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ファイザーワクチン接種後の心筋炎リスク(イスラエルの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ファイザーワクチン後の心筋炎リスク.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年10月6日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスワクチン接種後の、
急性心筋炎リスクについての論文です。

この問題はこれまでにも何度か記事にしています。

ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社による、
2種類の新型コロナウイルスワクチンが、
少なくとも短期的には高い有効性を持つことは、
これまでの膨大な臨床データで実証された事項です。

その副反応についても重篤なものが少ないことは、
これもほぼ確認されていると言って良いのですが、
このワクチンにやや特異的な有害事象として、
指摘されているのが急性心筋炎です。

この有害事象は当初はモデルナワクチンの2回接種後に、
10代の男性のみに起こる現象として紹介されましたが、
その後ファイザー社のワクチンでも同様の現象は見られることや、
女性や20代以上の年齢層においても、
頻度は少ないものの発症事例自体はあることが、
明らかになって来ました。

今回のデータはイスラエルの国レベルの疫学調査によるもので、
2020年12月20日から2021年5月31日の間に、
ファイザー・ビオンテック社の新型コロナワクチン接種後、
初回接種から21日以内、2回目接種から30日以内に発症した、
急性心筋炎の確認事例を、
それ以外の時期の報告頻度と比較検証しているものです。

その結果、
対象期間中に283の急性心筋炎事例が報告されていて、
そのうちの142例はファイザーワクチン接種後に発症しています。
そのうち診断が確実かそれに近いものが136例で、
その95%に当たる129例は軽症でした。
1例のみ劇症型の死亡事例がありました。

ワクチン後の発症事例は1回目接種より2回目接種において、
年齢は16から19歳がそれより高い年齢層より多くなっていました。

標準的な急性心筋炎の発症率と比較して、
ワクチン接種後の発症リスクは5.34倍(95%CI:4.48から6.40)と高く、
特に16から19歳の男性では、
発症リスクは13.60倍(95%CI: 9.30から19.20)と最も高くなっていました。

そのリスクは、
2回目のワクチン接種後30日以降においても、
ワクチン未接種者と比較すると、
2.35倍(95%CI: 1.10 から5.02)と有意に高く、
16歳から19歳の男性では、
8.96倍(95%CI:4.50から17.83)と最も高くなっていました。

このようにファイザー社のワクチンにおいても、
10代の男性においては急性心筋炎の発症リスクが、
特に2回目接種後に増加することは間違いのないことであるようです。

その発症率自体は、
500万人以上のワクチン接種で136例という低いもので、
その重症度も軽症が殆どなので、
ワクチン接種の安全性を揺るがすようなものではありませんが、
こうした事例が特に10代の男性において多く発症するという事実は、
接種者も医療従事者も常に意識する必要がありますし、
ワクチンに関わる医療者の1人として、
その可能性を常に疑いながら、
診療に当たりたいとは思っています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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