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レムデシビルの新型コロナウイルス感染症軽症事例への有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

明日から1月4日までクリニックは年末年始の休診に入ります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
レムデシビルの重症化予防効果.jpg
2021年12月22日ウェブ掲載された、
抗ウイルス剤レムデシビルを、
初期治療に用いる臨床試験結果についての論文です。

レムデシビルはDNAの原料となる核酸の誘導体で、
ウイルスが細胞内で核酸(RNA)の合成を行う、
RNAポリメラーゼの阻害剤です。

これはアビガン(ファビピラビル)と同様のメカニズムです。

この薬はアメリカの製薬会社ギリアドサイエンシズ社の開発品です。

新型コロナウイルス感染症に対するレムデシビルへの期待は、
この薬の新型コロナウイルスに対するEC50という、
ウイルスの感染細胞での増殖を50%抑制する濃度が、
0.77μMという低さであることが影響しています。

実験的にはここまで効果の高い薬は他にないからです。

その実際の有効性は、
入院を要するような重症の事例において、
その回復までの期間を5日程度短縮する効果が、
臨床試験において確認されています。

ただ、レムデシビルを外来で経過観察が可能な、
より初期の段階で使用した場合の有効性については、
これまで明らかではありませんでした。

今回の臨床試験では、
アメリカとヨーロッパの64カ所の施設において、
新型コロナウイルス感染症に罹患し、
外来で経過観察可能な比較的軽症の状態で、
肥満や高血圧、糖尿病など、
1つ以上の重症化リスクを持つ562名を、
症状出現後7日以内に、
本人にも主治医にも分からないように2つの群に分けると、
一方はレムデシビルを初日は200mg、2日目と3日目は100mgで、
3日間経静脈使用し、
もう一方は偽薬を同じように使用して、
開始後28日の時点での病状比較を行なっています。

その結果、
28日までの時点で、入院もしくは死亡した事例は、
レムデシビル群では0.7%に当たる2名であったのに対して、
偽薬群では5.3%に当たる15名で、
レムデシビルは新型コロナウイルス感染症の重症化を、
87%(95%CI:0.03から0.59)有意に抑制していました。

これはかなり画期的な結果ですが、
現行問題となっているような変異株に対しても、
同様の有効性があるとは限りません。
また、レムデシビルは鼻腔などのウイルス量を減少はさせない、
というデータもあることより、
この薬を経症例で使用することで、
感染拡大の抑止に繋がるかどうかは未知数です。
更にはこの薬剤は注射で使用するので、
外来でこの治療を軽症事例に適応することは、
実際にはかなりハードルが高いことも事実です。
現行複数の内服薬が同様の目的で開発され、
日本でも使用される運びですから、
その有効性にそれほど差がないのであれば、
経口薬がより優先度は高くなるような気もします。

新型コロナウイルス感染症の軽症事例に、
どのような適応を持ってどのような薬剤を使用するべきかは、
まだ今後の議論を待つ必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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