急性副鼻腔炎に対する抗菌剤治療の有効性 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2023年7月25日ウェブ掲載された、
小児の急性副鼻腔炎に対する、
抗菌剤治療の有効性についての論文です。
小児の感染症のうち、
抗菌剤による治療が行われている疾患は、
溶連菌による急性扁桃炎と尿路感染症、
そして急性副鼻腔炎や細菌性肺炎などがその代表です。
急性副鼻腔炎、所謂「蓄膿」は、
確かに肺炎球菌などの細菌感染が原因となることもありますが、
ウイルス感染が原因となっていることも多く、
その場合には抗菌剤の使用は意味がありません。
有効性のない抗菌剤の使用は、
耐性菌を誘導することや有害事象の存在などにより、
むしろ有害であると言うのが今の考え方ですから、
抗菌剤治療が有効な副鼻腔炎と、
効果のあまり期待出来ない副鼻腔炎とを、
臨床的に判別することが重要となります。
現状の考え方としては、
副鼻腔からの分泌液や鼻汁の細菌培養を施行して、
肺炎球菌などが検出されれば抗菌剤を使用する、
という方法と、
もっと簡便に膿性と思われるような鼻汁が認められれば、
細菌感染の可能性が高いとして、
抗菌剤を使用するという方法とがあります。
それでは、実際にどちらかの方法で抗菌剤の適応を決め、
施行することにどの程度の妥当性があるのでしょうか?
今回の臨床研究ではアメリカの複数施設において、
年齢が2から11歳で臨床的に急性副鼻腔炎と診断された、
トータル515名の小児患者に鼻汁の細菌培養検査を施行。
肺炎球菌,インフルエンザ桿菌、モラクセラ・カタラーリスの、
3種類の細菌が検出されたかどうかと、
黄色もしくは緑色の鼻汁が認められた場合に、
抗菌剤を使用する場合と偽薬を使用する場合に割り付けて、
その後の症状改善効果を比較検証しています。
抗菌剤はペニシリン系の薬剤が10日間使用されています。
その結果、
細菌培養が陽性であった場合に抗菌剤を使用することは、
偽薬の使用と比較して、
症状を有意に改善していましたが、
黄色もしくは緑色の鼻汁を指標として抗菌剤を使用しても、
偽薬と比較して有意な改善は認められませんでした。
ただ、細菌培養陽性で抗菌剤を使用しても、
症状の改善効果は軽微なものに留まっていました。
このように、
小児の急性副鼻腔炎で抗菌剤を使用する場合には、
臨床的な鼻汁の所見は当てにならず、
必ず細菌培養を施行して適切な抗菌剤を使用することが、
抗菌剤の適正使用に繋がると考えて良いようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2023年7月25日ウェブ掲載された、
小児の急性副鼻腔炎に対する、
抗菌剤治療の有効性についての論文です。
小児の感染症のうち、
抗菌剤による治療が行われている疾患は、
溶連菌による急性扁桃炎と尿路感染症、
そして急性副鼻腔炎や細菌性肺炎などがその代表です。
急性副鼻腔炎、所謂「蓄膿」は、
確かに肺炎球菌などの細菌感染が原因となることもありますが、
ウイルス感染が原因となっていることも多く、
その場合には抗菌剤の使用は意味がありません。
有効性のない抗菌剤の使用は、
耐性菌を誘導することや有害事象の存在などにより、
むしろ有害であると言うのが今の考え方ですから、
抗菌剤治療が有効な副鼻腔炎と、
効果のあまり期待出来ない副鼻腔炎とを、
臨床的に判別することが重要となります。
現状の考え方としては、
副鼻腔からの分泌液や鼻汁の細菌培養を施行して、
肺炎球菌などが検出されれば抗菌剤を使用する、
という方法と、
もっと簡便に膿性と思われるような鼻汁が認められれば、
細菌感染の可能性が高いとして、
抗菌剤を使用するという方法とがあります。
それでは、実際にどちらかの方法で抗菌剤の適応を決め、
施行することにどの程度の妥当性があるのでしょうか?
今回の臨床研究ではアメリカの複数施設において、
年齢が2から11歳で臨床的に急性副鼻腔炎と診断された、
トータル515名の小児患者に鼻汁の細菌培養検査を施行。
肺炎球菌,インフルエンザ桿菌、モラクセラ・カタラーリスの、
3種類の細菌が検出されたかどうかと、
黄色もしくは緑色の鼻汁が認められた場合に、
抗菌剤を使用する場合と偽薬を使用する場合に割り付けて、
その後の症状改善効果を比較検証しています。
抗菌剤はペニシリン系の薬剤が10日間使用されています。
その結果、
細菌培養が陽性であった場合に抗菌剤を使用することは、
偽薬の使用と比較して、
症状を有意に改善していましたが、
黄色もしくは緑色の鼻汁を指標として抗菌剤を使用しても、
偽薬と比較して有意な改善は認められませんでした。
ただ、細菌培養陽性で抗菌剤を使用しても、
症状の改善効果は軽微なものに留まっていました。
このように、
小児の急性副鼻腔炎で抗菌剤を使用する場合には、
臨床的な鼻汁の所見は当てにならず、
必ず細菌培養を施行して適切な抗菌剤を使用することが、
抗菌剤の適正使用に繋がると考えて良いようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。