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心不全を伴う糖尿病へのメトホルミンとSU剤の影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談に都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
メトホルミンとSU剤の心不全への有効性.jpg
J Am Coll Cardiol.誌に2021年12月8日ウェブ掲載された、
糖尿病治療薬を心不全患者に使用した際の、
心臓への影響を検証した論文です。

糖尿病は生活習慣病の代表で、
心筋梗塞や脳卒中、心不全など多くの病気のリスクを高めます。

糖尿病の治療には多くの薬剤が使用されていますが、
こうした合併症のない場合とある場合では、
その使い方にも自ずと違いがある筈です。

たとえば心不全を合併した糖尿病の場合、
チアゾリジン系の治療薬や一部のDPP4阻害剤では、
その使用により心不全の悪化のリスクが高まった、
とするデータが報告されています。
その一方で最近使用頻度の多いSGLT2阻害剤という薬剤は、
心不全悪化のリスクを抑制すると想定されています。

ただ、それ以外に使用頻度の高い糖尿病治療薬に、
メトホルミンとSU剤がありますが、
その2種類の薬剤が心不全に与える影響については、
これまであまり精度の高いデータがありませんでした。

そこで今回の研究では、
アメリカの高齢者医療保険のデータから、
心不全で入院した糖尿病患者で、
入院の時点ではメトホルミンもSU剤もいずれも使用していない、
トータル5852名の患者の経過を分析し、
退院から90日以内のメトホルミンもしくはSU剤の使用が、
その後1年の心不全悪化による入院もしくは死亡のリスクに、
与えた影響を比較検証しています。

対象者のうち、
454名が新規にメトホルミンの使用を開始し、
504名が新規にSU剤の使用を開始しました。
メトホルミンの使用により、
その後の心不全による死亡のリスクは19%(95%CI:0.67から0.98)、
有意に低下していました。
更に駆出率が40%を超える、
比較的軽症の事例に絞って解析すると、
心不全による死亡のリスクが32%(95%CI:0.52から0.90)、
心不全による入院のリスクも42%(95%CI:0.40から0.85)、
それぞれ有意に低下していました。

一方でSU剤開始群では、
その後の心不全による死亡のリスクが24%(95%CI:1.00から1.48)、
こちらは有意に上昇していました。
心不全による入院のリスクについては有意な差は認められませんでした。

このように、
軽症の心不全ではメトホルミンの使用は、
心不全の予後にも良い影響を与える可能性がある一方で、
SU剤の使用は心不全のリスクに、
悪影響を与える可能性が示唆されました。

最近色々な意味で、
その使用に疑義が呈されることの多いSU剤ですが、
顕性の心不全のある糖尿病患者においては、
その使用を慎重に考える必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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断続的断食の健康効果(2021年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
間欠的絶食療法の有効性.jpg
JAMA Network Open誌に、
2021年12月17日ウェブ掲載された、
断続的絶食法の有効性についてのメタ解析の論文です。

ダイエット法には多くの種類がありますが、
最近国内外を問わず注目されているダイエット法の1つが、
断続的断食法(intermittent fasting)です。

これは一定のサイクルで完全な絶食、
もしくは超低カロリー食を繰り返すことです。

一定時間の絶食をすることにより、
身体は飢餓状態となり、
代謝に一種の転換が起こるのです。
それが体重を減少させるのみならず、
身体のストレス耐性を高め、
炎症を抑制し、身体の酸化を抑えるなど、
多くの健康への良い影響をもたらすというのが、
断続的断食の優れているとされる点で、
これまでに多くの臨床試験も施行され、
一定の有効性を示唆させる結果が得られています。

ただ、断続的断食と一口に言っても、
その方法は様々で、どういう方法が最も優れているのか、
という点についての明確な指針は存在していません。

そこで今回の研究では、
これまでの介入試験と呼ばれる精度の高い臨床試験の結果を、
まとめて解析することで、
この問題の検証を行なっています。

対象となっている断続的断食法は、
次の4種類です。
➀1日おきに完全な絶食を繰り返すというもの。
②週に3から5日というペースで、通常の40%以下、もしくは600キロカロリー以下の、超低カロリー食を繰り返すというもの。
③5:2ダイエットと呼ばれているもので、週のうち2日のみ、超低カロリー食に置き換えるというもの。
④1日のうち12から24時間は食事を摂らないというもの。24時間というのは、1日1食のみということですね。

これまでの130の介入試験の結果をまとめて解析したところ、
多くの断続的断食法には、
体重減少や内臓脂肪の減少、血圧の低下などの、
健康上有益な効果が確認されました。
特に信頼性の高い結果が得られたのは、
方法の②の超低カロリ-と普通食を繰り返すやり方で、
この方法を1から2ヶ月施行することで、
明確な体重減少の有効性が確認されました。

今後この方法がより統一されて検証されるようになれば、
医学的ダイエット法のスタンダードに、
なる可能性も秘めているように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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HDLコレステロールと心血管疾患死亡リスクとの関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
HDLコレステロールと予後.jpg
the American Journal of Cardiology誌に、
2022年1月14日ウェブ掲載された、
血液のHDLコレステロール濃度と、
心血管疾患による死亡リスクとの関連を検証した論文です。

血液のHDLコレステロールは、
組織からコレステロールを引きはがすような役割があり、
血液中のHDLコレステロール濃度が低いことが、
心筋梗塞などの発症リスクを増加させることは、
多くの精度の高い疫学データで確認された事実です。

HDLコレステロールが、
「善玉コレステロール」のような名称で、
呼ばれているのはそのためです。

しかし、HDLコレステロールを増加させるような治療は、
これまでに成功したものはありません。
また、最近の住民データなどの解析では、
高HDL血症が死亡リスクの増加に繋がっている、
ということを示唆する結果が複数報告されています。
HDLコレステロールには性差があり、
女性は女性ホルモンの作用などにより、
男性より高いHDLコレステロール濃度を示す、
というデータがあります。
HDLコレステロールが遺伝的に非常に高値であることが、
「長寿の家系」として報告されていますが、
遺伝子の関与も実際には単一のものではなく、
その心血管疾患予防効果にも差があることも指摘されています。

このように、
HDLコレステロールが低いことが、
心血管疾患のリスクであることは間違いがありませんが、
高いことがそのリスクを常に下げるものであるのかについては、
それほど明確なデータがある、
という訳ではないのです。

そこで今回の研究では、
これまでにも何度もご紹介している、
イギリスのUKバイオバンクという、
遺伝情報と臨床情報を集積した大規模医療データを活用して、
この問題の検証を行なっています。

登録の時点で虚血性心疾患のない、
トータル415416名を中間値で9年間観察したところ、
心血管疾患リスク因子や年齢性別などで補正した結果として、
HDLコレステロール濃度が80mg/dLを超えると、
40から60mg/dLの基準値と比較して、
総死亡のリスクが1.11倍(95%CI:1.03から1.20)、
心血管疾患による死亡リスクが1.24倍(95%CI:1.05から1.46)と、
それぞれ有意に増加していました。

これを男女に分けて検証したところ、
男性では同様の解析において、
HDLコレステロール濃度が80mg/dLを超えると、
総死亡のリスクが1.79倍(95%CI:1.59から2.02)、
心血管疾患による死亡リスクが1.92倍(95%CI:1.52から2.42)、
よりそのリスクは高くなっていましたが、
女性では総死亡のリスクが0.97倍(95%CI:0.88から1.06)、
心血管疾患による死亡リスクが1.04倍(95%CI:0.83から1.31)、
とリスクの有意な増加は認められませんでした。

ちなみに、
HDLコレステロールが30mg/dL以下では、
総死亡のリスクは2.40倍(95%CI:2.15から2.68)、
心血管疾患による死亡リスクが3.09倍(95%CI:2.54から3.75)、
と、明らかに強いリスク増加が認められ、
男女比では女性がより高くなっていました。
HDLコレステロールが低いことが問題であるのは間違いがなく、
議論の対象はHDLコレステロールが高い場合なのです。

今回の検証では、
HDLコレステロールが80mg/dL以上の男性では、
40から60mg/dLと比較して総死亡と心血管疾患による死亡のいずれもが、
リスクの増加を示していました。

どうやらHDLコレステロールの高値は、
それだけで良いというような所見ではなく、
性差や基礎疾患の有無などとも併せて、
トータルに検証するべき所見であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
スパイダーマンノーウェイホーム.jpg
マーベルのシリーズの1つである、
スパイダーマンを主人公にした新作が、
今ロードショー公開されています。

スパイダーマンの映画は何度かリニューアルされているのですが、
過去のシリーズを「別の宇宙」の話ということにして、
スパイダーマンの正体を巡る騒動から、
ドクター・ストレンジを媒介にして、
別の時空の扉が開いてしまい、
過去作の主役や悪役が、
今の世界に総動員されてしまうという、
マーベル特有の大風呂敷が展開されています。

前作のラストをそのまま引きずって始まるので、
最初から怒涛の展開になりますし、
スパイダーマンの空中疾走に、
ドクター・ストレンジの空間を折りたたむようなビジュアルが融合して、
2人が対峙する場面などは、
現時点でのSFXの究極を見せてくれます。
感動的なシーンも挟みながら、
ラストは今後の自由度が一番大きなものになるのもクレヴァーで、
おまけには壮大な予告編までついているので、
一度その世界に入り込むと、
エンドレスで映画を見続けるしかありません。

まあ、商業的にも上手い仕掛けだと思います。

世代的な感覚としては、
内容的にはかつてのウルトラマンや仮面ライダーの構成に近いですよね、
苦しくなると次々と前のシリーズのキャラが登場して、
違った筈の設定も強引にくっつけて、
キャラ総動員の総集編的世界になります。
昔はこういうのは子供だましとして、
馬鹿にされるだけで評価などされなかったんですよね。

それが今や、
ある意味世界のスタンダードになっているのですから、
何か不思議な感じがします。

悪人も皆改心してしまうでしょ。
こういうのも昔の子供はガッカリしたんですね。
でも、今はそうじゃないといけない感じですよね。
フィクションにおける「悪」も許さないという、
もう行き着くところまで来た、という感じです。

「別の宇宙のことに手を出すな!」みたいな意見があって、
主人公達で葛藤があったりするのは、
これはもう「アメリカの正義」の苦悩の表現なんですね。

色々な意味で良くも悪くも、
マーベルのシリーズは、
アメリカを代表する映画になった、
ということかも知れません。
これだとショーレースは、
毎年外国映画、
ということになってある意味当然ですね。
かつてのハリウッド印の映画は、
アメリカ文化からは消えつつあるのかも知れません。

そんなこんなでアメリカを代表する映画の1本であることは、
間違いのない怒涛の大作なので、
一見の価値はあるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「クライ・マッチョ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
クライ・マッチョ.jpg
クリント・イーストウッドの2021年製作の新作で、
自身が監督をして主役も演じています。

何か予告編を見ると、
イーストウッドが現代に突き付けた遺言のような、
壮絶で緊張感のある作品を予想するのですが、
決してそうしたものではなく、
何か達観したような洒脱で軽い作品です。

存外悪くなかったです。

軽いタッチのロードムービーで、
主人公のかつてのロデオスターの老人が、
ティーエイジャーを連れて、
メキシコをアメリカ国境まで逃げるのですが、
それほど切迫した感じではなく、
むしろ「バクダッドカフェ」みたいな、
田舎町にやって来た異国の人が、
町の人気者になって町の雰囲気を変えて行く、
といったような、
昔からよくある感じのドラマが主体です。

イーストウッドは90歳でしょ。
90の老人が堂々たる主役を演じて、
アクションやカーチェイスもあれば、
ロマンスもあるというのですから、
これはもう良いとか悪いとかという次元を超えた世界ですよね。

それを曲りなりにも成立させてしまう、
というのがイーストウッドの凄さです。

ただ、まあそれでそう面白い映画にはならないですよね。
かなり観ていて苦しいところはあるのですね。
特にオープニングで説明台詞があるところなどは、
おやおや、この感じで行くのかしら、
と先行きをとても不安に感じたのですが、
メキシコに舞台が移ってからは、
結構悪くないペースで、
無理を承知の部分に少し目を瞑れば、
なかなか楽しく観ることが出来ました。

イーストウッドのファンであれば、
観て損はない作品だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症情報(2022年1月14日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などに廻り、
夕方には昨日のRT-PCR検査結果の連絡などもする予定です。

今日はクリニック周辺の感染症情報です。

オミクロン株の感染が猛威を振るう、
という感じがクリニックにも時間差で襲って来たという感じです。

1月11日には7件のRT-PCR検査を施行し、
そのうちの4件が陽性という結果でした。
4件のうち20代が1例、30代が2例、50代が1例という内訳で、
潜伏期は1例のみ10日間と推測されましたが、
それ以外は1から3日以内と推測されます。
発熱はあっても呼吸苦などは認めていません。

検査件数も増加しているようで、
通常は翌日の午後2時頃には結果が到着していたものが、
12日の結果到着は午後6時を廻っていました。
当日は午後休診で他に仕事に廻る予定もあってものですから、
夜8時過ぎに戻って連絡に当たりました。

感染された方には、
翌日の17時になっても保健所から連絡がないようであれば、
何か手違いがあるといけないので、
クリニックに連絡するようにお話をしました。

翌日の午後に濃厚接触者の方が検査にお見えになったので、
お聞きするとまだ保健所からの連絡はない、
という返事です。

17時を過ぎると、
今後は感染された方のおひとりから、
「まだ連絡が来ていない。これは死ねということか!」
というお怒りの電話が入り、
「勿論そういうことではなく、保健所も皆手を尽くしていると思うのですが、
感染者も多くて間に合っていない状態のようです。
こちらからも連絡してみますので、
どうか『死ねということか』のような発言はされないで下さい」
とお話をしました。

それで保健所に電話をしたのですが、
中年の女性と思われる方が電話にはお出になって、
医療機関用の電話であるにも関わらず、
「業務が混み合っていてお時間の掛かる場合もあるようです」
という明らかにマニュアルを読んでいると分かる対応です。
「それでは実際に何人の感染者が出ているのですか?」
とお聞きしても、
マニュアル以外の返答はありません。

これは検査受託機関に連絡しても同じことで、
「コロナ対策センター」という大層な名前の部署があるので、
一体検査結果がいつ届くのかと連絡すると、
これも明らかにマニュアルを読んでいると分かる声で、
「検査は順次進めていますが、検体数が多いと時間の掛かることもあるようです」
と何の答えにもなっていない返答でした。

そりゃないよ。

マニュアルを読み上げるだけのアルバイトが電話に出るくらいなら、
そんな人を雇うお金は全くの無駄じゃん。
AIの方が余程頼りになるよね、
と改めて思いました。

最終的に保健所の方からお電話をもらうと、
その日は80人の感染者に順次に対応していて、
まだ昨日分の電話が済んでいない状態とのことでした。

今は濃厚接触者の認定は、
保健所ではもう家族しかしていないのですね。
じゃ、他の濃厚接触者の判断はどうするのかしら?
ちょっと前まで同じ乗り物に乗った人は、
全て濃厚接触者として管理していたのでしょ。
勿論そんなことがいつまでも出来ないことは理解はしていますが、
それで急に「同居家族だけ」というのは、
あまりに落差が大きくて呆然としてしまいます。

結局ね、オミクロン株用の対応というのはないのです。
オミクロン株を水際で食い止めるということで、
その緊急対策というものをやったのですが、
市中感染に移行したということで、
その緊急対策が取り下げられたのですね。
その代わりの対策がないままなので、
結局昨年のデルタ株でドタバタの時に、
なるべく保健所の負担を減らそうね、という時の対策に、
戻ってしまったということなんですね。
でも、それじゃまずいでしょ。
デルタ株とは重症化率も潜伏期も、
何より感染力が全く違うんでしょ。
違うのにそれ用の対策が今ないままなのです。

オミクロン株の検査もね、
やっているのかと思ったら、
結局殆どしていないのですね。

今月の陽性者のスクリーニング結果が返って来たのですが、
まだデルタ株のスクリーニングのみをしているんですよ。
それでCt値が30未満のウイルス量の多い検体のみ、
ゲノム解析をしているのですが
結果が分かるのは2週間後という話なのですね。
東京でも大手の検査会社でそれですよ。
会社の方にお聞きすると、
「国からも都からもそれ以上の要請はされていないので、
これまで通りのことをやっています」
というお返事でした。

おい、要請しろよ!

呆然としてしまいました。
結果はデルタ株については皆陰性なんですね。
昨年は殆どすべて陽性でしたから、
要するにオミクロン株という可能性が高いのですが、
すぐにオミクロン株のスクリーニングをするように、
切り替えればいい話でしょ。

でも、しないんですよ。

あーあ。

昨日は12件のRT-PCR検査を施行しました。
それでも数件はどうしても対応出来ずにお断りしています。

現状はほぼワクチンのブースター接種をすることで、
一息は吐けるというのは明らかなんですね。
まあ数か月かも知れませんが、
抗体価を測ると間違いなく10倍以上は上がるんですね。
それもすぐに上昇しますから、
効果は絶大です。

もっと前倒しして打つべきだったのですが、
ちょっと油断をしたのですね。

それで今になって「前倒し、前倒し」と騒いでいるのですが、
クリニックでも開始は2月14日で、
それはもう動かせないんですね。
頑張って頑張って準備してそのスケジュール感なのです。

それを頭越しに、
「1か月前倒しとか、2か月前倒し」とかと言うでしょ。
言うだけなら誰でも出来るでしょ。
もっと下々の実務のことを考えてよ。

そんなこんなでバタバタの現場ですが、
どうにかこうにか凌がないといけません。

昨日の検査結果を待っているのですが、
どうせ来やしないよね。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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スタチンによる新型コロナウイルス感染症予後改善の可能性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アトルバスタチンの新型コロナへの有効性.jpg
British Medical Journal誌に、
2022年1月7日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の予後改善のために、
スタチンを使用する臨床試験結果についての論文です。

新型コロナウイルス感染症については、
中和抗体製剤や抗ウイルス剤の飲み薬など、
治療薬も開発されてはいるものの、
まだ色々な意味で決め手を欠く状態であることは間違いがありません。

この感染症治療の1つの柱は、
肺炎などで重症化した事例の予後改善ですが、
その重症化は免疫の過剰反応に伴う全身の炎症に、
その大きな要因があるという考えがあり、
その点に対する治療の試みが複数行なわれています。

そのうちの1つとして、
安価な治療として考えられているのが、
スタチンの投与です。

スタチンは、
コレステロール合成酵素の阻害薬ですが、
それ以外に免疫の調整作用や抗炎症作用など、
多くの副次的な効果が報告されていて、
その使用により新型コロナウイルス感染症の予後改善に、
結び付くという期待が寄せられています。

今回の臨床研究はイランの11カ所の病院において、
18歳以上で新型コロナウイルス感染症のために、
手中治療室に入室した605名を、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はスタチンであるアトルバスタチンを、
1日20mgで30日間まで使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
30日以内の死亡リスクなどの予後を比較しているものです。
実際にはそれ以外に抗凝固剤の使用も検証されていて、
そのうちスタチンについての部分のみを解析しています。

その結果、
総死亡のリスクや血栓症の合併などの予後には、
両群で明確な差は認められませんでした。

スタチンに関するこうした臨床研究は、
新型コロナウイルス感染症以外でも多く行なわれていますが、
あまりクリアに肯定的な結果が出たものはないようです。

今回の研究では、
スタチンの使用量は比較的少なく、
実際に死亡したり血栓症を呈したような事例も少なかったので、
有効性が確認されにくいという事情もありそうです。

ただ、現状は新型コロナウイルス感染症の重症事例の予後改善に、
スタチンを使用して明確に有効、
という根拠はないと言って良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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オミクロン株の中和抗体活性(ブースター接種の効果) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は事務作業などの予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
オミクロン株の中和抗体活性.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年12月30日ウエブ掲載されたレターですが、
オミクロン株の中和抗体活性を測定した内容です。

オミクロン株によると思われる、
新型コロナウイルスの感染が全国で猛威を振るっています。

そこで問題となるのは、
新型コロナウイルス感染症の中和抗体活性の主体となる、
スパイク蛋白の部位に多くの変異のあるオミクロン株が、
同じようにワクチンの有効性が担保されるのか、
ということと、
従来株の自然感染後に産生される抗体が、
同じように有効であるのか、
ということです。

今回の検証では、
新型コロナウイルス感染症に自然感染したか、
mRNAワクチン接種後の47名から得られた、
169の検体を利用して、
元の新型コロナウイルス、
スパイク蛋白に対する抗体が産生されない、
20カ所の変異を実験的に持つ抗原(PMS20)、
そしてオミクロン株の検体に反応させ、
その反応の差を比較しています。

その結果、
自然感染後1ヶ月後の中和抗体活性(NT50を指標)は、
元のウイルスと比較して、
20カ所のスパイク変異のあるPMS20株では60±47倍、
オミクロン株では58±51倍低くなっていました。

つまり、オミクロン株は、
実験的に作られたスパイク蛋白への抗体が殆ど産生されない変異と、
ほぼ同等の中和抗体活性しか持たない、
という結果です。

ここで2種類のmRNAワクチンのいずれかを接種すると、
元のウイルスの場合238倍、
PMS20株で214倍、
オミクロン株でも154倍の中和抗体活性の上昇が認められました。

これとほぼ同じ現象は、
自然感染ではなくmRNAワクチンの2回接種後にも認められていて、
ワクチン接種後の中和抗体活性も、
PMS20株やオミクロン株では非常に低いのですが、
それが3回目のブースター接種後には、
元のウイルスの場合26倍、
PMS20株で35倍、オミクロン株で38倍、
それぞれ上昇が認められました。

要するに中和抗体活性の主体はスパイク蛋白の部位にありますが、
それ以外の場所にも免疫を誘導するような作用はあり、
オミクロン株への中和抗体活性の上昇にも、
ブースター接種には一定の有効性は間違いなくあるようです。

ただ、これは敢くまで実験室レベルのもので、
その有効性については今後もより詳細な検証が必要と考えられます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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オミクロン株の抗原迅速検査での感受性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
オミクロン株の抗原検査.jpg
査読前の論文を公開している、
melRxivというサイトに、
2021年12月22日ウェブ掲載された短報ですが、
市販されている7種類の抗原検査のキットで、
オミクロン株の検出感度を検証しているものです。

オミクロン株の流行が日本でも止まりません。

厳密に言えば、
どのくらいの比率がオミクロン株か、
と言う点についての正確な統計はないのですが、
この広がりの急拡大の仕方と、
その大半がワクチン接種後のブレイクスルー感染である点、
海外からの流入とその染み出しから、
感染が広がっていることが明らかである点より、
ほぼほぼオミクロン株主体の流行であることは、
間違いのない事実であるように思います。

その多くは軽症の事例で、
ウイルス量はそれほど多くないことが想定され、
スパイク蛋白の遺伝子にも変異が多いことから考えると、
RT-PCR検査はともかくとして、
迅速診断の抗原検査では、
的確な診断が出来ないのではないか、
というのは誰でも想定出来るところです。

実際のところはどうなのでしょうか?

今回の検証では、
7種類の一般に使用されている、
新型コロナウイルス感染症の抗原キットを使用して、
オミクロン株の培養検体を用い、
その感受性をこれまでの他の変異株や、
元になる新型コロナウイルスのデータと比較しています。

その結果、キットによりかなり違いがありますが、
ほぼ全てのキットでその検出感度は、
オミクロン株ではそれ以外と比較して低下していました。

これはまだ査読前のデータに過ぎませんが、
新型コロナウイルスの迅速抗原検査の感度は、
オミクロン株の感染ではかなり低く、
その使用には限界のある点は、
留意しておく必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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佐藤正午「鳩の撃退法」 [小説]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
鳩の撃退法.jpg
佐藤正午さんは「ジャンプ」を読んで、
あまりに素晴らしいのでびっくりして、
それから大好きな小説家になりました。

ただ、そのレトリックには結構癖があって、
かなり回りくどい表現も多いので、
幾つかの作品はどうしても読み進めることが出来ずに、
途中で断念してしまったものもあります。
「ジャンプ」以外では、
ラストが投げ出した印象はありますが「5」が目くるめく展開で面白く、
「アンダーリポート」もまずまず、
「身の上話」もなかなかでした。

この「鳩の撃退法」は最高傑作との呼び声も高く、
帯で糸井重里さんが絶賛されていたので、
「これはもう傑作に違いない。勿体ないのでもう少し経ってからじっくり読もう」
というように思っていて、
本を買ってはあったのですがそのままに寝かせていました。

それが、2021年に映画が公開ということになり、
これは映画を見る前に読んでおかねば、
と思って読むタイミングを伺っていたのですが、
結局読んだ時には映画は終わっていて間に合いませんでした。

小説はちょっと期待とは違っていました。

ともかく回りくどくて長いのです。

ハードボイルド小説のような犯罪物語が核にあって、
それに巻き込まれた、
かつて直木賞を取った今は書けない小説家が、
その現実を自分の小説で虚構化しよう、
というようなお話です。

主人公が小説家で作者が投影されていると言うと、
「5」がそうでしたし「Y」もひねっているけれど同じ感じ、
私小説にフィクションを絡めるという点では、
「永遠の2分の1」にかなり近い感じもあります。

ただその過去作と比較しても、
ダラダラとしたレトリックが異様に長くて、
本題がなかなか進まない感じがイライラします。

それから現実そのものと、
それに対する主人公の推測の部分、
そしてそこから構想された小説としての部分が、
非常に複雑に組み合わされている上に、
そのフィクション化される過程を、
物凄く回りくどくしつこつ説明するので、
段々うんざりしてしまいます。

上巻のラストで、
道ならぬ恋に堕ちた2人を、
情感を籠めて描写する件があり、
そこはなかなか魅力的なので、
このまま怒涛の展開になってくれ、
というように思うのですが、
その後はまだ主人公がバーテンになったりして、
ダラダラする展開が続き、
ラストまで結局そのままで終わってしまいました。

正直脱力して、
糸井重里さんの絶賛の文章を読み返したのですが、
結局この作品の何処が良いのか、
と言う点については、
あまり明確に記載はされていませんでした。

一番良くないと思うのは、
核になるミステリー的な事件が、
正直凡庸で詰まらないのですね。
そこに登場する町を牛耳る悪党というのが、
また魅力の欠片もない薄っぺらな造形ですよね。
これじゃ駄目なのじゃないかしら。
偽札が何枚あって何処に行った、という謎にしたって、
確かに良く考えられてはいますが、
読者としてはどうでもいいですよね。
少なくとも個人的にはどうでもいいな、
と思いました。

内容的には「永遠の2分の1」に近いんですね。
あのお話が更に引き延ばされてダラダラ続くという感じ。
「ジャンプ」に近い設定の部分もあるのですが、
全体に埋没して良く分からない感じに終わっていました。

そんな訳で期待が大きかっただけに、
結構失望の残る読後感だったのですが、
好きな作家であることは間違いがなく、
読み残した作品に意外な傑作が隠れているかも知れないので、
これからも時に触れて初読再読を繰り返したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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