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PM2.5と長期の生命予後(カナダの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日なのでクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
PM2.5と死亡リスク.jpg
British Medical Journal誌に2021年10月8日ウェブ掲載された、
微小粒子状物質(PM2.5)の曝露量と、
生命予後のとの関連を検証した論文です。

微小粒子状物質「PM2.5」というのは、
直径2.5μm以下の大気中のごく小さな粒子のことで、
肺の末梢気道まで入り込んで沈着する可能性があることより、
喫煙と同じように呼吸器疾患などの原因になる可能性があり、
これまでに気管支喘息などとの関連が報告されています。

その発生源は工場などから出されるばい煙や粉じん、
排気ガス、黄砂のようなものまで様々です。

その規制のガイドラインとしては、
日本では1年平均値として15μg/㎥以下という基準が設定されていますが、
WHOは将来的な目標として10μg/㎥以下という基準を提示しています。

ただ、そうした被曝量が、
果たして実際にどのような影響を、
住民の生命予後に与えるのかというような問題は、
それほど明確に検証されている、
という訳ではありません。

今回の検証はカナダにおいて、
663100名の住民を1996年、2001年、2006年で調査し、
その時の大気の状態と生命予後との関連を比較検証しているものです。

その結果、
PM2.5の曝露量が10.6の状態から7.4の状態の地域に移動すると、
5年間での死亡リスクは6.8%(95%CI:1.7から11.7)、
有意に低下していました。
その一方でPM2.5の曝露量が4.6から9.2の地域に移動すると、
死亡リスクは今度は増加する傾向を示しました。
この地域の移動による死亡リスクの低下は、
心血管疾患による死亡リスクで最も顕著に見られ、
その一方で曝露量が増加した地域においては、
呼吸器疾患による死亡リスクの増加が、
より顕著に認められました。
癌による死亡リスクについては、
曝露量の変化による影響は認められませんでした。

このように現在の基準では、
それほどのリスクはないと考えられている曝露量においても、
その変化による死亡リスクには明確な影響が認められてて、
今後その影響はより詳細に検証される必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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