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女性ホルモン補充療法と認知症リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は訪問診療などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
女性ホルモン補充療法と認知症リスク.jpg
British Medical Journal誌に、
2023年6月28日にウェブ掲載された、
女性ホルモン補充療法と認知症リスクについての論文です。

認知症には男性より女性に多いという性差があり、
これは男性より女性が長生きであることと無関係ではありませんが、
それだけでは説明出来ない現象であると考えられています。

女性ホルモンであるエストロゲンには、
神経細胞を保護するような働きがある一方で、
神経細胞に障害を与えるような作用を持つ、
という報告もあり、その影響は複雑です。

更年期症候群においては、
その自律神経症状などを緩和する目的で、
女性ホルモン製剤がホルモン補充療法として使用されます。

このホルモン補充療法には血栓症などのリスクが、
あることは知られていますが、
臨床研究のデータにおいて、
認知症リスクを高めることを示唆する結果が報告されて、
その真偽が問題となっています。
ただ、そのデータは65歳以上の女性を対象としたもので、
実際にホルモン補充療法が開始されることの多い、
閉経前後の使用においても、
そうしたリスクが存在するのかどうかは分かっていません。

そこで今回の研究では、
国民総背番号制を敷いているデンマークにおいて、
年齢が50から60歳の女性で認知症がなく、
血栓症などのホルモン補充療法の禁忌もない全ての事例から、
その後認知症を発症した5589名と、
年齢をマッチングさせた55890名のコントロールを抽出し、
ホルモン補充療法の認知症発症に与える影響を検証しています。

その結果、
ホルモン補充療法を使用しない場合と比較して、
エストロゲンとプロゲステロン併用による治療を施行することは、
トータルな認知症のリスクを、
1.24倍(95%CI:1.17から1.33)有意に増加させていました。
これをホルモン補充療法の継続期間で見ると、
治療期間が1年以内の場合には、
認知症リスクは1.21倍(95%CI:1.09から1.35)であったのに対して、
12年以上の使用では1.74倍(95%CI:1.45から2.10)と、
よりリスクの増加が認められました。

このように、
今回の大規模な検証においても、
女性ホルモン補充療法の施行と認知症リスクとの間には、
それほど著明とは言えないものの、
一定の関連が認められました。

今後この問題はより検証される必要がありますが、
特に高齢での女性ホルモン補充療法の施行においては、
認知機能のチェックなど、
より慎重な対応が必要となりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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