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深部静脈血栓症に対する2種の抗凝固剤の直接比較 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アピキサバンとリバロキサバンの比較.jpg
Annals of Internal Medicine誌に、
2021年12月7日ウェブ掲載された、
2種類の広く使用されている抗凝固剤の有効性と有害事象を、
比較検証している論文です。

心房細動という不整脈における、
脳塞栓症などの予防や、
下肢静脈血栓塞栓症における、
肺血栓塞栓症の予防などには、
抗凝固剤という、
強力に血液の凝固を抑える薬が使用されます。

古くから使用されているのが、
注射薬のヘパリンと経口薬のワルファリンで、
最近その利便性からその利用が増えているのが、
直接作用型経口抗凝固剤と呼ばれる薬です。
プラザキサやイグザレルト、エリキュース(いずれも商品名)、
などがそれに当たります。

この直接作用型経口抗凝固剤は、
概ね良くコントロールされたワルファリンと同等の効果と、
より低い重症出血系合併症発症率を持つと報告されています。

ただ、複数ある同系統の薬剤のうち、
いずれが有効性と安全性の面において優れているのか、
というような点については、
各製薬メーカーの売り上げに直結するような事項でもあり、
直接比較的なデータはあまり存在していないのが実際です。

ネットワークメタ解析などによる知見では、
他の薬剤と比較してアピキサバンが、
その有効性は他剤と見劣りはせず、
重症な出血系合併症の発症率は最も低いと報告されていますが、
これはメタ解析なので限界もある結果です。

今回の研究はアメリカの医療保険のデータを活用して、
深部静脈血栓症の再発予防目的で新規に使用開始された、
アピキサバンとリバロキサバンのデータを、
マッチングして解析したものです。

18618名のアピキサバン開始患者と、
同じ18618名のリバロキサバン開始患者を、
年齢などをマッチングして、
中間値でアピキサバンが102日、
リバロキサバンが105日の経過観察を行なったところ、
アピキサバン群はリバロキサバン群と比較して、
静脈血栓症や肺塞栓症の発症リスクが23%(95%CI:0.69から0.87)、
消化管出血や脳内出血の発症リスクが40%(95%CI:0.53から0.69)、
それぞれ有意に低下していました。

つまり、リバロキサバンよりアピキサバンの方が、
有効性は高く、出血系合併症は低かった、
というかなりクリアな結果です。

この結果はこれまでのメタ解析などの結果と一致するもので、
事例によってはリバロキサバンの方が、
その有効性においては勝っている可能性のあるので、
一概にリバロキサバンの劣性を証明するものではありませんが、
一般的使用における第一選択の直接作用型抗凝固剤として、
アピキサバンの優位性は定まりつつあると、
そうした言い方はしても間違いではないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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