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原発性副甲状腺機能亢進症の手術の高齢者骨折リスクへの有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
副甲状腺切除の骨粗鬆症への効果.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年11月29日ウェブ掲載された、
副甲状腺切除術と骨折リスクとの関連についての論文です。

副甲状腺というのは、
甲状腺の背部に4つある小さな腺組織ですが、
そこから分泌される副甲状腺ホルモン(PTH)は、
甲状腺とは全く異なる作用を持っています。
PTHは血液のカルシウム濃度を調節し、
骨の形成と維持に必要不可欠な働きをしているのです。

その副甲状腺にしこりが出来て、
無調節にホルモンを分泌するようになると、
血液中のPTHは上昇して骨からカルシウムを融解させ、
骨量は減少して骨折が起こしやすくなりますし、
血液中のカルシウムが上昇。
口渇や脱水など糖尿病に似た症状が出現し、
より高度では痙攣や意識障害が生じることもあります。

これを原発性副甲状腺機能亢進症と呼んでいます。

副甲状腺機能亢進症の治療は、
原則として腫大した副甲状腺を切除する手術治療です。

ただ、この病気は65歳以上の高齢者に多く、
症状がないか比較的軽度である場合には、
手術は行なわないことも多いことが報告されています。

問題は原発性副甲状腺機能亢進症の患者さんに手術治療を行なうと、
その後の骨折リスクが本当に低下するのか、
という点についての、
実証的なデータがあまり存在していない、
という点にあります。

そこで今回の研究では、
アメリカの医療保険のデータを解析する方法で、
65歳以上で原発性副甲状腺機能亢進症と診断された、
トータル210206名の患者データを抽出し、
その予後を手術をした場合としない場合とで比較検証しています。
診断された患者のうち手術が施行されたのは、
30.0%に当たる63136名のみで、
残りの70.0%に当たる147070名は手術はせずに経過観察がされています。

その結果、
平均で58.5ヶ月の観察期間において、
手術が施行されなかった場合と比較して、
手術が行なわれた場合には、
全ての骨折のリスクが22%(95%CI:0.76から0.80)、
大腿骨頸部骨折のリスクが24%(95%CI:0.72から0.79)、
それぞれ有意に低下していました。

つまり、原発性副甲状腺機能亢進症の手術により、
その後の骨折リスクが低減されることが、
事例を登録して経過をみるような調査ではないので、
その点の限界はありますが、
初めてこれだけ大規模な検証で、
確認されたということになります。

今後はこうしたデータを元にして、
原発性副甲状腺機能亢進症の手術適応について、
より厳密な検証が必要だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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