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「彼女が好きなものは」(2021年映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
彼女が好きなものは.jpg
ゲイの男子高校生が、
ひょんなことからBL好きの女子高生と付き合うことになり、
そこから始まる葛藤を、
繊細かつ美しく綴った青春映画が、
今ロードショー公開されています。

これは良い意味で、
とてもとても青臭い青春映画で、
こうしたジャンル物としてはかなり頑張っていたと思います。

特に女子高生が観覧車の中で告白する遊園地の場面と、
ラストの海辺の駅のホームの場面は、
その演出の妙とも相俟って、
心を揺さぶる名シーンになっていたと思います。

キャストはゲイの高校生を演じた神尾楓珠さんが、
如何にもそれらしい雰囲気で面白く、
対する山田杏奈さんが抜群の感情表現で見事な芝居でした。

山田杏奈さんは大好きな女優さんですが、
今高校生を演じさせたらピカイチという感じがあります。

これは原作があって、
映画はほぼ原作をなぞってはいるのですが、
その印象にはかなりの違いがあります。

一番大きな違いは、
原作のテーマの1つとも言えるクイーンの楽曲を、
映画では名前をチラと出す程度で、
ほぼ完全に使用していないことで、
おそらくは権利関係の問題かと思われますが、
ちょっと残念である一方、
原作でもクイーンの蘊蓄は、
少しストーリーを邪魔している感じもありましたから、
構造がシンプルで分かり易くなった、
と言えなくもありません。

つまり、この決断はそう失敗ではなかったと思います。

それに付随して、
原作ではHIVの問題もテーマになっていますが、
映画ではその要素も全くなくなっています。

この点についても、
HIVが原作においても重要な要素にはなっていないので、
微妙な問題には踏み込まず、
敢くまで男女の出逢いと別れの物語に、
焦点を当てた点は悪くなかったと思います。

それから根本的なこととして、
原作は「好きだけど勃起出来ない」
という葛藤がメインのテーマなのですが、
映画版はそうしたことではなく、
愛情と友情との葛藤と揺らぎのようなものが、
テーマになっているという違いがあります。

そのために原作のラストは主人公が転校して、
自己紹介でカミングアウトするところで終わるのですが、
映画はそうした決断には触れず、
2人の別れの瞬間で終わりにしているのです。

正直展開には結構たどたどしい部分もあり、
全てが上出来とは言えない映画ですが、
少なくとも前述の2つの場面は、
青春映画の傑作と言って良い輝きを放っていたと思います。

青臭い映画が好きな方には、
今年1番のお勧めかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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