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スタチンの肝臓病予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンと肝臓病予防.jpg
JAMA Network Open誌に、
2023年6月26日ウェブ掲載された、
スタチンの肝臓病予防効果についての論文です。

スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
LDLコレステロールを強力に低下させる作用を持ち、
また抗炎症作用など付随する作用も併せ持って、
心血管疾患の再発予防薬としての有効性が確立している薬です。

その一方でその線維化を抑制するような作用や抗炎症作用などは、
肝臓病の進行予防にも有用なのではないかという見解があり、
実際に複数の疫学データにおいて、
慢性肝臓病や肝臓癌の予防効果が報告されています。

たとえば、以前ブログでも紹介した、
2023年1つのメタ解析の論文では、
スタチンの使用により肝臓癌のリスクが、
48%有意に低下していました。
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-02-15

今回のデータは遺伝情報を含む有名な大規模健康データである、
UKバイオバンクやトライネティックスなどの複数の医療データを解析したもので、
トータルの解析人数は1785491名という大規模なものです。

そのうちUKバイオバンクの205057例の解析では、
スタチンの使用者は未使用者と比較して、
肝臓病の発症リスクが15%(95%CI:0.78から0.92)、
肝臓病による死亡リスクが28%(95%CI:0.59から0.88)、
肝臓癌の発症リスクが42%(95%CI:0.35から0.96)、
それぞれ有意に低下していました。

またトライネティックスの1568794例の解析では、
スタチン使用者は未使用者と比較して、
肝臓癌の発症リスクが74%(95%CI:0.22から0.31)、
有意に低下していました。

このスタチンの肝臓病に対する有効性は、
サブ解析では男性、糖尿病患者、
特定の肝臓病に関連する遺伝子変異保有者で、
より高いものとなっていました。

このように、今回の大規模な解析においても、
スタチンの肝臓病、特に肝臓癌の予防効果は、
ほぼ確実なものと考えられ、
今後のそのメカニズムの解析などを含め、
予防介入の適応や対象者の絞り込みなど、
より具体的な検証が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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