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エンパグリフロジンの心不全への有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
エンパグリフロジンの心不全予後改善効果.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年10月14日掲載された、
糖尿病治療薬の心不全への有効性についての論文です。

SGLT2阻害剤は尿へのブドウ糖の排泄を促すことにより、
血糖値を低下させる作用を持つ薬です。

この薬が注目されたのは、
心血管疾患による死亡や総死亡のリスクを、
有意に30%以上低下させるという、
画期的なデータがエンパグリフロジンというSGLT2阻害剤で、
報告されたからです。

その後この心血管疾患の生命予後改善効果の多くは、
心不全の予後改善による部分が大きいことが解析され、
SGLT2阻害剤は心不全の治療薬としても、
有効な可能性が開かれたのです。

ただ、これまでのデータは殆ど糖尿病患者で、
駆出率の低下した、比較的重度の心不全に限ったものでした。

つまり、より軽症で心機能の保たれた心不全への有効性や、
糖尿病患者以外への有効性については、
まだ明確とは言えないのです。

今回の検証は心機能の指標である駆出率が40%を超えている、
比較的軽症の心不全の患者、トータル5988名を、
患者本人にも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はSGLT2阻害剤のエンパグリフロジンを、
1日10mgで上乗せ使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
中間値で26.2ヶ月の経過観察を行なっています。
患者のほぼ半数が糖尿病を合併しています。

その結果、
心血管疾患による死亡もしくは心不全による入院を併せたリスクは、
偽薬と比較してエンパグリフロジンの使用で、
21%(95%CI:0.69から0.90)有意に低下していました。
このリスク低下は主に心不全による入院リスクの低下によるもので、
この予防効果は糖尿病の有無に関わらず認められていました。

このように、
比較的軽症の心不全で糖尿病でなくても、
エンパグリフロジンの心不全への有効性が認められた意義は大きく、
SGLT2阻害剤は今後は糖尿病治療薬よりも、
むしろ心不全治療薬として重要視されるようになるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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