エアロゾル粒子感染に与える年齢の影響 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
PNAS誌に2023年5月22日ウェブ掲載された、
飛沫による感染リスクに与える年齢の影響についての論文です。
飛沫感染やエアロゾル感染(飛沫核感染)という言葉が、
一般にも聞かれるようになったのは、
言うまでもなく新型コロナウイルス感染以降のことです。
新型コロナウイルス感染症の感染力は非常に強く、
正確には不明の点が多くありますが、
一部の変異株においては、
よりその感染力は増していると想定されています。
その感染の主体は飛沫感染です。
つまり、ウイルス粒子を含む水や粘液の塊が、
鼻や口の粘膜から侵入して感染を引き起こすのです。
その飛沫は大きさが100μmを超えるような大きな物から、
15μmより小さなものまで様々ですが、
空気中に浮遊した段階からその大きさは3分の1くらいに縮小します。
大きな飛沫は遠くまで飛ぶ一方で、
すぐに落下して下に落ちてしまいますが、
小さな飛沫はそのまま空気中を長期間漂うという性質があります。
これがエアロゾルです。
屋外での感染は主に大きな飛沫によるもので、
口から弾丸のように放たれた飛沫が、
そのまま相手の口や鼻に飛び込むことにより感染が起こります。
「唾を飛ばしてまくし立てる」というような言い方がありますが、
お酒を飲みながら大声で喋っているような人では、
口から飛ぶ唾が見えますよね。
あれが大きな飛沫です。
一方で小さな飛沫は直接弾丸のように相手に当たるということではなく、
そのまま周囲に空気中にエアロゾルとして漂って、
それが相手の呼吸により鼻や喉から吸い込まれます。
室内ではこのエアロゾル感染が主体となり、
換気が不十分な状態であれば、
その空気中の濃度が高まるので、
感染のリスクが増加するのです。
このエアロゾルの排出量は、
運動により増加することが知られています。
屋内のエクササイズやジムなどで、
新型コロナの集団感染が発生したのはこのためで、
これまでの研究により激しい運動により、
最大でエアロゾルの排出量は安静時の100倍を超え、
感染リスクも10倍を超えると試算されています。
それでは、
エアロゾルの排出量と年齢や性別、体格との間には、
どのような関連があるのでしょうか?
今回の研究では、
年齢が20から39歳の40名と、
60から76歳の40名の被験者に、
安静時と運動(エルゴメーター)の個々の条件で、
呼気から喀出されるエアロゾル量を測定し、
その比較を施行しています。
その結果、
20から39歳と比較して60から76歳の高齢者では、
エアロゾルの排出量は安静時で2.7倍、
激しい運動時でも2.1倍増加していました。
一方で性別やBMIで評価された体格は、
こうした明確な違いを認めていませんでした。
つまり、年齢により当然換気量は低下しますが、
それを上回るエアロゾル粒子濃度の増加があって、
結果的にはより多くのエアロゾル粒子を放出している、
という結果になっているのです。
新型コロナに関わらず、
エアロゾル感染は高齢者からの感染リスクが大きい、
という知見は、
勿論それが不合理な差別に繋がってはいけませんが、
感染拡大抑止の面から、
今後科学的に考慮する必要がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
PNAS誌に2023年5月22日ウェブ掲載された、
飛沫による感染リスクに与える年齢の影響についての論文です。
飛沫感染やエアロゾル感染(飛沫核感染)という言葉が、
一般にも聞かれるようになったのは、
言うまでもなく新型コロナウイルス感染以降のことです。
新型コロナウイルス感染症の感染力は非常に強く、
正確には不明の点が多くありますが、
一部の変異株においては、
よりその感染力は増していると想定されています。
その感染の主体は飛沫感染です。
つまり、ウイルス粒子を含む水や粘液の塊が、
鼻や口の粘膜から侵入して感染を引き起こすのです。
その飛沫は大きさが100μmを超えるような大きな物から、
15μmより小さなものまで様々ですが、
空気中に浮遊した段階からその大きさは3分の1くらいに縮小します。
大きな飛沫は遠くまで飛ぶ一方で、
すぐに落下して下に落ちてしまいますが、
小さな飛沫はそのまま空気中を長期間漂うという性質があります。
これがエアロゾルです。
屋外での感染は主に大きな飛沫によるもので、
口から弾丸のように放たれた飛沫が、
そのまま相手の口や鼻に飛び込むことにより感染が起こります。
「唾を飛ばしてまくし立てる」というような言い方がありますが、
お酒を飲みながら大声で喋っているような人では、
口から飛ぶ唾が見えますよね。
あれが大きな飛沫です。
一方で小さな飛沫は直接弾丸のように相手に当たるということではなく、
そのまま周囲に空気中にエアロゾルとして漂って、
それが相手の呼吸により鼻や喉から吸い込まれます。
室内ではこのエアロゾル感染が主体となり、
換気が不十分な状態であれば、
その空気中の濃度が高まるので、
感染のリスクが増加するのです。
このエアロゾルの排出量は、
運動により増加することが知られています。
屋内のエクササイズやジムなどで、
新型コロナの集団感染が発生したのはこのためで、
これまでの研究により激しい運動により、
最大でエアロゾルの排出量は安静時の100倍を超え、
感染リスクも10倍を超えると試算されています。
それでは、
エアロゾルの排出量と年齢や性別、体格との間には、
どのような関連があるのでしょうか?
今回の研究では、
年齢が20から39歳の40名と、
60から76歳の40名の被験者に、
安静時と運動(エルゴメーター)の個々の条件で、
呼気から喀出されるエアロゾル量を測定し、
その比較を施行しています。
その結果、
20から39歳と比較して60から76歳の高齢者では、
エアロゾルの排出量は安静時で2.7倍、
激しい運動時でも2.1倍増加していました。
一方で性別やBMIで評価された体格は、
こうした明確な違いを認めていませんでした。
つまり、年齢により当然換気量は低下しますが、
それを上回るエアロゾル粒子濃度の増加があって、
結果的にはより多くのエアロゾル粒子を放出している、
という結果になっているのです。
新型コロナに関わらず、
エアロゾル感染は高齢者からの感染リスクが大きい、
という知見は、
勿論それが不合理な差別に繋がってはいけませんが、
感染拡大抑止の面から、
今後科学的に考慮する必要がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。