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加齢によるタウリン欠乏の健康影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
タウリンの健康効果.jpg
Science誌に2023年6月9日付で掲載された、
タウリンの健康効果についての論文です。

最近のサプリメント関連の論文としては、
最も注目を集めている論文です。

タウリンは日本では栄養ドリンクに含まれている成分として、
一時的非常に宣伝されていました。
疲れを取る成分であるとか、
二日酔いに効く、肝臓を保護する、
というような言い方もされています。

ただ、それは一般的な指摘であって、
それほど医学的な根拠のあるものではありませんでした。

タウリンはアミノ酸のシステインが、
酵素により分解されて産生される物質で、
アミノ酸様物質のような表現もされています。
タウリンは体内でシステインから合成される一方で、
魚介類や肉などに含まれていて、
食事でも摂取されています。
イカ、タコ、鯵などの魚介、
牡蠣、アサリなどの貝類が、
タウリンを多く含む食品です。

タウリンの血液濃度が加齢と共に低下し、
それが骨格筋、目、中枢神経系などの機能異常と、
関連していることを示唆するデータは報告されていましたが、
実際にタウリンの補充により、
そうした障害が予防可能であるか、
というような点については、
これまであまり明確な知見が存在していませんでした。

今回の研究では、
主にネズミとサルを使用した動物実験において、
タウリンを比較的大量に摂取させることを継続し、
その影響を検証しています。

その結果、ネズミの実験においては、
タウリンの摂取により寿命が延長し、
骨密度の増加や筋力の増加など、
老化に伴う変化を逆転させる、
アンチエイジングの効果が確認されました。
このメカニズムは老化に伴う細胞のミトコンドリア機能不全を、
改善している可能性も示唆されました。

サルの実験においては、
寿命の延長が確認されるほどの、
長期のデータは得られていませんが、
それでも老化に関わるマーカーの低下や、
骨密度の増加、体脂肪の減少などの効果が認められました。

このように、
特にネズミの実験で得られた効果はかなり画期的なもので、
大量とは言えサプリメントでも使用されている、
人体に有害性は確認されていない物質の摂取により、
明確な寿命延長効果やアンチエイジング効果が認められています。

ただ、勿論これは動物実験で、
人間に同様の効果が確認されたものではありません。

しかし、かなり期待を持たせる結果であることは間違いがなく、
これまでにも迷走した「奇跡のサプリメント」は多くありましたから、
あまり期待を過度に膨らませることなく、
今後の研究の蓄積を待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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