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オメガ3系脂肪酸と心房細動リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
オメガ3系脂肪酸と心房細動リスク.jpg
Journal of the American College of Cardiology誌に、
2023年7月25日付で掲載された、
青身魚の脂の成分と不整脈のリスクについての論文です。

EPAやDHAという、
オメガ3系多価不飽和脂肪酸は、
心血管疾患の予防効果のある成分として有名で、
こうした成分を食事で多く摂った方が、
心血管疾患になりにくい、
という点はほぼ間違いのない事実です。

ただ、このEPAやDHAをサプリメントや薬として服用することで、
明確な健康上の効果を示すのか、
という点については、
まだ明確な結論に至っていません。

オメガ3系脂肪酸の健康効果自体についても、
心血管疾患のトータルなリスクの低下については、
ほぼほぼ確実と言って良い知見ですが、
たとえば不整脈のリスクを個別に見た場合には、
明確とは言えないものも多くあります。

2021年のCirculation誌に掲載されたメタ解析の論文では、
オメガ3系脂肪酸の、
高用量のサプリメントとしての使用により、
心房細動の発症リスクの増加が認められて、
かなりのインパクトを持って受け止められました。
https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/CIRCULATIONAHA.121.055654

オメガ3系脂肪酸を多く摂ることで、
本当に心房細動のリスクになるのでしょうか?

今回の研究では、
これまでの17の疫学データに含まれる、
トータル54799名の臨床データをまとめて解析することで、
血液中のEPA、DHAなどのオメガ3系脂肪酸の濃度と、
心房細動の発症リスクとの関連を比較検証しています。

中間値で13.3年の観察の結果として、
血液のオメガ3系脂肪酸濃度の上昇と、
心房細動リスクの増加との間には、
明確な関連は認められませんでした。
そして、一部のオメガ3系脂肪酸濃度が高いことは、
心房細動リスクの有意な低下と結びついていました。

このように、
今回の検証では、
オメガ3系脂肪酸を食事から多く摂ることは、
心房細動のリスクをむしろ抑制する可能性が認められました。

今回の結果をどのように考えれば良いのでしょうか?

2021年のメタ解析は、
オメガ3系脂肪酸をサプリメントとして使用した場合のデータで、
その場合は現状明確な有効性が確認されておらず、
心房細動の不整脈については、
むしろリスクの増加に繋がる可能性もあるのですが、
通常の食事で摂る場合には、
意識的に充分な量を摂ることで、
心房細動のリスクには繋がらず、
むしろリスク低下に繋がる可能性もあるのです。

これは他の微量元素などでも指摘される事項ですが、
食事から過不足なく摂ることと、
サプリメントとして補充することとは、
別物として考える必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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