SSブログ

ゴキブリコンビナート第35回公演「肛門からエクトプラズム」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ゴキブリコンビナート.jpg
現代に残った最後のアングラ、
ゴキブリコンビナートの新作公演が、
本日まで埼玉県川口市某所で行なわれました。

廃倉庫の中に足場を組んで、
観客は足場の上と下に振り分けられ、
役者と作り物、可動式の階段などが縦横無尽に走り回る中、
変な液体や糞便らしきものが投げつけられるのをよけながら、
大量のゴミが降り積もった床を逃げ惑います。

久しぶりで得難い体験でした。

フリークスの悲哀から対決を描いた物語は、
前作「膿を感じる時」の続編的なニュアンスがあります。
主役のユリ(人外)を演じた我修院達子さんがいいですよね。
リアリズムを突き抜けたところに、
仄かな情感があるのが良いのです。
他にも女優陣は全体に、
緩みのない必死の絶叫芝居で見応えがありました。

本物のアルパカが登場したり、
赤いレオタードのダンサーの軟体芸が、
会場の片隅であまり意味なく披露されたり、
立体的でシュールな構成は、
かつての天井桟敷を彷彿とさせて素敵です。

ただ、最近の作品は観客参加的な部分は少なくて、
せっかくくじ引きで客席を上下に分けたのに、
それが結局そのまま固定されて終わりになってしまったのは、
少し残念に感じました。
観客の質はとても良いと思うのですね。
全てを呑み込んで、参加したい気満々で、
頼まれもしないのにほぼ全員が、
ビニールの合羽まで用意しているのですから、
もっと観客自身が、
作品世界に入り込むような仕掛けが、
あった方が楽しいのに、というようには感じました。

ミュージカルというか、
台詞も殆どは歌で表現するというオペラ形式で、
アングラ歌謡と言って良い旋律が、
こちらもDrエクアドルさんの才気を感じさせる、
とても素敵なものなのですが、
全編ずっとというのはちょっとしんどい気もします。
途中でもう少し普通の台詞劇のパートがあると、
スパイス的に良いのではないかと思います。
しっとりとした濡れ場みたいなものがあっても、
意外に良いのではないかしら。
観客の質はとても高いので、
結構しっかり聴いてくれると思うのですね。

最初の方で実際の流血があって、
男優さんが勢い余って鉄パイプの角に額を打ち付けて頭が割れて、
リアルに出血してしまったのですね。
「会場にお医者さんがいませんか?」と言われたら、
名乗り出ようかしら、
でも内科医がひょろひょろと出て行っても、
外傷の処置にはあまり役に立ちませんし、
どうしようかなと思っていると、
一旦外にはけてから、
テープで坊主頭をぐるぐる巻きにして再登場しました。
多分終わってから病院には行ったと思いますが、
大丈夫だったのかしら。
くれぐれもお体ご自愛下さい。

ぎっくり腰もしていたものですから、
正直きつい観劇でもあったのですが、
少し元気をもらって、
明日からの修羅場を切り抜けたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0) 

ゴッホ展 ー 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント [絵画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ゴッホ展.jpg
東京都美術館で開催されている、
「ゴッホ展」に足を運びました。

これは有名な個人コレクションを中心にして、
ゴッホの作品の変遷を一望出来る、
かなり充実した内容となっています。

ゴッホについては、
昔中学校の美術の先生だったか、
高校の倫理学の先生だったか、
少し前までそのどちらかの先生の発言だったと記憶していたのですが、
最近記憶を辿ると、
いやいやテレビで評論家か誰かが話しているのを、
聞いただけだったのじゃないかしら、
とどうも記憶が怪しくなっているのですが、
ある人から、
「ゴッホの絵だけは生で見た方がいいよ、
そのタッチの細かさが写真で見るのとは全然違うから」
と言っていたことを、
とても印象的に記憶しています。

ただ、これまで印象派以降の絵画は、
あまり好みではなかったので、
まとめてじっくりと見るような機会は、
あまりありませんでした。

それが最近 YouTubeで、
山田五郎さんの絵画解説を、
レセプト作業をしながら結構沢山聞いたので、
あっ、意外に印象派以降の絵画もいいかもね、
と思ったのと、
ルドンの「キュクロプス」を観たいと思って、
それが今回一緒に公開されると情報を得たので、
どちらかと言えば「キュクロプス」目当てで会場に足を運びました。
あっ、それからスーラの点描も気になりました。

コロナ以降の日時と時間指定のチケットなので、
気が付かないと売り切れてしまって後悔、
というストレスはあるものの、
鑑賞環境としてはとてもスムースです。

一番最後に有名な糸杉の絵である、
「夜のプロヴァンスの田舎道」が陳列されているのですが、
音声ガイドの時間の影響と、
皆さん最初は時間を掛けているけれど、
後半は疲れてしまうのか、
最初のゴッホ以外の絵のパートと、
初期の素描のパートは混雑しているのに、
最後の部屋は結構空いていたので、
かなりじっくり観ることが出来ました。
最後の部屋が矢張り圧倒的で、糸杉はもちろん、
「サン=レミの療養院の庭」も素晴らしかったですし、
「悲しむ老人」や「レモンの籠と瓶」の、
独特の色彩も素敵でした。

肝心の「キュクロプス」もなかなかでしたが、
混雑していたのであまりじっくりは観られませんでした。

ただ、昔先生から聞いたように記憶している、
「実物はタッチが細かい」という指摘は、
実物を観てもあまり同感はできませんでした。
ただ、写真では同じように見えても、
絵具の塗り重ね方やその圧力のようなものには、
表現によってかなりの差があって、
色彩の美しさを含めて、
そうしたタッチの多彩さについては、
これは確かに実物を観ないとわからないな、
というようには感じました。

日本の展覧会なので、
基本すべての絵がガラスケースに入っています。
ただ、昔と比べるとそのガラスの性能が非常に高くなっていて、
映り込みが少なく、ストレスなく見ることが出来ますし、
ぼんやり見ていると、
ガラスがないようにも感じます。
ただ、「サン=レミの療養院の庭」の前方に、
映像展示室があって、
そこの映像の映り込みが、
絵の隅に出現していたのが配慮に欠いた、
と感じました。
細かいことですが、
もっとライティングには気を配って欲しいと思いました。

いずれにしても充実した展覧会であったことは確かで、
しばし絵画藝術の世界に浸ることが出来ました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0) 

新型コロナウイルス感染に対する外来抗凝固療法の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには向かう予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
新型コロナウイルス感染に対する抗凝固療法の効果.jpg
JAMA誌に2021年10月11日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症に対する、
外来での抗凝固療法の有効性についての論文です。

新型コロナウイルス感染症の重症事例においては、
動脈系、静脈系双方の血栓症が合併し、
肺炎の重症化などにも関連していると考えられています。

そのため、血栓リスクの高いことが想定されるような、
重症の事例においては、
抗凝固療法の施行が検討されます。

その有効性についてもまだ議論のあるところですが、
より不明の点が多いのは、
軽症から中等症で外来にての経過観察が行なわれる事例において、
経口薬による抗凝固療法を施行することで、
その予後に良い影響があるのだろうか、
ということです。

ウイルス感染に伴う凝固線容系の亢進が、
病状の重症化に結び付いているものだとすれば、
重症化予防に有効という可能性もある一方、
抗凝固療法は出血のリスクを高めますから、
そうした合併症の発症により、
むしろ予後に悪影響を与えるという可能性も否定出来ません。

今回の検証はアメリカの52箇所の医療施設において、
有症状の新型コロナウイルス感染症で、
外来での経過観察の適応となり、
血小板数は10万を超え、
腎機能の指標である推計糸球体濾過量が、
30mL/min/1.73㎡を超えている対象者を、
くじ引きで4群に分けると、
抗凝固療法として、
アスピリン1日81mg、
アピキサバンの低用量(1日5mg)、
アピキサバンの通常用量(1日10mg)、
そして偽薬に振り分けて、
45日間の経過観察を行なっているものです。

当初は7000例の登録が予定されていましたが、
血栓塞栓症の発症が予想より少なく、
明確な差がつかないことが明らかとなったため、
657例を登録した時点で終了となっています。

その結果、血栓症の発症については、
偽薬と比較して実薬群で明確な差がありませんでした。

一方で出血系の合併症の発症については、
偽薬群と比較して、アスピリン群では2.0%、
低用量のアピキサバン群では4.5%、
通常用量のアピキサバン群では6.9%、
増加する傾向を示していました。

このように、比較的軽症の新型コロナウイルス感染症患者の、
外来での経過観察においては、
アスピリンを含めて、
抗凝固療法を施行することは明確な有効性を示さず、
むしろ合併症のリスクのみを高める可能性が高いので、
現状では推奨されないと考えて良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0) 

新型コロナウイルス感染症に対する吸入ステロイド(シクレソニド)の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
シクレソニド吸入の有効性.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年11月22日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症に対する、
吸入ステロイド剤シクレソニドの有効性についての論文です。

この話題についてはこれまでにも何度か記事にしています。

全身的なステロイド投与が、
重症化した新型コロナウイルス感染症において、
その予後改善に有効であることは、
多くの精度の高い臨床データで実証された事実です。

そのことから考えると、
より軽症や初期の状態において、
吸入のステロイド剤を使用して、
気道の炎症を抑えることにも、
一定の有効性がある可能性が示唆されます。

シクレソニド(商品名オルベスコなど)は、
吸入ステロイド剤として使用されている薬の1つですが、
一部の研究データにおいて、
新型コロナウイルスの抗ウイルス作用を持つ、
という報告もあり、
新型コロナウイルス感染症における、
軽症例での使用の選択肢として、
注目をされているのです。

そもそもシクレソニドの使用は、
日本において始まったのですが、
当初の期待から一転、
批判的な文脈が目立つようになり、
いつの間にか立ち消えのような感じになってしまいました。

今回の研究はアメリカの10カ所の専門施設で行なわれた、
第三相臨床試験で、
入院の適応ではない有症状の新型コロナウイルス感染症患者、
トータル413名を、
患者にも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はシクレソニドを1日640μg吸入し、
もう一方は偽薬を使用して、
30日の経過観察を行なっています。

その結果、症状改善までの期間に、
実薬群と偽薬群とで有意な差は認められませんでした。
登録後30日の時点での症状にも、
有意な差は認められませんでした。
その一方で患者が入院したり救急受診するリスクは、
実薬吸入群で82%(95%CI:0.04から0.85)有意に低下していました。

このように、
シクレソニドの吸入に、
明確な症状の改善効果は認められませんでしたが、
一定の重症化予防効果はあるという可能性はあり、
今後対象者を絞るなど、
より詳細な検証が必要と考えられました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0) 

新型コロナウイルス再感染の特徴と将来の弱毒化の可能性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は事務作業などの予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
カタールでの再感染の特徴.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年11月24日掲載されたレターですが。
中東カタールにおける新型コロナウイルス再感染事例を、
初感染と比較した内容です。

中東カタールでは、
2020年3月から6月に掛けて、
新型コロナウイルス感染症の第一波の流行があり、
その後人口の約4割は、
新型コロナウイルスの抗体が陽性化したと報告されています。
その後2021年の1月から5月に掛けて、
主にα変異株とβ変異株による再流行が見られました。

この時、
RT-PCR検査陽性の初感染が確認されている事例の、
初感染から少なくとも90日以上経過しての再感染事例、
トータル1304例を解析したところ、
31.7%に当たる413例はβ変異株によるもので、
4.4%に当たる57例はα変異株によるもの、
16.3%に当たる213例は最初の流行株によるものと確認されています。
それ以外の事例については、
解析されていないなどして不明です。

初感染から再感染までの期間の中間値は、
277日(179から315)でした。
再感染の死亡事例は1例もなく、
入院や死亡などを併せた重症化のリスクは、
初感染と比較して10分の1(95%CI:0.03から0.25)という低率でした、

これがデルタ株以降の、
重症化リスクが高いとされている変異株においても、
同様に認められるかどうかはまだ不明ですが、
おそらく感冒の原因となっている多くのコロナウイルスが、
最初は重症化が多い状態から、
再感染を繰り返して軽症化したであろう、
という経緯を考えると、
今後長期的には現行の新型コロナウイルスも、
他の通常感冒の原因ウイルスと、
同程度の病状経過に変化するであろうことは、
可能性として高いように思われます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0)