SSブログ

卵アレルギーに与える母体の卵摂取の影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は事務作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
卵アレルギーの早期介入.jpg
JAMA Network Open誌に、
2023年7月10日付でウェブ掲載された、
卵アレルギーに与える母体の卵摂取の影響についての論文です。

日本のアレルギー診療で有名な相模原病院などによる臨床研究です。

食物アレルギーは近年急増しているアレルギー疾患です。
欧米では牛乳、卵、小麦、ピーナツが食物アレルギーの主要なアレルゲンで、
上記論文の記載では、
小児のおよそ10%は食物アレルギーを持っていると推計されています。

一度食物アレルギーを発症しても、
そのアレルゲンを極少量ずつ投与すると、
徐々に耐性が獲得されて、
そのアレルゲンを含む食品を、
食べられるようになることがあります。

乳児期の早期、
たとえば生後3から4か月くらいの時期に、
そうしたアレルゲンに慣れることにより、
将来の食物アレルギーを予防できるのでは、
という考え方があり、
実際に複数の臨床試験で、
一定の有効性が報告されています。

今回の対象疾患である卵アレルギーについても、
生後3から6か月の早期で卵を少量から摂取することにより、
卵アレルギーが一定レベル予防された、
という報告があります。

ただ、こうした臨床試験のデータから明らかになった知見として、
生後3か月でまだ卵を食べていないのに、
既に卵アレルギーを発症している、
というケースが少なからずあることが分かりました。

これは母親が摂取した卵が、
母乳を介して新生児に影響を与えた可能性を示唆しています。

それでは、
出生後すぐの時点で母親が卵を食べることが、
新生児にどのような影響を与えるのでしょうか?

今回の臨床研究では、
日本の複数の専門施設において、
アレルギー素因のある両親から生まれた、
380名の新生児をくじ引きで2つの群に分けると、
一方は出産後5日間毎日1個の卵を母親が摂取して母乳を与え、
もう一方は卵を5日間制限して母乳を与え、
生後12か月の時点での卵アレルギーの発症頻度を比較検証しています。

その結果、
生後12か月の時点での卵アレルギーは、
卵接種群の9.3%、卵制限群の7.6%に認められ、
卵摂取で多いという傾向は認められましたが、
有意な差は認められませんでした。

生後すぐから、場合によっては生まれる前の環境すら、
議論の対象となっている食物アレルギーですが、
この問題はまだ多くの検証が必要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0)