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免疫抑制患者における新型コロナワクチン交互接種の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は事務作業などの予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナワクチン交互使用の有効性.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年12月20日ウェブ掲載された、
新型コロナワクチンの有効性が低い、
免疫抑制患者におけるワクチン交互接種の有効性についての論文です。

新型コロナウイルスワクチンのうち、
特に2種類のmRNAワクチンが、
少なくとも短期的には高い有効性を示していることは、
多くの臨床データにより実証されている事実です。

ただ、ワクチンは身体の免疫の反応により、
その効果が表れるものですから、
病気やその治療により免疫が高度に抑制されている人では、
その有効性は当然ですが低くなります。

腎移植を受けた患者では、
臓器の適合のために免疫抑制剤を使用しますから、
免疫は強く抑制された状態となり、
新型コロナワクチンの有効性も低いことが報告されています。

腎移植患者における。
2回のmRNAワクチン接種後のスパイク蛋白に対する抗体の陽性率は、
イスラエルの疫学データで54%、
アメリカの疫学データで38%という低率でした。

抗体が陰性ということは、
ほぼ感染予防効果がないことを示しています。

それでは、こうした患者さんにおいて、
よりワクチンの有効性を高めるには、
どのようにすれば良いのでしょうか?

現行世界的に広く使用されている新型コロナワクチンには、
ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社の2種のmRNAワクチンと、
アストラゼネカ社とジャンセン社の2種のウイルスベクターワクチンとが、
存在しています。

単独の有効性で見ると、
ウイルスベクターワクチンより、
mRNAワクチンが高い有効性を示していますが、
その免疫刺激には違いがあるため、
2種類を組み合わせて使用することにより、
より高い有効性が得られるのでは、
という考え方があります。

たとえば、mRNAワクチンで通常の2回の接種を行なった後で、
3回目のブースター接種として、
ウイルスベクターワクチンを使用することで、
mRNAワクチンを3回接種するよりも、
高い免疫刺激が得られるのではないか、
というような発想です。

今回のオーストリアにおける単独施設の臨床試験は、
その考え方を腎移植後の患者に適応したものです。

対象はいずれかのmRNAワクチンを、
通常のスケジュールで2回接種して、
接種完了2週間以降で測定しても、
血液中の新型コロナウイルスのスパイク蛋白に対する抗体が、
陰性であった腎移植患者197名で、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は3回目の接種もmRNAワクチンを使用し、
もう一方はウイルスベクターワクチンを使用して、
その後の免疫刺激効果を比較検証しています。

その結果、
トータルでは全体の39%の抗体陽性率で、
ブースター接種がmRNAワクチンであった場合は35%、
ウイルスベクターワクチンであった場合は42%で、
接種後にスパイク蛋白の抗体が陽性化していました。
この差は有意なものではなく、
ブースター接種が同種のワクチンでもそうでなくても、
その効果には変わりはありませんでした。

つまり、2回のワクチン接種で反応のない免疫抑制患者の事例であっても、
3回目のブースター接種により、
そのうちの3分の1程度の患者さんでは、
一定の免疫刺激効果が確認されました。
その有効性は交互接種であってもそうでなくても、
明確な差は認められませんでした。

ただ、これはまだ不充分な効果であることは間違いがなく、
今後免疫抑制者の感染予防については、
また別個のアプローチが検討される必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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