流行初期において、
ナイトクラブやコンサート、コーラス会場など、
密閉した会場で群衆が大声を出すような場所で、
集団感染が発生したことがそのきっかけになっています。

その後感染が収束傾向になると、
会場の換気や参加者のマスク着用、
事前の抗原検査やワクチン接種などが、
感染対策として施行されつつ、
イベントは再開されるようになりました。

それでは、
現在施行されている感染対策によって、
どの程度感染予防は可能なのでしょうか?

今回の検証はフランスにおいて、
屋内大規模イベントの参加者と非参加者とで、
一定期間の感染リスクを比較検証しているものです。

2021年5月29日にパリのベルシー・アリーナという、
日本の東京ドームのような(ウィキペディアにある表現です)、
大規模屋内施設でフランスのロックバンドのコンサートが開催されました。
会場は充分な換気が施行され、
来場者はマスク着用と3日以内の抗原検査で陰性であることが求められました。

そこでくじ引きで決められた参加者4451名と、
非参加者2227名を登録して、
コンサート後1週間の時点で唾液のRT-PCR検査を施行。
その陽性率を比較しているものです。
両群ともワクチン接種者は半数程度で、
2回接種済みは7%程度でした。

その結果、
コンサートの参加者3917名(最終解析人数)中、
0.20%に当たる8名と、
非参加者1947名中0.15%に当たる3名が、
1週間後のRT-PCR検査で陽性と判定されました。
この両群には有意な差はなく、
一定の感染対策をしていれば、
コンサートに参加しても感染リスクは増加しない、
という結果が得られました。

この結果は現状の感染対策に、
一定の科学的根拠を与えるものですが、
比較的感染が落ち着いていた時期で、
感染者も少なかったことから限界のある結果です。
これが感染力の強い変異株の、
流行拡大期であれば、
また違った結果になった可能性は充分にあるからです。

いずれにしても、
今後もこうした検証を重ねることにより、
科学的裏付けのある、
必要かつ十分な感染対策が、
施行されることに期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0) 

ファイザーワクチン接種後の期間と感染リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ファイザーワクチン2回接種後の再感染リスク.jpg
British Medical Journal誌に、
2021年11月24日ウェブ掲載された、
ファイザー・ビオンテック社ワクチン接種後の期間と、
新型コロナウイルスの感染リスクとの関連を検証した論文です。

ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社の、
2種類のmRNAワクチンが、
短期間においては高い有効性を持つことは実証された事実ですが、
概ね2回の接種終了後3か月程度が経過すると、
その有効性は徐々に低下し、
ブレイクスルー感染が増加することも、
ほぼ事実であると認識されています。

ただ、具体的に個別のワクチンにおいて、
どのくらいの期間が接種後経過すると、
どのくらい再感染のリスクが生じるのか、
というような点については、
それほど実証的なデータがある、
という訳ではありません。

今回の疫学データはイスラエルにおいて、
18歳以上でファイザー・ビオンテック社ワクチンを2回接種後、
少なくとも3週間以上経過後に、
新型コロナウイルスのRT-PCR検査を施行した、
トータル83057名の結果とワクチン接種との関連を解析したものです。
全体のうち9.6%が遺伝子検査で陽性となり、
ワクチン2回接種後の期間が長いほど、
陽性となるリスクは高くなっていました。

ワクチン接種完了後21から89日と比較した時、
90日から119日経過後の感染リスク(RT-PCR陽性で判断)は、
2.37倍(97%CI:1.67から3.36)、
120から149日の感染リスクは2.66倍(95%CI:1.94から3.66)、
150日から179日の感染リスクは2.82倍(95%CI:2.07から3.84)、
180日以上経過時の感染リスクは2.82倍(95%CI:2.07から3.85)、
ぞれぞれ有意に増加していました。

つまり、ファイザー・ビオンテック社ワクチン接種後、
90日以上経過すると感染リスクはそれ以前より明確に増加し、
その後徐々に感染リスクが高くなってゆくことが、
今回確認されたのです。

一応現状日本においては、
3回目のブースター接種は、
2回接種終了後8か月以降を目安とし、
クラスターなどの発生があれば、
6か月まで前倒しするとされていますが、
今後再感染のデータが蓄積されるにつれ、
その指針は再検討が必要になるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(5)  コメント(0) 

「イモンドの勝負」(ナイロン100℃ 47th SESSION) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日ですが、
区民健診の当番日なので、
午前中はクリニックで健診業務の予定です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
イモンドの勝負.jpg
ナイロン100℃の新作公演が、
今下北沢の本多劇場で上演されています。

これはナンセンスコメディの系譜の作品で、
大倉孝二さん演じる異能の男の、
不可思議な人生を綴った物語です。
このチラシにあるピンクの怪物も、
ちゃんと登場します。

今回はかなり別役タッチだったんですね。
オープニングの大倉さんと峰村リエさんの部分とか、
もろ別役という感じでしょ。
それから山内圭哉さんが出てきて、
客席に向かって1人語りするのも、
初期の別役芝居の定番の感じですよね。
その後も小市民的な生活を綴って、
そこにシュールな要素や、
秘められた悲劇的な要素が垣間見えるのは、
別役芝居そのものですよね。
その一方でほら話が次第に大きくなって、
おバカ同士の不毛な対決になったり、
宇宙人との対決になったりするのは、
ケラさんお得意のナンセンスコメディの感じです。

今回の作品では、
その両者が、あまり嚙み合っていなかったかな、
というように感じました。

キャストはとても豪華だったのですが、
峰村リエさんも池谷のぶえさんも、
別人かと思うほどシュんとされていて、
勿論映像の世界では立派な演技派として、
今は活躍されているので当然ではあるのですが、
かつての異能の人としての大暴れを期待していると、
やや肩透かしの感じはありました。

今回感じたことは、
矢張りナンセンスコメディにはある程度「若さ」が必要で、
今回の成熟したメンバーが、
かつてのようなコメディを、
演じることはなかなか難しいのではないか、
ということです。
別役芝居はシュールなコメディを、
高齢の役者さんも演じられるという点で、
画期的な部分があり、
そのために別役タッチが採用されていると思うのですが、
別役芝居には展開と落としどころとが必要で、
それがないとただの中途半端に終わってしまうのではないか、
というように感じます。
今回の作品はその辺りに、
やや計算違いがあったように感じました。

そんな訳で、
やや肩透かしの変化球という印象のあった本作ですが、
ケラさんはそんなことはとうに織り込み済みだと思うので、
また予想を超える次作に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
nice!(2)  コメント(0) 

「エターナルズ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも須田医師が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
エターナルズ.jpg
マーベルコミックのシリーズの新作が、
今ロードショー公開されています。

これは映画としては新シリーズの1作目で、
「ノマドランド」でアカデミー賞を受賞した、
クロエ・ジャオ監督が演出をし、台本にも関わっています。

多くのキャストが登場しますが、
主役は中国系のジェンマ・チャンで、
まあ今の世界状況を反映したような座組になっています。

これはそう悪くなかったですよ。

僕の年代の感覚からすると、
石ノ森章太郎の「サイボーグ009」みたいなお話、
その後半の、変に壮大になって来る辺りの感じですね。
と言うことは、
意外に「エヴァンゲリオン」にも似たタッチの、
大風呂敷感のある作品です。

エターナルズというのが神様の集団で、
その神様というのは、
地球外生命体の作った、
ロボットみたいなものなんですね。
それが数千年前に地球に降り立って、
人間の天敵である怪物と戦うのです。
その怪物は一旦滅ぼされて、
エターナルズも解散するのですが、
何故か宇宙に帰れという指令が来ないので、
そのまま地球人として生活していると、
現在になって突然怪物が復活して現れるのですね。
エターナルズは再集結するのですが、
実はそれは人類絶滅に繋がる、
カウントダウンだった、
というお話です。

通俗娯楽作品ではあるのですが、
さすがクロエ・ジャオという感じもあるのですね。
10人(多分)のエターナルズを描き分けつつ、
数千年の時間も俯瞰して、
「破壊神目覚める」みたいなクライマックスを、
曲りなりにも成立させている力業には感心しますし、
かつて愛し合った2人が、
敵味方に分かれるという情感も、
なかなか良い感じです。

自然の風景の中に宇宙船などの異物を出現させる感じや、
バビロンの都を俯瞰で描くキャメラの感じは、
ビルヌーブ監督の「デューン」にとても良く似ていて、
同じようなスタッフが、
両方の映画に関わっているのかな、
という感じもしました。

また例によって続編も作られるようですし、
アベンジャーズとのリンクもありそうです。
それほどこのジャンルに熱意はありませんが、
それでも時々は覗きに行こうかとは思っています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0) 

オランダにおける大腸癌検診の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
オランダの大腸癌検診の有効性.jpg
The Lancet Gastroenterology & Hepatology誌に、
2021年11月22日ウェブ掲載された、
便潜血による大腸癌検診の有効性を検証した論文です。

癌検診と称するものは非常に多く施行されていますが、
検診をすることで明確にその癌による死亡の減少が、
確認されているような検診は多くはありません。

その1つが便潜血や大腸の内視鏡検査(S状結腸のみの検査を含む)を活用した、
大腸癌検診(スクリーニング)です。

こうした知見を受けてオランダにおいては、
2014年より便のヒトヘモグロビンを感知する便潜血検査を、
55歳以上の年齢の国民全員に、
2年毎に施行することを繰り返し、
陽性であれば内視鏡検査などを二次検査として施行する、
大腸癌スクリーニングを行なっています。

今回のデータは、
2010年から2019年に掛けて診断された、
大腸癌の事例トータル125215名を、
大腸癌検診の施行前後と期間を分けて解析することで、
大腸癌検診の有効性を検証しているものです。

その結果、大腸癌の55歳以上の罹患率は、
検診施行前の2013年には、
人口10万人当たり214.3件であったのに対して、
開始後1年の2015年には259.2件に増加し、
2019年には181.5件に減少しています。
これは検診が導入されることによって、
それまで早期には発見されなかった大腸癌が、
多く発見されるようになったので、
一時的に罹患率は増加し、
その後数年を経て癌が早期に発見され治癒するようになったので、
罹患率は減少に転じたと考えることが出来ます。

年齢で補正した進行大腸癌(ステージ3と4)の罹患率は、
検診施行前の2013年には、
人口10万人当たり117.0件であったのに対して、
施行後1年の2015年には122.8件に増加し、
2018年には94.7件に減少しています。

年齢で補正した大腸癌死亡率も、
2010年には人口10万人当たり87.5件から、
2019年には64.8件に減少しています。

症状から疑われて診断された大腸癌と比較して、
左側の結腸に多く、早期癌が多く、
局所治療により対応可能が事例が多いという特徴が見られました。

このように、
便潜血による大腸癌検診により、
より早期の大腸癌が多く発見され治療により治癒することにより、
進行癌への進展が抑止され、
大腸癌による死亡のリスクが低下することが、
大規模な検証により明確に示されました。

便潜血による大腸癌検診は、
数少ない意義のある癌検診であると考えて、
大きな間違いはないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0) 

1人暮らしの高齢者の予後と社会的サポートとの関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は事務作業などの予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
独居老人の予後と社会的支援.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年11月15日ウェブ掲載された、
独居の高齢者の予後に与える、
親戚や友人のサポートの効果についての論文です。

独居の高齢者が増加していることは、
日本のみならず世界的にも、
高齢化が進行する社会の、
大きな公衆衛生上の問題です。

1人暮らしの高齢者は、
1人暮らしではない場合と比較して、
心血管疾患の予後が悪く、
うつ状態を来しやすく、
トータルな生命予後も悪いことが報告されています。

ただ、1人暮らしの高齢者といっても、
その実際の生活は様々で、
本当に身よりも友人もいない孤独な高齢者から、
何かあれば助けてくれるような友人も多く、
近くに親族も生活しているような、
自分の意思で1人暮らしをしているだけ、
というような人もいます。

それを、一律に「独居の高齢者」として解析することは、
正確な知見に至らないのではないでしょうか?

そこで今回の研究ではアメリカにおいて、
65歳以上の1人暮らしの高齢者で、
登録の時点でADLの自立している4772名を、
何かあった時にサポートしてくれる友人や親族がいるかどうかで分類し、
平均で4.9年の経過観察を施行。
その予後を比較検証しています。
このうちの38%に当たる1813名が、
サポートしてくれる友人や親族はいないと、
アンケートで回答していました。
そして、観察期間中に、
そのうちの63%に当たる3013名が、
入院や癌の診断、脳卒中や心臓の発作を来していました。

ここで、
観察期間2年の時点で老人ホーム(ナーシングホーム)に入所しているリスクは、
友人や親族のサポートがない場合が6.7%であった一方、
サポートのある場合は5.2%で、
社会的サポートは老人ホーム入所のリスクを、
有意に低下させていました。

入院や癌の診断、脳卒中や心臓発作を来した場合、
2年を超える期間での老人ホーム入所のリスクは、
友人や親族のサポートのない場合が14.2%であった一方で、
サポートのある場合は10.9%で、
社会的サポートは2年を超える期間での老人ホーム入所のリスクも、
有意に低下させていました。
しかし、入院などの健康問題が生じていない場合には、
2年を超える期間での老人ホーム入所のリスクには差は認められませんでした。
また、死亡のリスクやADL低下のリスクには、
社会的サポートのあるなしとの有意な関連は認められませんでした。

このように、
頼れる友人や親族のいることは、
独居の高齢者の予後改善に、
一定の影響を与えることは間違いがなさそうです。
ただ、その影響は限定的なもので、
今後独居高齢者への有効な対策を考える上では、
より詳細な検証が必要と考えられます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(3)  コメント(0) 

藤本有紀「パ・ラパパンパン」(演出松尾スズキ) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療とインフルエンザワクチン接種などで、
都内を廻る予定です。

世間が休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
パ・ラパパンパン.jpg
松尾スズキさんの傑作「キレイ」を生み出した、
シアター・コクーンのオリジナルミュージカル企画の新作が、
今上演されています。

これまでは松尾さんのオリジナルでしたが、
今回はベテラン脚本家の藤本有紀さんのオリジナル戯曲を、
松尾さんが演出しています。

「パ・ラパパンパン」の繰り返しが印象的な、
クリスマスソングの「リトル・ドラマー・ボーイ」がテーマ曲で、
松たか子さん演じるラノベ作家が、
心機一転して本格ミステリーの長編を執筆すると宣言するのですが、
一向に進捗せず、
見かねて訪れた担当編集社の神木隆之介さんと、
「クリスマス・キャロル」の世界を舞台にした、
ミステリーを考えることになります。

その後は思いつくままに展開される古典ミステリーの世界が、
実際に舞台に再現され、
それに神木さんが茶々を入れたりして物語は展開。
1幕と2幕に分かれた構成で、
2幕では小説と同じように毒を飲んだ松さんが、
完全にミステリーの世界に入り込み、
探偵として作品の謎を解き明かすことになります。

非常にウェルメイドな作劇で、
松尾さん自身も表明しているように、
「誰でも安心して楽しめる娯楽としての演劇」を、
文字通りに体現した世界です。

藤本さんの戯曲は主人公の設定の中に、
松尾さん自身を忍び込ませた感じがあって、
ミニマルな読者を対象としていた作家が、
より幅広い観客を楽しませるための作品を書こうとする際の、
内的葛藤を裏テーマにしているのだと思います。
悪魔的な編集者が怪物化して、
その頸木から解き放たれるという結末も、
なにやら暗示的です。

ただ、主眼は敢くまで、
万人向けのクリスマスのミュージカルを提供することにあって、
歌と踊りを適度に配した古典ミステリーの世界は、
まずは楽しめるものに仕上がっていたと思います。

キャストは何と言っても松たか子さんが抜群で、
女優を扱うことにはピカイチの松尾さんの演出の冴えもあり、
彼女の魅力が十全に味わえる内容になっています。
美声も聴かせますし、
コミカルなやりとりも抜群の楽しさで、
ラスト、テーマ曲に乗ってステップを踏む姿だけで、
チケットの元は取った気分になります。
舞台の松さんは控え目に言って最高です。

正直別に松尾さんがこんな作品を演出しなくても、
という思いはあります。
でも、悪夢ばかり見続けていた中年男が、
クリスマスの夜に一度だけ見た、
心躍る楽しい夢だと思えば、
これはこれでありかな、というような気もします。

ただ、ミステリーファンとして言うと、
本格ミステリーの面白みには乏しい作品で、
「クリスマス・キャロル」が題材というのも如何にもベタ過ぎて、
脱力するという感じはありました。

肩の凝らない(その割には長いですが)娯楽ミュージカルとしては、
まずまずの作品でお勧めで、
松たか子さんのファンであれば満足出来ますが、
神木隆之介さんのファンにはおそらく物足りず、
本格ミステリーを期待したり、
これまでの松尾スズキさんの世界を期待すると、
失望は間違いないという、
そんな感じの舞台でした。

せめて、もう少しシュールでもいいよね。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
nice!(1)  コメント(0) 

慢性腎臓病の予後と性差との関係 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
急性腎不全の予後と性差との関連.jpg
British Medical Journal誌に、
2021年11月16日ウェブ掲載された、
腎臓病の予後と男女の性別との関連についての論文です。

男と女にこんな違いがある、
というような話は、
一般的なレベルでは、
むしろタブーのような扱いになりつつありますが、
遺伝子レベルの性差が、
病気の予後などに与える影響については、
科学的な意味で一定の意義のある情報であることは、
現在でも変わりはありません。

ただ、何処までが生まれ持っての性別の影響であり、
何処からが環境などの社会的な要因であるのか、
というような点については、
不明の点も多いのが実際です。

慢性腎臓病は腎臓の機能が一定レベル低下した状態のことで、
それが進行して腎機能が高度に低下した状態が腎不全です。

この慢性腎臓病は罹患率としては、
男性より女性に多いとされていますが、
その一方で透析が導入されるような腎不全の罹患率は、
女性より男性が多くなっていて、
これは男性の方が腎臓病の進行はより速い、
ということを示していると説明されています。

ただ、実際に腎不全の生命予後に、
男女差があるかどうかについては、
これまであまり信頼のおけるデータがありませんでした。

今回の研究は、
オーストラリアとニュージーランドにおいて、
82844名の腎不全の患者の経過と性差との関連を、
透析や腎移植の疫学データから解析したものです。

その結果、
一般人口と比較した場合の腎不全患者の生命予後は、
男性より女性で死亡リスクが有意に増加していました。
この性差は特に若い年齢層で強く見られ、
心血管疾患による死亡リスクにおいて顕著でした。
年齢などで補正した死亡リスクは、
男性より女性で11%(95%CI:8から13)高く、
腎不全による生存期間の短縮幅も、
男性と比較して女性では3.6年(95%CI:3.6から3.7)短くなっていました。

つまり、
女性が一旦腎不全になると、
その生命予後は男性より悪く、
特に心血管疾患による死亡のリスクが増加する、
という結果です。

この結果が遺伝子レベルのものなのか、
環境要因などによる二次的なものなのかは不明ですが、
腎不全の診療においては、
性差によりその予後に性差のあることを念頭において、
その対応にも慎重な配慮が必要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(1)  コメント(0) 

「アンテベラム」(ネタバレ注意) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アンテベラム.jpg
2020年製作のアメリカ映画で、
人種差別に関する怨念を、
煽情的に描いたスリラーです。

ジョーダン・ピールの「ゲット・アウト」と「アス」の、
プロデューサーが関わっていることが宣伝されていて、
確かに「ゲット・アウト」を彷彿とさせる部分はあります。
ただ、もっと遊びのない怨念のみといった感じの映画で、
「目には目を」という感じが強い点が、
個人的にはあまり好みではありませんでした。

この映画はネタバレ厳禁という部分があるので、
説明はしにくいのですね。
基本的には露骨なネタバレはしていませんが、
なんとなくどういう話が分かってしまうと思うので、
鑑賞予定の方は以下は鑑賞後にお読み下さい。

ただ、そう大したことはないですよ。
「アス」のクオリティを期待するととてもガッカリします。

よろしいでしょうか。

それでは先に進みます。

この映画は構成にひねりがあるんですね。
ただ、それがとても成功しているとは思えなくて、
無理矢理感が強く、
本来はこうしたトリッキーな映画は大好物なのですが、
この作品については正直ゲンナリしてしまいました。

シャマラン監督にとても良く似た映画があるのですが、
その趣向の順序を更に入れ替えているんですね。
言ってみれば、2つの異なるお話を、
強引に1つにつなげているのです。
でも、それだと、結果的に、
先がどうなるか分からないという不気味なムードを、
打ち消してしまうことになりますよね。
スタイリッシュでアート映画みたいで、
映像のクオリティ自体は高いのですが、
物語自体はダラダラとした描写が続いていて、
伏線回収を先にしてから伏線を張る、
みたいなことをしているので、
構成としては破綻しているように感じました。

ジョーダン・ピール絡みの映画が最近2本あって、
「キャンディマン」もこの「アンテベラム」も、
何かモヤモヤする出来栄えに終わっていました。
色々事情はあるのでしょうが、
次は本家の快作を期待して待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
nice!(3)  コメント(0) 

「皮膚を売った男」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は院長の石原が担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
皮膚を売った男.jpg
2020年製作のチェニジア、フランスなどの合作映画で、
チェニジア出身の女性監督が脚本・演出に当たっています。

シリアからの難民となった若い男性が、
愛する女性に会いたいという思いだけで、
高名な前衛芸術家の誘いに乗って、
背中にビザのタトゥーを入れ、
生きた藝術作品としてベルギーに入国します。
自分がアートになることによって、
難民の存在から自由になるものの、
それは自らが値札の付いた「物」になることでもあるのです。

非常に危険な雰囲気を孕んだ、
かなり過激な素材で、
それをスタイリッシュで感性重視の映像で綴っています。

フランス映画に近いタッチで、
僕の大好きな「潜水服は蝶の夢を見る」に、
似たセンスも感じます。

ただ、そこまで好きにはなれなかったのは、
テロを挑発に使ったり、一種のトリックに使ったりもする、
ある種の危険なあざとさがあることで、
ラストの現代的なオチも、
「こんなことしない方が良かったのに」
という感じが抜けませんでした。

また、主人公の男性にかなり癖があるんですね。
後先を考えずに直情的に行動しますし、
真面目に与えられた仕事をする、
というような感覚は皆無です。
勿論これはこれでありだと思いますが、
正直ついていくのがしんどく感じました。

そんな訳で色々なことを考えさせる、
問題作であることは間違いがなく、
好き嫌いはかなり分かれると思いますが、
一見の価値はあると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0)