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N95マスクの心肺機能に与える影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
N95マスクの心肺機能に与える影響.jpg
JAMA Network Open誌に、
2023年6月9日付で掲載された、
医療用マスク長期装着の健康影響についての論文です。

新型コロナの流行以降、
他人と接触する時にはマスクを着用する、
という習慣が社会的に定着しました。

2023年5月8日の5類感染症への移行後は、
マスクを着けることは個人の自由とされ、
医療機関や満員電車などを除けば、
特に推奨もされない、という世の中になりましたが、
それでも外出時などはマスクをされている人が、
まだ結構多いのが実際です。

性能の高いマスクを適切に装着することは、
感染の拡大を抑制する効果があり、
感染予防効果も一定レベルはあると報告されています。

ただ、その一方で高性能のマスクを装着することで、
息苦しさや動悸などを感じる人も多く、
気温や湿度の高い時期には、
熱中症のリスクを増加させる可能性も指摘されています。

ただ、実際にマスクを装着した際の心肺機能への影響を、
正確に検証したようなデータはあまり存在していません。

今回の研究は中国において、
30人の健康なボランティアを、
エネルギー摂取や代謝量を測定可能な検査室で、
14時間連続でN95マスクを装着した場合と、
装着しない場合とにくじ引きで分け、
その経過を比較検証しているものです。

その結果、
マスクの装着により、
1時間以内に血液の酸素飽和度は低下し、
2時間後には心拍数が増加して、
その状態はマスクを外すまで持続しました。

マスク装着中に軽い強度の運動を行うと、
心拍数や血圧の上昇はより顕著なものとなりました。

交感神経系のホルモンであるエピネフリンやノルエピネフリンは、
マスク群で増加していました。

このように、
数時間の超える高性能のマスクの装着により、
心肺には負荷が掛かり、
交感神経系の緊張から、
血圧や脈拍の上昇を来すことが確認されました。

これは健康成人であれば問題にならないレベルのものですが、
小さなお子さんや高齢者、
また心肺系の病気のある方では、
基礎疾患の悪化など、
健康リスクが高まる可能性も示唆されます。

今後またマスクの装着が、
不特定多数で必要となるような場合には、
こうしたデータも参考にしつつ、
対象の絞り込みを行う必要があるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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