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中年期以降の血糖コントロールと認知症リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
高齢者の血糖コントロールと認知症リスク.jpg
JAMA Neurology誌に、
2023年4月17日ウェブ掲載された、
2型糖尿病の血糖コントロールと認知症リスクについての論文です。

糖尿病は認知症のリスクの1つで、
血糖コントロールが不良であることが、
認知症のリスクを高めることも、
ほぼ実証されている事実です。

ただ、それでは2型糖尿病の患者さんが、
どのくらいの血糖コントロールを維持していると、
認知症のリスクが予防可能なのか、
というような具体的な事項については、
まだあまり明確なことが分かっていません。

3大合併症と呼ばれる糖尿病性網膜症、腎症、神経症の予防には、
血糖コントロールの指標であるHbA1cを、
7.5%未満にすることが有効であることや、
心血管疾患の予防のためには、
食後血糖を含めて、
極力血糖値を正常な状態に近付けることが有効であることは、
これまでの多くの精度の高い疫学データで、
ほぼ実証されている知見ですが、
認知症の予防はそれとはまた別個に考える必要があるからです。

今回の研究はアメリカの大手健康保険会社である、
カイザー・パーマネント社の医療データを活用して、
50歳以上の2型糖尿病の患者さん、
トータル253211名の血糖コントロールの状態と、
その後の認知症の発症との関連を検証しています。
観察期間の平均は5.9年で最低でも3年以上の観察期間に、
複数回のHbA1cが測定されています。

その結果、
HbA1cの測定値の半分以上が、
9%以上10%未満であると、
半数未満である場合と比較して、
認知症を発症するリスクが1.31倍(95%CI:1.15から1.51)、
同様に10%以上であると、
認知症を発症するリスクが1.74倍(95%CI:1.62から1.86)、
それぞれ有意に増加していました。
その一方でHbA1cが8%未満においては、
認知症リスクの明確な増加は認められませんでした。

今回の検証からは、
糖尿病コントロールが明確に認知症発症リスクとなるのは、
HbA1cが9%以上の高値が持続した場合で、
特に高齢者の血糖管理においては、
HbA1cを8%未満にするという現行の指標に、
一定の妥当性があることを示唆する結果となっていました。

血糖コントロールの目標は、
一律に決定する性質のものではなく、
患者さん個々の状態や年齢、
何を目的として治療をするのかなどを総合的に検討した上で、
個別に決定する必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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