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2021年の映画を振り返る [映画]

新年おめでとうございます。

北品川藤クリニックの石原です。

今年もよろしくお願いします。

今日は昨年観た映画を振り返ります。
昨年映画館で観た映画がこちらです。

1.ワンダーウーマン 1984
2.約束のネバーランド
3.43年後のアイ・ラヴ・ユー
4.無頼
5.さんかく窓の外側は夜
6.聖なる犯罪者
7.ヤクザと家族
8. スワロウ
9. プラットフォーム
10.素晴らしき世界
11.ファーストラヴ
12.哀愁シンデレラ
13.樹海村
14.マーメイド・イン・パリ
15. 花束みたいな恋をした
16.シン・エヴァンゲリオン劇場版:||
17.ミナリ
18. JUNK HEAD
19.ノマドランド
20.騙し絵の牙
21.パーム・スプリングス
22.るろうに剣心 最終章 The Final
23.るろうに剣心 最終章 The Beginning
24.ファーザー
25.キャラクター
26.Arc アーク
27.ザ・ファブル 殺さない殺し屋
28.ゴジラvsコング
29.竜とそばかすの姫
30.1秒先の彼女
31.プロミシング・ヤング・ウーマン
32.ブラック・ウィドウ
33.オールド
34.孤狼の血 LEVEL2
35.フリー・ガイ
36.サマーフィルムに乗って
37.先生、私の隣に座っていただけませんか?
38.ドライブ・マイ・カー
39.レミニセンス
40.マスカレード・ナイト
41.スパイラル ソウ オールリセット
42.空白
43. プリズナーズ・オブ・ゴーストランド
44.007 ノー・タイム・トゥ・ダイ
45.DUNE デューン 砂の惑星
46.キャンディマン(2021年版)
47. ONODA 一万夜を越えて
48.  燃えよ剣
49. 最後の決闘裁判
50. ハロウィン KILLS
51. マリグナント 狂暴な悪夢
52. アンテベラム
53. 皮膚を売った男
54. エターナルズ
55. ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ
56. あなたの番です 劇場版
57. 彼女が好きなものは
58. マトリックス レザレクションズ
59. 偶然と想像
60. 99.9 刑事専門弁護士 THE MOVIE

以上の60本です。
昨年よりは少し多い本数ですが、
矢張り洋画は公開自体が少なくて、
配信優先の作品も多かったりと、
映画を映画館で観るという文化自体が、
岐路に立っているという感じです。
何かアメリカ映画はマーベルとディズニー以外には、
何もないような印象でした。

良かった5本を洋画と邦画とに分けて、
エントリーしてみます。
2021年に公開された新作に限っています。

それではまず洋画編です。

①ファーザー
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2021-06-12
今年素直に良い映画だった、と思えた1本です。
原作の戯曲も素晴らしいのですが、
それを視覚的かつ幾何学的に、
精緻な心理劇に構成した映像が画期的でした。
認知症という手垢の付いた素材が、
とても感動的で神秘的なドラマに昇華していました。
アンソニー・ホプキンスを始めとするキャストも、
素晴らしかったと思います。

②ノマドランド
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2021-04-10-1
フィクションとノンフィクションをないまぜにした、
河瀨直美監督みたいな手法で、
中国系のクロエ・ジャオ監督が、
アメリカを放浪する孤独な老人達の姿を描いた詩情豊かな作品で、
アカデミー賞には相応しい佳作でした。
現代の問題を描いていながら、
それが地平線の彼方でアメリカの原風景である、
西部の荒野に同一視されてゆく、
という辺りが面白いと思います。

③1秒先の彼女
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2021-08-07
チェン・ユーシュン監督のノスタルジックな台湾映画で、
「鎌倉ものがたり」みたいな感じの、
冥界と現実世界の境界がおぼろになるような世界を描いているのですが、
「鎌倉ものがたり」の映画の100倍くらいは、
素晴らしく幻想的な作品でした。
ちょっと変なギャグパートもあって、
全てが良いとは言えないのですが、
去年観た映画の中では、
最も愛すべき作品でした。

④フリー・ガイ
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2021-09-05
これはティーンエイジ向けの娯楽映画なのですが、
今年観た娯楽映画の中では最も面白く、
最も現代的で最も完成度の高い1本でした。
ゲームの中のわき役キャラが自我に目覚めて、
そのゲームの世界を変革しようというお話ですが、
そのゲームの開発者の1人である生身の女の子と、
恋に堕ちるという倒錯的な設定が面白く、
ゲームの世界の変革が現実の変革に結び付くという、
その発想も極めて新鮮に感じられました。
昨年は「マトリックス」の新作も公開されましたが、
その新作よりもこの作品の方が、
遥かに深く虚構世界と現実との関わりの問題を、
捉えていたように思います。

⑤エターナルズ
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2021-11-27-2
本当は「DUNE デューン 砂の惑星」を入れたかったのですが、
あまりにスローテンポで後半は盛り上がりに欠きましたよね。
ヴィルヌーブ監督は大好きなのですが、
パート1のみの映画というのは、
もともとスローテンポの監督が、
よりスローテンポの映画を作ってしまうので、
結果として失敗であったように思います。
(勿論パート2にはとても期待はしています)
クロエ・ジャオを起用したこのマーベルの新シリーズは、
ビジュアルはとても「デューン」に似ていて、
もっと盛り上がりがありました。
不評も多い映画ですが僕は比較的お気に入りです。
さすがクロエ・ジャオ、自分の資質を活かしながら、
上手くまとめたなという印象です。

それでは次は日本映画のベスト5です。
こちらは昨年に続いてなかなか充実していました。

①偶然と想像
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2021-12-25-1
昨年は間違いなく濱口竜介監督の年でした。
「ドライブ・マイ・カー」も面白い映画でしたが、
何かモヤモヤする感じもあり、
個人的には意味不明な部分もありました。
その点この作品は手作り感やアドリブ感もある短編集で、
濱口監督の魅力の全てが味わえる素晴らしい傑作でした。
3本のオムニバスですが、3本全てが傑作で、
それぞれに個性があり、
監督自身によるオリジナルの台本だという点も素晴らしいのです。

②空白
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2021-10-02
吉田恵嗣監督の代表作の1つとなるであろう力作で、
少女の不幸な死をきっかけとして、
不寛容で冷酷無比な社会が牙を剥き、
松坂桃李さん演じるコミ障のスーパー店長を、
追い込んで破滅させてゆく経緯を、
社会学の論文のような冷徹かつ正確無比なタッチで描きます。
それだけでは息が詰まってしまうのですが、
少女の父親に古田新太さんを配して、
少女を理解せず迫害していた父親が、
松坂桃李さんを追い詰める中で、
自分の非人間性に気付いて人間性を取り戻す姿を描くことで、
巧みにバランスを取って、
不思議と浄化されるような清冽なラストに着地します。
極めて現代的なキャラを、
感情表現をほぼほぼ殺した彼ならではの技巧で演じきった、
松坂桃李さんの芝居が抜群で、
脇のある意味どうでも良い役柄ながら、
強烈な印象を残した寺島しのぶさんがまた圧倒的でした。
不慮の死を遂げる少女役の伊東蒼さんが、
如何にもそれらしいリアルな質感で、
物語の核になっていました。
この少女は最初から死んだと言って良い状態であったのですが、
その不慮の死が社会化されることで、
初めてその存在が他者に影響を与えるという皮肉が、
現代社会の人間性の「空白」を、
象徴的に表現していて鮮烈でした。
ちょっと後半が北野武映画に似すぎている、
という感じはするのですが、
2021年で一番現代と格闘した力作でした。

③花束みたいな恋をした
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2021-03-13
趣味が抜群に合う、同じものが好きで、
同じものに心を動かされてきた2人が運命的な恋をして、
やがて現実のために夢を捨てて、
別れるしかなくなるという古典的な青春ラブストーリーを、
2015年から2020年の実際の多くのガジェットを絡めて、
情報量の多い同時代的なドラマに仕上げています。
菅田将暉さんと有村架純さんのほぼほぼ2人だけのドラマで、
全てが美しくノスタルジックで完成度が高く、
青春映画というジャンルを、
現代にアップグレードした感のある秀作でした。

④ONODA 一万夜を越えて
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2021-10-23
これは邦画と洋画の中間のような多国籍映画で、
どちらに入れようかと迷ったのですが、
内容的には矢張り邦画とするべきと思いこちらに入れました。
素材は小野田さんですから日本のものですが、
そのタッチは極めてヨーロッパ映画的で、
素材としても日本では到底映画化は困難なものでした。
小野田さんの役柄を2人に分ける必然性は、
それほどはなかったように思いますが、
キャストはいずれも代表作と言って良い熱演で、
内容も戦争の不条理を強く感じさせるものでした。
イッセー尾形さん演じるかつての上官と、
対峙する場面は文字通り心が震えました。

⑤シン・エヴァンゲリオン劇場版:||
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2021-03-20
昨年一番のヒット作で、
内容も従来のアニメ映画の次の段階を開拓しようという意欲を、
強く感じさせる力作でした。
日本的な屈折と敗北感と幼児性の横溢する世界ですが、
それを承知で没入出来れば、
凡百の実写映画を、
遥かに超える興奮と感銘とが待っています。
今年のアニメ映画では「竜とそばかすの姫」も良かったのですが、
ちょっとお行儀の良い感じが強い作品でした。
「ドライブ・マイ・カー」と一緒で、
海外で受けそうな要素を並べた感じに、
ちょっと不純なものを感じるのです。
勿論それが悪いということではなく、
純粋に個人的な趣味の問題です。

これ以外にも邦画は魅力的な作品が昨年は多くありました。
娯楽映画としては、
「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」と「燃えよ剣」の、
岡田准一さん主演の2本がいずれも意欲的な出来栄えでした。
青春映画の「彼女が好きなものは」も良かったですし、
「孤狼の血 LEVEL2」と「ヤクザと家族」という、
2本のヤクザ映画も迫力がありました。
「素晴らしき世界」と「Arc アーク」は大好きな監督の新作なので、
とても期待したのですが、
どうも「今」を掴みかねて四苦八苦しているような感じがありました。

今年も良い作品に出逢えればと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良いお正月をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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