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スタチンと糖尿病進行リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンと糖尿病進行リスク.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年10月4日ウェブ掲載された、
コレステロール降下剤の糖尿病進行リスクについての論文です。

スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
強力なLDLコレステロールの低下作用を持ち、
その使用により、
心筋梗塞などの心血管疾患の、
予防効果のあることが実証されている薬剤です。

ただ、有効性の確立している一方で、
多くの有害事象や副作用のある薬でもあります。

その中で体重増加作用と、
新規の糖尿病の発症リスクを増加させる作用については、
スタチン自体のターゲットである、
HMGCRという酵素の阻害作用自体にその原因のあることが、
遺伝子の解析からほぼ明らかになっています。

HMGCRの活性のみが低下する変異のある人では、
スタチンを使用するのと同じように、
体重増加や糖尿病のリスクが増加することが確認されたからです。

このようにスタチンという薬のメカニズム自体が、
どうやら新規糖尿病の発症リスクと、
関連を持っているということは分かりました。

そのメカニズムとしては、
インスリン抵抗性がスタチンにより増加することが、
これまでに複数報告されています。

ただ、それでは実臨床において、
糖尿病の患者さんがスタチンを使用する時に、
どのくらいの糖尿病悪化のリスクがあるのでしょうか?

この問題が重要であるのは、
糖尿病の患者さんは心血管疾患のリスクが高く、
スタチンの使用が推奨されているからです。

今回の研究はアメリカにおいて、
糖尿病で新規にスタチンを使用した83022名を、
胃薬を新規に開始した同じ83022名とマッチングさせて検証しています。
その結果、インスリンの新規使用や糖尿病治療薬の増量、
血糖値の200mg /dLを超える増加などの糖尿病の進行は、
スタチン使用群では55.9%に見られたのに対して、
胃薬使用群では48.0%に認められ、
スタチンは胃薬と比較して、
糖尿病の進行リスクが1.37倍(95%CI:1.35から1.40)有意に増加していました。
この糖尿病進行リスクの増加は、
低力価のスタチンより高力価のスタチンにおいて、
より強く認められました。

このデータからは、
糖尿病の患者さんに新規にスタチンを開始すると、
13人に1人の割合で糖尿病の悪化が生じると推計されます。

スタチンを心血管疾患の二次予防(再発予防)として使用する場合には、
その使用のメリットがリスクを上回ることは間違いがありませんが、
糖尿病の患者さんへのスタチンの一次予防については、
その糖尿病悪化のリスクの見積もり方によっては、
リスクがメリットを上回る可能性も否定は出来ません。

今後この問題は、
より詳細な検証が必要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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