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スタチンによる新型コロナウイルス感染症予後改善の可能性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アトルバスタチンの新型コロナへの有効性.jpg
British Medical Journal誌に、
2022年1月7日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の予後改善のために、
スタチンを使用する臨床試験結果についての論文です。

新型コロナウイルス感染症については、
中和抗体製剤や抗ウイルス剤の飲み薬など、
治療薬も開発されてはいるものの、
まだ色々な意味で決め手を欠く状態であることは間違いがありません。

この感染症治療の1つの柱は、
肺炎などで重症化した事例の予後改善ですが、
その重症化は免疫の過剰反応に伴う全身の炎症に、
その大きな要因があるという考えがあり、
その点に対する治療の試みが複数行なわれています。

そのうちの1つとして、
安価な治療として考えられているのが、
スタチンの投与です。

スタチンは、
コレステロール合成酵素の阻害薬ですが、
それ以外に免疫の調整作用や抗炎症作用など、
多くの副次的な効果が報告されていて、
その使用により新型コロナウイルス感染症の予後改善に、
結び付くという期待が寄せられています。

今回の臨床研究はイランの11カ所の病院において、
18歳以上で新型コロナウイルス感染症のために、
手中治療室に入室した605名を、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はスタチンであるアトルバスタチンを、
1日20mgで30日間まで使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
30日以内の死亡リスクなどの予後を比較しているものです。
実際にはそれ以外に抗凝固剤の使用も検証されていて、
そのうちスタチンについての部分のみを解析しています。

その結果、
総死亡のリスクや血栓症の合併などの予後には、
両群で明確な差は認められませんでした。

スタチンに関するこうした臨床研究は、
新型コロナウイルス感染症以外でも多く行なわれていますが、
あまりクリアに肯定的な結果が出たものはないようです。

今回の研究では、
スタチンの使用量は比較的少なく、
実際に死亡したり血栓症を呈したような事例も少なかったので、
有効性が確認されにくいという事情もありそうです。

ただ、現状は新型コロナウイルス感染症の重症事例の予後改善に、
スタチンを使用して明確に有効、
という根拠はないと言って良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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