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「1秒先の彼」(「1秒先の彼女」の日本版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
1 秒先の彼.jpg
日本でも2021年に公開された台湾映画「1秒先の彼女」が、
男女を入れ替えるという奇策のクドカンの台本により、
「1秒先の彼」としてリメイクされました。

オリジナルは映画館で観ています。
ノスタルジックで心に残る良い映画でした。
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2021-08-07

あれを翻案するのか、芸がないな、
というのが企画を聞いた時の第一印象でした。
クドカンなら充分オリジナルに匹敵するラブストーリーを、
オリジナルで描ける筈だと思ったからです。

ただ、実際に観てみると、
これはこれでありかな、というように感じました。

原作のふんわりしてノスタルジックな雰囲気を、
結構上手く再現しているな、と感じましたし、
オリジナルを日本で鑑賞した場合の違和感を、
結構キレイに掬い取っているな、という感じがしたからです。

原作は女性に男性が運命的に執着する、
というお話なので、
ちょっとストーカー的なんですね。
それが原作の特徴でもあるので、
決して悪い訳ではないのですが、
日本公開時は拒否感を持った人も少なくなかったようです。

それが、男女を反転させることで、
ストーカー色がほぼなくなっているんですね。
なるほど巧みだと感心しました。
またオリジナルでは擬人化したヤモリとの対話があり、
このコメディ的な部分も違和感があったのですが、
今回それをラジオのDJとの対話にして、
日本ドラマ定番の趣向で違和感を消したのもさすがでした。

その一方でおかしくなってしまった部分もあって、
原作では男性がバス運転手なので、
彼だけに時間が止まるという奇跡が起こる、
ということで整合性があるのですが、
その設定を女性でカメラマンにしてしまったので、
バス運転手も止まった時間の外にいる、
ということになってしまい、
あまり意味もなく複数の人間が時間の外にいる、
というおかしなことになってしまいました。

これ、時間の外にいる、というのは、
要するに死んでいる、ということなんですね。
原作のニュアンスはそうしたことだと思うのです。
でも、クドカンの今回の台本では、
そうなってはおらず、
主人公の失踪した父親も、
生きている、という設定になっているので、
原作の生死の狭間を彷徨うような気分が、
消滅してしまったという残念さがありました。

総じて、かなり良い気分で観ることの出来た映画で、
こうした翻案もありだな、というように感じたのですが、
原作の独特の死生観のようなものが失われてしまったことは、
ちょっと残念でもあり、
その意味でオリジナルとは別物として、
楽しむ必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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