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新型コロナmRNAワクチンの副反応サーベイランスデータ [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナワクチンのサーベイランス.jpg
JAMA誌に2021年9月3日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスmRNAワクチンの、
副反応の広汎な調査結果をまとめた論文です。

新型コロナウイルス予防ワクチンのうち、
その高い有効性が確立しているのが、
ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社の、
2種類のmRNAワクチンであることは間違いがありません。

その一方でこのワクチンについては、
全身性のアレルギー反応であるアナフィラキシー以外に、
血栓症や急性心筋炎、顔面神経麻痺など、
様々な副反応が報告されていて、
それが時にはかなり扇情的に、
報道などで取り上げられています。
ただ、こうした副反応が実際にどのくらいの頻度で、
発症するものなのかについては、
それほど実証的なデータを元にして、
その安全性の議論がなされているとは言えません。

今回のデータはアメリカにおける、
大規模な副反応のサーベイランスデータを解析したもので、
全人口の3.6%に当たる1256万6658人が登録された、
非常に大規模なものです。
2種類のmRNAワクチンの副反応として報告されている。
急性心筋梗塞、顔面神経麻痺(ベル麻痺)、脳静脈洞血栓症、
ギランバレー症候群、急性心筋炎・心膜炎、肺塞栓症、
脳卒中、血栓性血小板減少性紫斑病、などの発症率を、
ワクチン接種後21日以内と、
22日から42日以内とを比較しています。
これは22日以降であれば、ワクチンが誘因となった可能性は低いので、
それと比較して21日以内の発症率が明らかに高ければ、
ワクチンに起因した可能性が高い、
という解釈で解析を行なっています。

その結果、
上記の副反応のいずれもが、
ワクチン接種後21日以内と、22日から42日の間の発症率に、
有意な差は認められませんでした。
興味深いことは血栓性の副反応については、
かなり頻度自体は多いのですが、
ギランバレー症候群は接種後21日以内での報告数が10件と、
非常に稀にしか起こっていないことが分かります。
アナフィラキシーについては、
ファイザー・ビオンテック社ワクチンで100万接種当たり4.8件、
モデルナ社ワクチンで100万接種当たり5.1件が報告されていて、
ワクチン間の差はほぼないことが分かります。

従って、
現状1000万人規模の解析においても、
2種のmRNAワクチンに起因する血栓症などの副反応については、
明確にワクチンとの因果関係は実証はされておらず、
ワクチン接種の必要性が高い状況においては、
その安全性に大きな影響を与えることはないと、
そう考えて大きな問題はないようです。

ただ、若年男性で多い急性心筋炎などの特徴的な事例もあり、
ワクチンの副反応については、
今後も持続的な検証が必要ではあることは間違いありません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 2

若年医師

石原先生、お忙しいところ貴重な情報の共有誠にありがとうございます。
一つ素朴な疑問が浮かんだのでもしよろしければ質問させていただけると幸いです。
文中に「22日以降であれば、ワクチンが誘因となった可能性は低い」とのことでしたが、この22日を境にする根拠は何があるのでしょうか。若輩な私に教えていただけると幸いです。大変恐縮ではございますが、よろしくお願い申し上げます。
by 若年医師 (2021-10-19 11:45) 

fujiki

若年医師様
確かに副反応の種類によっても、
発症までの期間は幅があるので、
一律に21日でリスク期間を設定するのは、
大雑把で無理があるように感じます。
本文を読み直したのですが、
そのメソドロジーで引用されている論文では、
アナフィラキシーはより短期間、
ギランバレーはより長期などリスク期間を分けていて、
その方があるべき形ではあるように思います。
by fujiki (2021-10-20 08:17) 

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