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NODA・MAP「兎、波を走る」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
兎、波を走る.jpg
NODA・MAPの本公演として、
野田秀樹さんの新作「兎、波を走る」が今上演されています。

2021年の「フェイクスピア」が非常に素晴らしい作品で、
とても感銘を受けたのですが、
その時と同じ髙橋一生さんの主演で、
今回もとても楽しみに出掛けました。

結果は、うーん、今回は失敗かな、
というように感じました。

「桜の園」ならぬ閉演間近の遊園地を舞台に、
不思議の国のアリスをモチーフにした、
おもちゃ箱をひっくり返したような物語の展開する前半は、
初期の遊眠社を彷彿とさせる楽しさで、
懐かしい思いで観ていたのですが、
後半ある社会的事件の話であったことが明らかになると、
かなり重いドラマが続き、
前半の軽快さは完全に吹き飛んでしまいました。
その後は同じ話を延々と繰り返すような感じになり、
そのままモヤモヤしたまま救いのないラストを迎えて終わりました。

もとよりこのテーマを扱って、
明るいラストにはなりようがないのですが、
良い時の野田秀樹さんの劇作では、
前半のお遊びに過ぎなかったようなディテールや言葉遊びが、
後半になって別個の意味を持って立ち上がり、
前半のディテールはそのままに、
全く別の風景が浮かび上がるのですが、
今回の作品では後半になるともう前半とは別の世界の話になって、
前半のディテールもむしろ邪魔な感じしかありませんでした。
この辺りのバランスに、
今回は問題があったような気がします。

それから決めの台詞の1つとして、
「もうそう」と「もうそうするしか」という言葉遊びがあるのですが、
これ「小指の思い出」と一緒ですよね。
ちょっと芸が無さすぎると感じましたし、
「不思議の国」が「かの国」になるのも、
あまりに捻りがなくてちょっと脱力する感がありました。

個人的には野田さんの劇作は、
その軽さや幼児性に特徴があるので、
勿論社会的な事件や重いテーマを扱って悪いということはないのですが、
今回のテーマは野田戯曲の作劇対象としては重すぎて、
対応が難しかったように感じました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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